ピルの種類と症状に合わせた処方のされ方。ピルを変更するときの注意点は?

ピル

避妊や生理痛の改善のため、ピルの服用を検討する方が増えています。
ピルは種類によってそれぞれ特徴が異なるため、自分に合ったものを見つけることが重要です。

本記事では、各種ピルの特徴と選び方、変更時の注意点についてご紹介します。
PMSや子宮内膜症でお悩みの方も、参考にしてください。

ピルの特徴

ピルは、女性ホルモン(エストロゲンやプロゲステロン)を含む薬です。
毎日決まった時間に服用することで排卵を抑制するため、「経口避妊薬(OC)」とも呼ばれています。
主な効果は次のとおりです。

  • 排卵を抑制し避妊効果を発揮
  • 生理痛の緩和
  • 月経不順や月経困難症の改善
  • PMS(月経前症候群)の改善

1相性ピルはすべての錠剤に同じ量のホルモンが含まれており、服用が簡単です。
3相性ピルはホルモンの配合比率が段階的に変化するため、個々の体調やニーズに応じて調整ができます。

ピルの種類

ピルは含まれているエストロゲンの量によって、以下に分類されます。

超低用量ピル

超低用量ピルは、エストロゲン量が0.03mg未満で、血栓症や吐き気・むくみなどの副作用が起こりにくいのが特徴です。
生理痛を軽減し、月経周期を整えることができるため、主に月経困難症や子宮内膜症の治療に使用され、保険が適用されます。

すべて1相性の薬で代表的なものは次のとおりです。

  • ヤーズ配合錠(ジェネリック:ドロエチ配合錠)
  • ヤーズフレックス配合錠
  • ルナベル配合錠ULD(ジェネリック:フリウェル配合錠ULD)
  • ジェミーナ

ヤーズやヤーズフレックスは、男性ホルモン作用がほとんどないため、ニキビや肌荒れが起こりにくいとされています。

低用量ピル

避妊効果と安全性のバランスが高く、世界中で広く使用されている薬です。
配合されている黄体ホルモンの違いによって、3世代に分類されます。

第1世代(ノルエチステロン配合)

  • シンフェーズ(3相性)
  • ルナベルLD(1相性)
  • エリオット(2相性)

第2世代(レボノルゲストレル)

  • トリキュラー(3相性)
  • アンジュ(3相性)
  • ラベルフィーユ(3相性)

第3世代(デソゲストレルまたはゲストデン配合)

  • マーベロン(1相性)
  • ファボワール(1相性)

一般的に、新しい世代ほど副作用が少なくなるよう改良されていますが、個人差があります。

中用量ピル

エストロゲンの量が比較的多く、日本で承認されているのは「プラノバール」のみです。
生理日の移動や緊急避妊に使用されます。
副作用が出やすいため、短期間の使用が一般的です。

アフターピル

望まない妊娠を防ぐための緊急避妊薬で、以下の2種類があります。

  • ノルレボ(72時間以内に1回1錠服用)
  • エラ(120時間以内に1回1錠服用)

性交渉後できるだけ早く服用することで、より高い効果が期待できます。
基本的にはどちらも処方せんが必要ですが、ノルレボは一部薬局で処方せんなしでの試験販売を実施中です。
16歳以上かつ薬剤師による面談が購入条件です。

ミニピル

プロゲステロンのみを含む薬で以下の2種類が日本で承認されています。

  • ノアルテン(第1世代)
  • ディナゲスト(第4世代)

エストロゲンを含まないため、血栓症のリスクが低いのが特徴です。
上記2種類は避妊目的の使用は推奨されておらず、子宮内膜症の治療などに使用されています。

症状に合わせたピルの選び方

ここでは、症状別のピルの選び方を紹介します。

ニキビに使用されるピル

ホルモンバランスが原因のニキビには、抗アンドロゲン(抗男性ホルモン)作用がある以下のピルが効果的です。

  • ヤーズ
  • ヤーズフレックス
  • マーベロン
  • ファボワール

喫煙者が服用できるピル

喫煙者が服用できるのは、エストロゲンを含まないミニピル(ノアルテン・ディナゲスト)です。
避妊目的ではセラゼッタなどの海外の薬が使用されることがあります。

子宮内膜症に使用するピル

子宮内膜症の治療には、以下の超低用量ピルやミニピルが用いられます。

  • ヤーズフレックス配合錠(最長4か月連続服用可)
  • ルナベルULD/フリウェルULD
  • ジェミーナ(最長77日連続服用可)
  • ディナゲスト(40歳以上や喫煙者も使用可)

これらは、子宮内膜の増殖を抑え出血量を減らすことで症状を改善します。
中でも連続服用できるヤーズフレックスやジェミーナは、生理の回数を減らせるため、長期的な症状緩和に効果的です。

月経困難症に使用するピル

月経困難症には、以下のような低用量ピルや超低用量ピルが使用されます。

  • ルナベルULD/LD(フリウェルULD/LD)
  • ヤーズ/ヤーズフレックス
  • ジェミーナ

これらは、以下の効果を期待できます。

  • 生理痛の改善
  • 経血量の軽減
  • 月経周期を整える効果
  • PMS(月経前症候群)の症状改善(イライラ、むくみ、頭痛、胸の張りなど)

違う種類のピルに変えるときの注意点

ここでは、ピルを変更する際の注意点を紹介します。

ピルの飲み始め

ピル変更時は、以下のタイミングで切り替えます。

  • 21錠から28錠タイプへ:7日間の休薬期間後から
  • 28錠から28錠タイプへ:飲み終わった翌日から

ピルの飲み合わせ

ピルと飲み合わせが悪い薬は以下のとおりです。

効果を弱める薬

  • 結核薬
  • てんかん薬
  • 一部の抗生物質
  • HIV感染症治療薬

効果を強める薬

  • 三環系抗うつ薬
  • ステロイド内服薬
  • ぜんそく治療薬
  • 免疫抑制剤

また、以下のサプリメントや嗜好品にも注意が必要です。

  • セントジョーンズワート
  • イソフラボン
  • グレープフルーツ
  • アルコール

飲み合わせに注意が必要な薬が多いため、事前に医師や薬剤師に相談してください。

ピルの副作用

ピルの種類を変えると、ホルモンバランスの変化によって不正出血、吐き気、頭痛などが起こる場合があります。
多くは一時的な副作用で、服用を続けると症状は落ち着いていくことが多いです。

ただし、ふくらはぎの痛みやむくみ、突然の息切れといった症状は、血栓症の初期症状の可能性があります。
このような症状が出た場合は、すぐに服用を中止し、医療機関を受診してください。

ピルの種類を正しく理解して適切なものを選択しましょう

ピルにはさまざまな種類があり、それぞれ特徴が異なります。
自分の症状や体質に合わせて、医師と相談しながら適切な種類を選択することが大切です。

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参考文献
  • 公益社団法人 日本産科婦人科学会「月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS)」
  • 公益社団法人 日本産科婦人科学会「子宮内膜症」
  • 公益社団法人 日本産科婦人科学会「ピル(経口避妊薬)を上手に利用しよう」
  • MSDマニュアルプロフェッショナル版「経口避妊薬」
  • 厚生労働省「緊急避妊薬試験販売 インフォメーション」
  • 秋田県産婦人科学会・医会「月経困難症と低用量ピル」