暑い時期に突然の喉の痛みや高熱、下痢に襲われ、「どの市販薬を選べばいいのかわからない」と不安になっていませんか?夏風邪はヘルパンギーナや手足口病、咽頭結膜熱などのウイルスが原因で、冬の風邪とは症状も適した薬も異なります。誤った薬選びをすると症状が長引く場合もあるため、自分の症状に合った成分を見極めることが大切です。
この記事では、喉の痛み・発熱・下痢といった症状別の市販薬の選び方、服用時の注意点、病院を受診すべきサイン、日常でできる予防策までを薬剤師が整理しました。

夏風邪とはどのような病気?

夏風邪は、高温多湿の環境を好む特定のウイルスに感染することで引き起こされる感染症の総称です。一般的な冬の風邪とは原因となるウイルスが異なるため、現れる症状や長引きやすさにも違いが見られます。
代表的な風邪の種類は以下の通りです。
参考:咽頭結膜熱|厚生労働省
参考:
IDWR 2024年第27号<注目すべき感染症> 手足口病|国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト
代表的な夏風邪と言われる風邪の特長
いずれも夏場(おおむね6〜8月頃)にかけて患者数が増える傾向があり、飛沫感染・接触感染に加え、便を介した経口感染にも注意が必要です。
同じ「夏風邪」でも、発疹が出るのか・目に症状が出るのか・口内炎が中心なのかによって適切な対処や受診の目安が変わるため、どのタイプに近い症状かを見極めることが早期回復のポイントです。
高温多湿の環境でウイルスが繁殖して発症する
夏風邪を引き起こす主な原因は、アデノウイルスやエンテロウイルス、コクサッキーウイルスといった夏場に活発になるウイルスです。感染力が強く、飛沫感染や接触感染を通じて広がる傾向があります。
厚生労働省の感染症に関する情報ページでも、夏期に流行する咽頭結膜熱や手足口病の原因としてこれらのウイルスが挙げられています。
冬の風邪と異なり高温多湿の環境でウイルスが繁殖する
冬の風邪ウイルスが低温で乾燥した環境を好むのに対し、夏風邪のウイルスは高温多湿の環境で活発に増殖します。特に、梅雨明けから真夏にかけての時期に感染者が急増する傾向が見られます。
また、夏場は冷たい飲み物の摂りすぎやエアコンによる冷えで、胃腸の働きや全身の免疫力が落ちやすい時期でもあります。体力が低下した状態ではウイルスに感染しやすくなるため、普段から生活習慣を整えておくことが大切です。
夏風邪の代表的な3つの症状

夏風邪に感染すると、喉の奥の炎症や消化器系の不調など、特徴的な症状が現れます。
これらの症状はウイルスごとに異なり、複数の症状が重なって現れることも珍しくありません。
参考:咽頭結膜熱|厚生労働省
唾液を飲み込むのも辛いほどの激しい喉の痛み
夏風邪の代表的な症状として、唾液を飲み込むのも辛いほどの激しい喉の痛みが挙げられます。
特にヘルパンギーナでは、突然の高熱に続いて口の奥(口蓋垂付近)に水疱や潰瘍ができ、強い咽頭痛のために食事や水分がとれなくなることもあります。咽頭結膜熱(プール熱)でも、のどの痛みや扁桃腺の腫れが主な症状のひとつです。
のどの粘膜を保護し、炎症を鎮めるようなケアと、こまめな水分補給が大切です。
38度を超える高熱に頭痛や全身の倦怠感を伴う
突然38度を超えるような高熱が出ることも、夏風邪によく見られる特徴の一つです。高熱に伴って、強い頭痛や関節痛、全身の重だるい倦怠感を自覚する人が多いです。
発熱は体がウイルスと戦っている正常な反応ですが、体力を激しく消耗させる症状でもあります。無理をして動き回らず、涼しい部屋で十分に休息をとりましょう。
ウイルスが腸内で増殖し下痢や腹痛を引き起こす
エンテロウイルスなどの一部のウイルスは腸管内で増殖する性質があり、腹痛や下痢といった胃腸症状を引き起こします。冬の風邪では呼吸器系の症状が中心ですが、夏風邪では消化器系にダメージが出やすいのが特徴です。
下痢が続くと体内の水分が失われやすくなり、夏場は特に脱水症状のリスクが高まります。胃腸に負担をかけない消化の良い食事を心がけ、回復を待ちましょう。
