アトピーの注射治療の効果と費用を解説!副作用や治療の進め方も紹介 

アトピー 注射

目次

長年アトピー性皮膚炎に悩み、さまざまな治療を試してきたけれど、なかなか良くならない。
そんな方にとって、「注射治療」は新しい希望となるかもしれません。
これまでの塗り薬を中心とした治療とは異なり、体の内側からアトピーの原因に働きかけることで、つらい症状の劇的な改善が期待されています。

しかし、新しい治療法だからこそ「本当に効果があるの?」「費用はどれくらい?」「副作用は大丈夫?」といった多くの疑問や不安があると思います。

この記事では、そんなアトピーの注射治療について、種類や効果、費用、副作用などを分かりやすく解説します。 

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アトピー性皮膚炎の注射治療とは? 

アトピー性皮膚炎の注射治療は、従来の治療で十分な効果が得られなかった中等症から重症の患者さんのために開発された新しい治療法です。

これまでの治療とは根本的にアプローチが異なり、症状の原因となる体内の免疫機能の異常に直接作用します。 

これまでの治療法との違い 

従来のアトピー性皮膚炎治療は、ステロイド外用薬や保湿剤を用いて皮膚の炎症を抑え、バリア機能を補う「対症療法」が中心でした。 これらは非常に重要な治療ですが、症状が出ている部分に薬を塗り続ける必要があり、重症の場合はコントロールが難しいこともありました。 

一方、注射治療は「生物学的製剤」と呼ばれる薬を用い、アトピー性皮膚炎の根本的な原因である「Type2炎症」などを引き起こす特定の物質(サイトカイン)の働きをピンポイントで抑えます。 これにより、体の内側から炎症やかゆみを抑制し、全身の皮膚症状を改善に導きます。 

注射治療で期待できる効果 

注射治療の最大の特長は、その高い効果です。多くの臨床試験で、これまでの治療では難しかった皮疹やかゆみの大幅な改善が報告されています。 

効果の現れ方には個人差がありますが、早い方では投与開始から数週間でかゆみが軽減し、数ヶ月後には皮膚の状態が大きく改善することが期待できます。

また、皮膚の状態が良くなることで、QOL(生活の質)の向上、例えばぐっすり眠れるようになったり、仕事や学業に集中できるようになったりする効果も報告されています。 

アトピー治療で使われる主な注射薬の種類 

アトピー治療で使われる主な注射薬の種類 

現在、日本で承認されているアトピー性皮膚炎の注射薬は複数あり、それぞれ作用する仕組みや対象年齢が異なります。

ここでは代表的な薬剤を紹介します。 

デュピクセント®(デュピルマブ) 

デュピクセント®は従来の治療薬とは異なる新しい作用機序をもつ薬で、2018年にアトピー性皮膚炎の治療薬として日本で承認されました。 

主成分のデュピルマブは、アトピー性皮膚炎の症状を引き起こすタンパク質(IL-4、IL-13)の働きを抑えることで、炎症やかゆみをやわらげます。 

また、デュピクセント®は体内の免疫システムに直接作用するため、アトピー性皮膚炎以外にも以下のようなアレルギー性疾患にも適応が拡大しています。 

  • 結節性痒疹 
  • 特発性の慢性蕁麻疹 
  • 気管支喘息 
  • 鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎 

ミチーガ®(ネモリズマブ) 

ミチーガ®は、特にかゆみに強く関与するとされるサイトカイン「IL-31」の働きをブロックする薬剤です。

これにより、しつこいかゆみを効果的に抑えることが期待できます。
6歳以上の小児の患者さんが対象です。 

アドトラーザ®(トラロキヌマブ) 

