非定型うつ病の診断基準を知っておこう。なりやすい人の特徴とは!?

非定型うつ病

他人から理解されにくい非定型うつ病ですが、若者に多くみられる病気です。
理解されにくい症状であるがゆえに「ただの甘えではないか?」と判断されて、治療が遅れてしまうケースも少なくありません。

本記事では、非定型うつ病とは何か、診断基準、なりやすい人の特徴、治療法について紹介していきます。

非定型うつ病とは

非定型うつ病とは、「新型うつ病」とも呼ばれており、その名の通り型にあてはまらないうつ病です。
うつ病と診断されるためには、「DSM‐Ⅴ」または「ICD-10」などの精神疾患の診断に用いられる基準を満たす必要があります。

一方で非定型うつ病は、この診断基準にあてはまらない状態のことを指します。
なぜなら、非定型うつ病を発症する原因をはっきり特定できず、また合併症がとても多いために、判断がつきにくいからです。
うつ病は、セロトニンが少ないなど、何らかの脳の異常があるのではないかと考えられていますが、非定型うつ病の場合は脳の異常が関わっているかはっきりしておらず、抗うつ薬が効かない場合があるということがわかっています。
非定型うつ病の原因として、うつ病の一種であるが気分によって変動がある状態、不安障害の延長線上にある状態、双極性障害の延長線上にある状態、などが指摘されます。
また、慢性化したり繰り返したりすることにより、性格として固定化してしまい、パーソナリティ障害との区別がつかなくなってしまうことも指摘されています。
それぞれの患者の状態・背景から、原因を特定していくことが望ましい、との意見も出ており、研究段階の病気として様々な考え方が議論されている状況です。

非定型うつ病の一番の特徴は、普段は落ち込んでいる気持ちが続いていても、良いことがあれば明るい気分になることです。
他にも、急激な体重増加・過眠・他人からの批判に過敏・強い倦怠感・ハイテンションになったり過呼吸になったりする、などから2つ以上あてはまる場合に、非定型うつ病が疑われます。

非定型うつ病は、その時々で態度を変えているようにも見え「甘えている」と厳しい目でもみられることもあり、周囲の理解が得られないことに苦労している方もいます。
しかしながら非定型うつ病は、精神疾患の1つと考えられており甘えではありません。

双極性障害との違い

非定型うつ病は、双極性障害と似た部分を多く持ちます。
そのため経過を追っていく中で、非定型うつ病と診断されたのちに、双極性障害であると診断が変更になることもあります。
非定型うつ病そのものが、単極性なのか双極性なのか、専門家によって判断が異なるため、患者ごとにどの要素が強いのかを見ていくことが基本的な判断軸となります。

非定型うつ病の診断基準

非定型うつ病には、特化した診断基準はありません。
広義な意味の精神疾患として診断されるための基準である、DSM‐ⅤまたはICD-10のうち、非定型うつ病の診断のために参考にされるのが、DSM‐Ⅴです。

DSM‐Ⅴ:APA(米国精神医学会)

DSMとは、アメリカ精神医学会が作成し出版している、精神疾患の診断基準・診断分類のことで、5回目の改定であるため「DSM‐Ⅴ」と呼ばれています。
神経発達症群、統合失調症スペクトラム障害、双極性障害、抑うつ障害群不安症群などの診断名が22の大きなカテゴリーに分けられていることが特徴です。
非定型うつ病と診断するためには、まずは以下のうつ病の診断基準を満たし、かつ非定型の特徴を認めている状態であることが必要とされています。

【参考:DSM‐Ⅴのうつ病の診断基準】

  1. 1.以下の症状のうち5つ以上が2週間の間にほとんど毎日存在し、抑うつ気分か興味・喜びの喪失のどちらかがあること
    ①抑うつ気分
    ②興味・喜びの喪失
    ③体重減少・食欲減退または体重増加・食欲増加
    ④不眠または過眠
    ⑤精神運動焦燥または制止
    ⑥疲労感または気力減退
    ⑦無価値観または罪責感
    ⑧思考力低下・集中力低下・決断力低下
    ⑨希死念慮・自殺企図
  2. 2.非常に強い苦痛や社会的・職業的なデメリットがある
  3. 3.薬やアルコールやその他の病気のせいではないこと

ICD-10:WHO(世界保健機関)

ICD-10とは、WHO(世界保健機関)が、病因や死因から統計データを体形的に分析したものから得られた分類や基準で、日本語に訳すと「国際疾病分類」と呼ばれます。
この分類は精神疾患だけでなく、疾患全般が対象です。
このICD-10には、他の精神疾患の基準はありますが、非定型うつ病についての基準は定められていません。

非定型うつ病になりやすい人

非定型うつ病は、20代〜30代の女性に多くみられています。
様々な状態が引き金となっているため、原因もさまざまではありますが、非定型うつ病になりやすい人の特徴はある程度の傾向があります。
ただし、これで非定型うつ病の診断と決定されるわけではないため、気になる方は医療機関を受診しましょう。

特徴1.家族にうつ病の既往がある人

うつ病は遺伝と関わりがあるといわれています。
非定型うつ病になる人は、家族にうつ病を罹患したことがある人がいることが多いようです。

特徴2.不安になりやすい人

非定型うつ病では、何らかの不安障害を合併している人が多くみられます。
対人関係に対する不安が強い状態が継続することで、拒絶過敏性につながっていくといわれています。

特徴3.トラウマを持つ人

何らかのトラウマ(外傷体験)を持つ人に多いといわれています。
似たような出来事が起きたとき・起きそうなときに、過去のトラウマを思い出しやすくなることが影響していると考えられています。

特徴4.気になる成育歴がある人

非定型うつ病には、成育歴が関係しているといわれています。
両親が離婚・死別していたり、虐待を受けていたりなど、親から十分な愛情を注がれなかった体験を持っている人に多い傾向があります。

特徴5.プライドが高い・完璧主義・責任感が強い人

他人からの評価が気になってしまい、自身を追い込んでしまいやすい人に多くみられます。
自分に自信がない状態が続くことで、さらに発症しやすくなります。

特徴6.優しい・いい子である人

他人からの期待に応えないといけないと思っている人に多くみられます。
対人恐怖の傾向がみられる人に多いといわれています。

非定型うつ病の治療法

非定型うつ病は、うつ病と基本的な治療方法が同じで、休養・薬物療法・精神療法(またはカウンセリング)の大きくわけて3つがあります。

詳しくは、こちらの関連記事にて解説しておりますので、併せてご覧ください。
【関連記事:鬱(うつ)病の症状や抗うつ薬の種類を知っておこう!治るきっかけはある?

非定型うつ病について詳しいことは分かっていない

非定型うつ病は、分かっていないことも多い精神病のため、まわりの人に理解してもらえないこともあるかもしれませんが、1人で抱え込まないことが重要です。
まだ研究段階である病気であるため、治療方針や治療薬も今後変わっていく可能性もありますので、最新の情報を取り入れていきましょう。

とどくすりは、薬局へ行かずに処方せんの薬を宅配便で受け取れるサービスです。
処方された薬についてはオンラインで薬剤師から説明を受けられるため、ネット環境がある場所であれば、どこからでも処方薬について問い合わせることができます。
非定型うつ病の処方薬の受け取りには、是非とどくすりの活用をご検討ください。

参考文献
  • 厚生労働省 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト こころの耳「3 うつ病の治療と予後」