参考:エンテロウイルス感染症|国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト
夏風邪の症状を和らげる市販薬の選び方
夏風邪のウイルスそのものを根治する市販薬はないため、辛い症状を和らげる対症療法が基本となります。
自分の最も辛い症状に合わせて、適切な成分が含まれた薬を選びましょう。
【喉の痛み】抗炎症成分の「イブプロフェン」がおすすめ
喉の痛みが強い場合は、炎症を抑える働きを持つ成分が配合された薬がおすすめです。
イブプロフェンやトラネキサム酸などは、喉の腫れや痛みを直接的に和らげる効果が期待できます。ただし、胃に負担をかける成分もあるため、空腹時の服用を避けるといった注意書きを守って使用しましょう。痛みが和らぐことで、水分や食事も摂りやすくなります。
参考:医療用医薬品 : ブルフェン (ブルフェン錠100 他)
参考:イブプロフェン
【発熱や頭痛】解熱鎮痛剤で症状を和らげられる
高熱や強い頭痛で体力が奪われているときは、解熱鎮痛剤を使って症状をコントロールします。
アセトアミノフェンは比較的胃への負担が少なく、穏やかに作用するため広く用いられています。薬で熱を下げても原因となるウイルスが消えたわけではないので、薬効が切れると再び熱が上がることがあります。薬で症状が落ち着いている間も、しっかりと睡眠をとって体を休めることが大切です。
参考:日本ペインクリニック学会
参考:医療用医薬品 : アセトアミノフェン (アセトアミノフェン「ヨシダ」)
【下痢や腹痛】整腸剤がおすすめ、下痢止めは避けるのが無難
夏風邪による下痢は、ウイルスを体外へ排出しようとする防衛反応です。腸の動きを無理に止める強力な下痢止め薬を使用すると、ウイルスが腸内に留まり症状が長引く原因になります。
このような場合は、腸内環境を整えて自然な回復を助ける整腸剤を選ぶとよいでしょう。乳酸菌やビフィズス菌が含まれた薬で腸の働きをサポートし、回復を待つのがおすすめです。
夏風邪で薬を服用する際の注意点

市販薬は手軽に症状を和らげられますが、自己判断での服用にはリスクも伴います。
特に持病がある方や、他の薬を飲んでいる方は慎重な判断が求められます。
治療中の疾患がある場合は主治医に相談すること
高血圧や糖尿病、心疾患などの持病で通院治療を受けている方は、市販薬の成分が病状に悪影響を及ぼすおそれがあります。例えば、一部の解熱鎮痛剤は血圧を変動させたり、腎臓に負担をかけたりすることが知られています。
自己判断で市販薬を購入する前に、かかりつけの主治医に相談する必要があります。日ごろから主治医と相談し、安全に服用できる薬の種類をあらかじめ確認しておくのがおすすめです。
参考:
PMDA「匿名医療保険等関連情報データベース(NDB)を用いた非ステロイド性抗炎症薬による心血管系イベント発現のリスク評価」(2024年10月)
参考:厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル NSAIDsによる消化性潰瘍(医療関係者向け)」
処方薬と市販薬の飲み合わせを医師や薬剤師に確認すること
現在病院から処方されている薬がある場合、市販薬を追加で飲むと成分が重複してしまう危険性があります。成分の過剰摂取は、思わぬ副作用を引き起こす原因となり大変危険です。お薬手帳を持参して、薬局の窓口、またはオンライン服薬指導で薬剤師に飲み合わせを確認してもらいましょう。
専門家の目で安全性をチェックしてもらうことで、安心して薬を使用できるようになるはずです。
水分をこまめに補給し脱水症状を防ぐようにすること
夏風邪による発熱や下痢は、体内の水分を急激に奪います。薬を服用する際は、コップ一杯程度の十分な水やぬるま湯と一緒に飲むことで、胃への負担を減らせます。また、薬を飲むときだけでなく、日常生活の中でも水や経口補水液などを少しずつ飲むよう心がけてください。
脱水症状を防ぐことは、薬の効き目を正しく発揮させるためにも重要です。
夏風邪かな?と思った際に病院の受診目安になる症状
市販薬はあくまで一時的な症状の緩和を目的としています。