アドトラーザ®は、「IL-13」の働きに特化して作用する薬剤です。

デュピクセントと似た系統の薬ですが、作用するターゲットを絞っているのが特徴です。15歳以上の患者さんが対象となります。 

その他の新しい注射薬 

近年、アトピー性皮膚炎の治療薬の開発は急速に進んでおり、イブグリース(レブリキズマブ)など、新たな作用機序を持つ注射薬も登場しています。

これらの薬は、既存の薬で効果が不十分だった場合の新たな選択肢となります。治療薬の選択肢が増えているため、専門医とよく相談することが重要です。 

アトピー注射薬(デュピクセント®・ミチーガ®・アドトラーザ®)の対象者 

アトピー注射薬(デュピクセント®・ミチーガ®・アドトラーザ®)の対象者

デュピクセント®・ミチーガ®・アドトラーザ®はいずれも「中等症から重症のアトピー性皮膚炎」の方が対象となります。 

症状の程度

従来の治療(ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬など)を十分に行っても、かゆみや炎症、皮疹が広範囲にわたって続く場合に、注射薬の使用が検討されます。 

年齢と体重

年齢や体重に応じた投与量で治療を行います。
注射薬ごとに、使用できる年齢や体重基準が異なります。 

  • デュピクセント®
    生後6ヶ月以上かつ体重5kg以上の小児から成人まで使用可能です。年齢や体重に応じて投与量が調整されます。 
  • ミチーガ®
    6歳以上の小児から成人が対象です。 
  • アドトラーザ®
    15歳以上の方が対象となります。 

使用できない方

共通して、以下のケースでは使用が制限されることがあります。 

  • 過去に各薬剤の成分でアレルギー反応を起こした方 
  • 重度の寄生虫感染症がある方 
  • 妊娠中・授乳中の方や高齢者は、医師と十分に相談のうえで使用可否を判断します 
  • 生ワクチン接種予定の方は注意が必要です 

ご自身やご家族が注射薬による治療の対象になるかどうかは、必ず専門医にご相談ください。 

アトピー注射薬の投与・治療の流れ 

医師による診察と検査のうえ、注射薬の使用が適切と判断された場合にのみ、投与が開始されます。 

医師による診断と治療開始の判断 

注射薬の治療は、まず皮膚科専門医による診断と検査が必要です。医師が症状や全身状態を確認し、注射薬の適応があると判断した場合に治療がスタートします。 

投与は医師の指導のもとに行われ、治療中は定期的に医師によるフォローアップが行われることにより、皮膚症状や副作用の有無が確認されます。 

注射薬ごとの投与方法・スケジュール・自己注射の可否 

  • デュピクセント®(デュピルマブ) 

初回は医療機関で指導のもと投与し、以降は自己注射(自宅での皮下注射)も可能です。

成人の場合、初回600mg(300mg×2本)を皮下注射し、以降は2週ごとに300mgを1本投与します。小児は年齢・体重により投与量や間隔が異なります。

自己注射は、医師や看護師から十分な指導を受けてから開始します。 

  • ミチーガ®(ネモリズマブ) 

13歳以上の方は自己注射が可能です(2023年12月より適応拡大)。

医療機関で指導を受けた後は、ご自宅で4週間ごとに1回、皮下注射を行います。6歳~12歳の小児の場合は、医療機関での投与となります。

自己注射の際は、注射部位や器具の管理方法について事前説明を受け、定期的な通院も必要です。 

  • アドトラーザ®(トラロキヌマブ) 

初回は医療機関での投与・指導が必要ですが、その後は自己注射も可能です。

2週間ごとに1回の皮下注射となります。

自己注射を行う場合も、定期的に医療機関で経過観察を受け、副作用や効果のチェックを行います。 

治療中の注意点 

治療中は、皮膚症状や副作用の有無を定期的に医師が確認します。副作用が疑われる場合は、すみやかに医療機関を受診しましょう。

また、自己注射の場合は手技の習得が必要であり、使用済み注射器の廃棄方法も医療機関で指導を受けてください。 

  • 投与スケジュールを守ることが大切です。 
  • 治療開始後も定期的な診察・血液検査などが必要です。 
  • 自己注射の際は、注射部位の衛生管理や器具の廃棄方法など、医療機関で説明された手順を必ず守ってください。 
  • 副作用や体調の変化があった場合は、速やかに医師に相談しましょう。 

