女性のデリケートゾーンのかゆみや腫れは、大したことはないと思ったり相談しにくかったりして、ついつい放置してしまう方も少なくありません。
本記事では、デリケートゾーンのかゆみや腫れについて、原因や治療法などを解説します。
デリケートゾーンのかゆみや腫れの原因
デリケートゾーンのかゆみの原因は、皮膚炎によるもの・感染症によるもの・妊娠によるものの3つに大別されます。
肌のかぶれ
何らかの刺激で肌のかぶれを起こすことが原因となり、デリケートゾーンのかゆみや腫れが起こることがあります。
デリケートゾーンは、体のほかの部分と比べて皮膚が薄く、刺激を受けやすい特徴があります。
感染症によるもの
細菌・真菌(カビ)・寄生虫などが外陰部に感染したことがきっかけで、デリケートゾーンにかゆみや腫れが生じることがあります。
デリケートゾーンにかゆみを起こす感染症の多くは、性交渉を介したものです。
一部の感染症は性交渉にかかわらず、日和見感染などにより発症します。
妊娠中の症状
妊娠中はホルモンバランスの変化により、膣内のpHも変わるため、デリケートゾーンにかゆみを感じやすくなります。
ほかにも、妊娠性掻痒や妊娠性痒疹など、妊婦特有の皮膚の病気が引き金になることもあります。
デリケートゾーンのかゆみや腫れで想定される病気
ここでは、デリケートゾーンにかゆみや腫れを引き起こす主な病気4つをご紹介します。
膣カンジダ
膣カンジダは、真菌(カビ)の1種であるカンジダ菌によって起こる病気です。
カンジダ菌は、皮膚や粘膜などに日常的に存在していますが、抗菌薬の服用・妊娠・風邪を引いたことなどにより、膣内で増殖することで症状が現れます。
強いかゆみやカッテージチーズ状のおりものが特徴的な症状です。
膣トリコモナス
膣トリコモナスは、トリコモナス原虫という寄生虫が膣や尿路などに感染することで発症します。
性交渉による感染が多くみられますが、便座や浴槽から感染することもあります。
主な症状は、悪臭をともなう泡状の黄色いおりものと、外陰部のかゆみやただれです。
性器ヘルペス
性器ヘルペスは、単純ヘルペスウイルスによって発症する病気で、主に性交渉により感染する性感染症の1つです。
いったん治癒しても、体力の低下などにより再発をくり返す特徴があります。
初めて感染したときは、水疱・ただれ・強い痛みの症状が現れ、人によっては高熱も出ます。
再発時の症状は軽く、ムズムズするようなかゆみや、ピリピリとした軽い痛みが現れます。
接触皮膚炎
接触皮膚炎は、いわゆる「かぶれ」のことです。
デリケートゾーンのかぶれを起こす主な原因には、以下のものが挙げられます。
- 汗
- おりもの
- 尿
- 石けん、入浴剤
- 生理用ナプキン
- 下着による擦れ、蒸れ
デリケートゾーンのかゆみや腫れの予防法
デリケートゾーンのかゆみや腫れを防ぐために、日常生活で気を付けたいポイントを3つご紹介します。
予防法①:デリケートゾーンの保湿
デリケートゾーンは、皮膚の角質層の厚さが非常に薄く、ほかの部分より肌が乾燥しやすい特徴があります。
肌が乾燥するとかゆみが起こりやすくなるため、デリケートゾーンをクリームや乳液などで保湿すると良いです。
一般的なボディ用の保湿剤で十分ですが、敏感肌の人はデリケートゾーン専用のものを選びましょう。
予防法②:デリケートゾーンを正しく洗う
デリケートゾーンをゴシゴシ擦りながら洗ったり、膣の中まで洗ってしまったりすると、肌や膣のバリア機能が低下してかゆみや腫れが起こりやすくなります。
デリケートゾーンを洗うときは、ぬるま湯またはデリケートゾーン用の洗浄剤を使って、なでるように優しく汚れを落としてください。
しわやひだ状になっている部分は広げながら洗って良いですが、膣の中までは洗わないようにしましょう。
予防法③:デリケートゾーンを刺激しない衣服を選ぶ
下着や衣服によっては、デリケートゾーンが蒸れたり刺激を受けたりすることがあります。
肌に直接つける下着は、吸湿性の良い天然の素材のものを選ぶと良いです。
通気性が悪くなるため、締め付けの強い衣服は避けるようにしましょう。
デリケートゾーンのかゆみや腫れへの対処法・治療法
日常生活で気を配っていても、デリケートゾーンのかゆみや腫れがあるときに、どのような治療方法があるか確認しましょう。
症状が現れている際、悪化させないための対処法も解説します。
市販薬
膣カンジダの場合、過去に医療機関での治療歴があれば、市販薬で対応可能です。
抗真菌薬が含まれた膣錠やクリーム剤で治療します。
かゆみ・かぶれのときは、鎮痒成分や抗炎症成分の配合されたデリケートゾーン専用の塗り薬で様子をみることができます。
ただし、デリケートゾーンのかゆみや腫れに対して、自己判断でステロイド外用剤を使用するのは避けましょう。
かゆみの原因によっては、ステロイド外用剤を使用することで症状が悪化する可能性があります。
5~6日ほど市販薬を使用しても改善しない場合は、医療機関を受診しましょう。
処方薬
デリケートゾーンにかゆみや腫れが続くときは、婦人科や皮膚科を受診しましょう。
問診や検査を行い、症状に応じた薬が処方されます。
治療に用いる主な薬剤は以下のとおりです。
- 接触皮膚炎:抗炎症成分や抗ヒスタミン成分などが含まれたクリーム剤・軟膏剤
- 膣カンジダ:抗真菌薬が含まれた膣錠、内服薬
- 膣トリコモナス:抗原虫薬が含まれた内服薬
- 性器ヘルペス:抗ウイルス成分の内服薬
いずれの場合も、完治するまで医師の指示通りに薬を使用することが大切です。
その他
デリケートゾーンのかゆみや腫れがあるときは、肌の刺激を抑えるため、生理用ナプキンの交換をこまめに行うと良いです。
感染症によるデリケートゾーンのかゆみや腫れでは、体力の低下によって症状が悪化しないように規則正しい生活をしましょう。
デリケートゾーンのかゆみや腫れは原因に応じた治療が大切
デリケートゾーンのかゆみや腫れを引き起こす原因はさまざまあります。
市販薬で様子をみることもできますが、少しでも早く治すためには、原因に合った治療を行うことが大切です。
症状があるときには放置せず、医療機関で診察を受けることをおすすめします。
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参考文献
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- 日本産婦人科学会:産婦人科診療ガイドライン-婦人科外来編2020
-
- MSDマニュアル「膣のかゆみおよび分泌物」