症状が重い場合や長引く場合は、迷わず医療機関を受診して適切な治療を受けましょう。
38度以上の高熱が続き薬を飲んでも下がらないとき
市販の解熱鎮痛剤を数日間服用しても38度を超える高熱が続く場合は、単なる夏風邪ではない可能性があります。細菌による二次感染や、別の重篤な病気が隠れているおそれも否定できません。
薬の服用を漫然と続けず、速やかに内科などの医療機関を受診しましょう。医師の診察を受け、必要に応じて抗生物質などの処方を受けることが回復への近道になるはずです。
参考:厚生労働省「抗微生物薬適正使用の手引き 第四版 医科・外来編」
水分が摂れず尿量が減り脱水症状が疑われるとき
喉の痛みが強すぎて水分を飲み込めなかったり、激しい下痢が続いて尿の量が極端に減ったりしているときは、重度の脱水症状に陥っている危険があります。口の中がカラカラに乾燥し、めまいや立ちくらみを感じる場合は特に注意が必要です。脱水症状が進行すると、点滴による水分補給が必要になるケースもあります。
自力で水分補給が困難だと感じた時点で、早めに病院へ向かうようにしてください。
症状が長引いて持病悪化が不安なときは主治医に相談しましょう
数日が経過しても咳や倦怠感が抜けず、元の体調に戻らない場合も注意が必要です。特に持病を抱えている方は、夏風邪をきっかけに本来の病状が不安定になるリスクがあります。体調に少しでも不安を感じたら、次の定期受診日を待たずに主治医に連絡を取りましょう。
専門医の指導を仰ぐことで、持病の悪化を未然に防ぎながら安全に治療を進められるはずです。
参考:厚生労働省「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」
夏風邪を予防するために日常で取り組みたい対策
夏風邪を引いてから薬に頼るだけでなく、普段からウイルスに感染しにくい体作りを意識することが重要です。
日常生活の中で少し工夫をするだけで、予防効果を高められます。
こまめな手洗いとうがいで体内へのウイルス侵入を防ぐ
感染予防の基本は、ウイルスを体内に取り込まないように物理的に洗い流すことです。帰宅時や食事の前、トイレの後などには、石鹸を使って流水で丁寧に手を洗いましょう。また、うがいをして喉の粘膜についたウイルスを洗い流すことも有効です。
厚生労働省のガイドラインでも、感染症予防の基本として正しい手洗いの実施が推奨されています。
エアコンの温度を適正に保ち体温調節機能の低下を防ぐ
夏場は屋外の猛暑と屋内の強い冷房との温度差により、自律神経が乱れやすくなります。自律神経が乱れると体温調節機能がうまく働かなくなり、結果的に免疫力の低下を招きます。エアコンの設定温度は極端に下げず、室温が28度前後になるよう調整するのが理想的です。
冷風が体に直接当たらないよう風向きを工夫し、体への負担を減らしましょう。
参考:
専門医に聞く!クールビズ【家庭編】室温28℃で人も地球も健康に|COOLBIZ|COOL CHOICE 未来のために、いま選ぼう。
十分な睡眠と栄養バランスの良い食事で免疫力を保つ
ウイルスに負けない体を作るためには、十分な睡眠で日々の疲労をリセットすることが求められます。睡眠不足が続くと体の抵抗力が落ち、感染リスクが急激に高まります。同時に、冷たい麺類などに偏りがちな夏の食事を見直し、肉や魚、野菜をバランスよく摂るよう意識しましょう。
質の高い睡眠と栄養が、健康な状態を保つ防御策となります。
参考:厚生労働省「令和7年版 厚生労働白書」健康危機管理・災害対策の推進(休養・睡眠)
まとめ
この記事の要点をまとめます。
- 夏風邪は高温多湿を好むウイルスが原因で喉の痛みや下痢を引き起こす
- 市販薬は症状に合わせて選び無理な下痢止めは避ける
- 治療中の疾患がある場合は自己判断せず必ず主治医に相談する
- 高熱が続いたり脱水症状が見られたりする場合は早めに医療機関を受診する
適切な薬の選び方と日々の予防策を実践して、健康で快適な夏を過ごしましょう。
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