自己注射 

自己注射

今回はデュピクセント®を例にご説明します。デュピクセント®は、最初の数回を医療機関で指導を受けた後、自宅で自己注射を行うことができます。 

自己注射の手順は以下のとおりです。 

  1. 1.注射器を室温に戻す(300mg:45分以上/200mg:30分以上) 
  1. 2.注射部位(腹部、太もも、上腕部)を消毒する 
  1. 3.皮膚をつまみ、90度の角度で針を挿入する 
  1. 4.薬液を20秒程度かけてゆっくり注入する 
  1. 5.針をまっすぐ引き抜き、注射部位を軽く押さえる 

副作用を避けるため、毎回異なる部位に注射することが推奨されます。使用済みの注射器は医療廃棄物として処理してください。 

アトピー注射薬の効果

アトピー注射薬の効果とメリット

アトピー注射薬の効果について知っておきましょう。 

注射薬の効果 

  • デュピクセント®
    炎症やかゆみを抑え、皮膚のバリア機能を改善します。多くの方で投与開始2~3日後からかゆみが軽減し、16週までに症状の大幅な改善が期待できます。QOL(生活の質)も大きく向上すると報告されています。
  • ミチーガ®
    特に「かゆみ」に対して強い効果が特徴です。皮膚症状の改善も見込め、早い方では投与後数日~数週間で効果を実感できます。 
  • アドトラーザ®
    炎症を引き起こすIL-13を特異的に抑えることで、皮膚症状やかゆみの改善が期待できます。海外データでも高い有効性が示されています。 

アトピー注射治療のメリット 

注射治療には、これまでの治療法にはなかった多くのメリットがあります。 

アトピー注射治療のメリット 

これまで以上の高い改善効果が期待できる 

最大のメリットは、中等症から重症の患者さんにおいて、皮疹やかゆみを大幅に改善させる高い効果が期待できる点です。

臨床試験では、多くの患者で皮疹面積や重症度が半分以下に改善したというデータも示されています。 

つらい痒みを素早く抑える効果 

アトピー性皮膚炎の患者さんにとって、最もつらい症状の一つがかゆみです。

注射薬の中には、かゆみの原因物質に直接作用することで、比較的早期にかゆみを和らげる効果が報告されているものもあります。 

ステロイド外用薬の使用量を減らせる可能性 

注射治療によって全身の炎症がコントロールされると、これまで毎日大量に使っていたステロイド外用薬の量を減らしたり、より弱いランクのものに変更したりできる可能性があります。

ただし、自己判断で外用薬をやめるのではなく、必ず医師の指示に従うことが重要です。 

アトピー注射治療の副作用とデメリット 

高い効果が期待できる一方で、注意すべき副作用やデメリットも存在します。 

アトピー注射治療の副作用とデメリット

注意すべき主な副作用は「注射部位反応」 

注射薬を使用する場合、以下の副作用が報告されています。 

  • デュピクセント
    注射部位の発赤・腫れ・かゆみ、結膜炎、口唇ヘルペス、頭痛、発熱など。重篤な副作用はまれですが、アナフィラキシーや好酸球増加症、感染症リスクの上昇などにも注意が必要です。 
  • ミチーガ
    注射部位の痛みや腫れ、関節痛、頭痛などが報告されています。まれにアレルギー反応が起こることがあります。 
  • アドトラーザ
    注射部位の反応、結膜炎、感染症リスクの上昇など。デュピクセントと類似した副作用がみられます。 

注射薬に共通して見られる副作用として、注射した部位が赤くなったり、腫れたりするかゆみが出たりする「注射部位反応」があります。

また、薬剤の種類によっては結膜炎が起こりやすいものもあります。 重大な副作用としてアナフィラキシーショックなどが報告されていますが、頻度は非常に稀です。治療を開始する前に、医師から副作用について十分な説明を受けることが大切です。 

