首の腫れや喉の違和感がきっかけで、見つかることもあるのが甲状腺疾患です。
甲状腺は新陳代謝に関わっているため、異常があると全身の不調につながります。
特に女性に多くみられる傾向があり、更年期障害や体調不良による症状と似ているため、発見が遅くなる、気づかないまま過ごしているという方も多いのが実情です。
本記事では、甲状腺の病気の種類と特徴、治療法についてご紹介します。
甲状腺の病気・症状
甲状腺は喉仏の下にあり、蝶が羽を広げたような形をしており、「ヨード」という栄養素を元に甲状腺ホルモンを産生・分泌しています。
甲状腺ホルモンは、全身の新陳代謝をコントロールしているため、多すぎると新陳代謝が活発になりすぎて代謝が亢進し、反対に少なすぎると気力や活力が低下します。
更年期障害との違い
甲状腺の病気は女性に多く、更年期障害で現れる症状に似ているため、自己判断で間違えられることがあります。
更年期障害とは、閉経の前後10年程の時期(一般的に45〜55歳頃)のホルモンの乱れから、疲れやすい、ほてりやホットフラッシュ、イライラする、動悸がするなどさまざまな症状を引き起こすことをいいます。
更年期障害を疑って受診してみたら甲状腺疾患が見つかった…というケースもあり、自分では判断が難しいため、医療機関の受診・検査をすることが大切です。
ホルモンが関係している甲状腺の病気
甲状腺疾患は大きく分けて「ホルモンが関係している病気」「甲状腺自体の病気」の2つに分かれます。
ホルモンが関係している甲状腺疾患としては、バセドウ病・橋本病・クレチン症などが代表的です。
バセドウ病
バセドウ病は、甲状腺ホルモンが過剰に作られる甲状腺機能亢進症の代表的な疾患です。
甲状腺ホルモンが大量に分泌されて全身の新陳代謝が活発になることで、微熱や動悸、むくみ、疲れやすい、食欲はあるのに体重が減っていく、眼球突出などの症状が発生します。
橋本病
橋本病は、甲状腺の機能が低下することによって、甲状腺ホルモンが不足する甲状腺機能低下症の代表的な疾患です。
バセドウ病とは反対に、甲状腺ホルモンの量が不足することで新陳代謝が低下するため、気力がない、体重が増える、肌がカサカサするなどの症状が発生します。
クレチン症
クレチン症は先天性甲状腺機能低下症とも呼ばれ、生まれつき甲状腺の働きが弱く、甲状腺ホルモンが不足する疾患です。
甲状腺ホルモンは成長・発達などに関わっているため、きちんと治療をしないで放置すると、その後の成長・発達に影響することもあります。
甲状腺自体の病気
甲状腺自体の病気は、甲状腺腫瘍が代表的です。
甲状腺の機能には異常があまり出ないので、自覚症状がなく気づいたら大きくなっているというケースもあります。
甲状腺腫瘍
自分で触ってわかるような「首のしこり」が代表的な症状で、頸動脈エコー検査などで発見されることもあります。
稀に腫瘍が原因で声がかすれる、急激にしこりが大きくなるなどの症状が発生することもあります。
治療法
腫瘍が良性であれば経過観察となります。
腫瘍が悪性である場合、甲状腺の悪性腫瘍のなかで最も頻度の多い「乳頭がん」は甲状腺の切開手術を行うことで比較的治りやすいものです。
「悪性リンパ腫」の場合は抗がん剤による薬物療法や放射線治療を行い、悪性度が高い「未分化がん」の場合は手術と共に化学療法や放射線治療が検討されます。
甲状腺の検査方法
自分で首の腫れに気づく場合や、周りの人に腫れているといわれて病院を受診する方も多いですが、甲状腺が腫れていても他の疾患の症状と似ているためそのままにしてしまう方もいます。
病院での検査ですぐにわかる病気でもありますので、異常を感じたら早めに受診することが大切です。
セルフチェック
甲状腺疾患の症状はさまざまで、体の不調が全身に関係しています。
セルフチェックをして当てはまるものが多ければ、一度病院で検査してみましょう。
〇甲状腺機能亢進でみられる症状
- 疲れやすい
- 異常に汗をかく
- 動悸がする
- 食欲が旺盛である
- 髪の毛が抜けやすい
- イライラする
- 微熱が続く
- 眠れない
- 眼球がでてくる
〇甲状腺機能低下でみられる症状
- 疲れやすい
- 汗が少ない
- 脈拍数が少ない
- 体重が増える
- 髪の毛が抜けやすい
- 気力がない
- 寒い
- 常に眠い
- 皮膚が乾燥する
病院での検査
まずは、血液検査でホルモンの値をチェックします。
甲状腺ホルモンの分泌が多いか少ないかを知るために、甲状腺刺激ホルモンと、甲状腺ホルモンの2つを同時に測定します。
甲状腺ホルモンの分泌異常があった場合、甲状腺の形状にも変化がみられることがあるため、超音波検査で甲状腺の大きさ、腫瘍の有無を確認するのが一般的です。
甲状腺の病気・治療法
「甲状腺機能亢進症」と「甲状腺機能低下症」では治療法が異なります。
甲状腺機能亢進症では、内科的な治療に加えて外科的治療や放射線治療も検討されます。
薬物療法
甲状腺機能亢進症の場合
甲状腺ホルモンを作りにくくする薬(メルカゾール、プロパジール)で、甲状腺の中でヨードから甲状腺ホルモンが合成されるのを阻害します。
甲状腺機能低下症の場合
人工的に合成された甲状腺ホルモン、レボチロキシンナトリウム(チラーヂンSⓇ)という薬を内服して治療します。
首の腫れ・喉の違和感がある場合はセルフチェックをまずは行いましょう
甲状腺の病気は症状がさまざまであり、他の疾患と間違えられることも少なくありません。
まずはセルフチェックを行い、当てはまる項目が多い場合は、一度病院を受診することを推奨します。
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参考文献
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- 国立長寿医療研究センター 首の腫れが心配.ひょっとして甲状腺の病気かも?