治療費が高額になる点 

注射治療は、薬価が高額であるため、医療費の負担が大きくなるというデメリットがあります。

薬剤や体重によって異なりますが、3割負担の場合でも月々の自己負担額は数万円になることがあります。

ただし、後述する公的な医療費助成制度を利用することで、負担を軽減することが可能です。 

定期的な通院が必要になる点 

注射治療は、効果を維持するために定期的な投与が必要です。

多くは2週間または4週間に1回の通院、もしくは自己注射が必要となります。これまでの外用薬だけの治療と比べると、通院の頻度が増える可能性があります。 

注射治療にかかる費用はどのくらい? 

治療を選択する上で、費用は非常に重要な要素です。

ここでは、自己負担額の目安と、負担を軽減するための制度について解説します。 

各注射薬の薬価と3割負担の場合の自己負担額 

デュピクセント®を例に挙げると、3割負担の場合、1回あたりの自己負担額は約16,100円、初回はその倍量が必要なため約32,200円となります。 

薬剤名 3割負担の年間薬剤費(目安) 
デュピクセント® 約43万円 
ミチーガ® 約43万円 
アドトラーザ® 約46万円 

※上記はあくまで目安であり、体重や投与スケジュールによって変動します。 

参考: 

アトピー性皮膚炎の薬剤費|サノフィ 

アトピー性皮膚炎・結節性痒疹(ミチーガ®)| 本山リュッカクリニック 

アトピー性皮膚炎(アドトラーザ®) | 本山リュッカクリニック 

高額療養費制度で負担を軽減する方法 

日本の公的医療保険には「高額療養費制度」があります。

これは、1ヶ月の医療費の自己負担額が上限額を超えた場合に、超えた分が払い戻される制度です。

上限額は年齢や所得によって異なりますが、この制度を活用することで、高額な注射治療の負担を大幅に軽減できます。ご自身の加入している健康保険組合や市町村の窓口で確認してみてください。 

参考:高額な医療費を支払ったとき | こんな時に健保 | 全国健康保険協会 

医療費控除の対象になること 

年間の医療費が10万円(または総所得金額の5%)を超えた場合、確定申告で「医療費控除」を申請することで、所得税や住民税が還付・軽減される可能性があります。

注射治療にかかった費用も対象となるため、病院や薬局の領収書は必ず保管しておきましょう。 

参考:No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)|国税庁 

アトピー注射治療に関するよくある質問 

最後に、患者さんからよく寄せられる質問にお答えします。 

注射の痛みはどの程度ですか? 

皮下注射のため、採血や予防接種と同程度の軽い痛みを感じることがあります。

痛みの感じ方には個人差がありますが、多くの方が継続できる範囲の痛みです。
自己注射の場合は、お腹や太ももなど、比較的痛みを感じにくい部位を選ぶことができます。 

効果はいつから実感できますか? 

効果発現の時期には個人差がありますが、早い方では投与後2〜4週間でかゆみの改善を実感し始めます。

皮疹の改善には少し時間がかかり、3〜4ヶ月ほどで多くの方が効果を実感すると言われています。 

治療を途中でやめたらどうなりますか? 

注射治療はアトピー性皮膚炎を根治させるものではなく、症状をコントロールする治療です。

そのため、自己判断で中断すると、症状が再燃する可能性があります。治療の中止や変更を希望する場合は、必ず医師と相談し、皮膚の状態を見ながら慎重に判断することが重要です。 

まとめ 

アトピー性皮膚炎の注射治療は、これまでの治療で効果が不十分だった患者さんにとって、症状を劇的に改善させる可能性を秘めた新しい選択肢です。

費用や副作用といった側面もありますが、公的な助成制度を活用することで負担を軽減することも可能です。一人で悩まず、まずは皮膚科の専門医に相談することから始めてみてください。 

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