「布団に入ってもなかなか寝つけない」「夜中に何度も目が覚めてしまう」
そんな夜が数週間、数か月と続くと、日中のだるさや集中力の低下となって表れてきます。不眠症の原因は一つではなく、ストレスや寝室の環境、カフェインや寝酒、体の痛みやかゆみ、加齢、服用中の薬などが重なって起こることがほとんどです。だからこそ、当てはまるものを一つずつ確かめることが、結果として睡眠の改善につながるでしょう。
この記事では、不眠症と寝不足の違いや4つのタイプ別の特徴、主な原因、背景に隠れていることがある病気を整理しました。今夜から試せる睡眠習慣の見直し方と受診の目安もあわせて紹介します。
この記事の要約
- 不眠症は眠る時間があるのに眠れず、日中の不調が出ている状態
- 症状は入眠困難・中途覚醒・早朝覚醒・熟眠障害の4タイプに分かれる
- 原因はストレス、寝室環境、嗜好品、体の症状、加齢、薬の副作用が重なる
- いびきや強い眠気、早朝覚醒と気分の落ち込みが続く場合は病気が隠れていることがある
- 不眠が1か月続くときは市販薬を続けず主治医に相談するのがおすすめ

不眠症とは?

不眠症は、寝つけない、夜中に目が覚める、朝早く目が覚める、眠った気がしないといった症状が続き、日中の眠気やだるさ、集中力の低下など生活への支障が出ている状態です。
厚生労働省のe-ヘルスネットでは、一般成人の30〜40%が何らかの不眠症状を持ち、慢性不眠症は成人の約10%にみられるとされています。特別な病気ではなく、加齢とともに増えていくこともある身近な不調です。眠れない夜が一時的にあるだけなら不眠症とまで呼ぶことは少ないです。
受診などで対処したい症状であるのかを見分ける手がかりは、以下の2点です。
- 夜の症状が一定期間続いていること
- 日中の不調を伴っていること
ストレスや生活習慣、寝室の環境、体の病気、服用中の薬などの原因が重なって生じやすいため、まずは自分の症状がどんな状態に近いかを整理すると、生活の工夫で整えられる部分と、主治医に相談したほうがよい部分に着目しやすくなるでしょう。
不眠症と寝不足の違い

眠れないと感じても、原因が不眠症なのか単なる寝不足なのかで対処は変わります。
ここでは、眠る機会があるか、症状が続いている期間、日中の不調という3つの観点から、両者を見分ける目安を整理します。
参考:
不眠症 | 生活習慣病などの情報(e-ヘルスネット) | 健康日本21アクション支援システム Webサイト
参考:睡眠障害は理解して早期受診!が重要|とうきょう健康ステーション
眠る時間はあるのに眠れないのが不眠症
不眠症とされるのは、眠る機会が確保されているにもかかわらず眠れない状態です。仕事や育児で睡眠時間そのものを削っている場合は睡眠不足に当たり、対処の方向性も変わってきます。
布団に入る時間を確保しても寝つけない、途中で目が覚めて再び眠れないのであれば、睡眠自体の問題として捉えたほうがよいでしょう。
3か月以上続くものが慢性の不眠症
眠れない夜が数日続く程度であれば、自然に落ち着くケースが多いです。
慢性の不眠症とされるのは、不眠が長く続き、日中の不調を伴うようになった状態を指します。前述したように、一般的な成人においてそこまで珍しい病気ではないと考えられます。一方で慢性化すると自然には戻りにくいとされるため、早めに相談先を考えておくと安心につながるでしょう。
日中に眠気やミスが出るなら治療対象
治療の対象になるかどうかは、多くの場合、夜の眠りよりも日中の状態で判断されます。強い眠気や倦怠感、集中力の低下、気分の落ち込みが続いているのであれば、様子見と自身で対処できる範囲では改善しにくいおそれがあります。眠れない日があっても日中に困っていない場合は、生活習慣の調整で落ち着くケースもあるでしょう。
判断に迷うときは、日中の状態も含めて主治医に伝えてみるのがおすすめです。
不眠症の4つのタイプ

不眠の症状は、入眠困難・中途覚醒・早朝覚醒・熟眠障害の4つに分かれます。複数の型が重なる人も多いです。
自分に近い型がないか確認して、原因の見当をつけやすくしましょう。
参考:
不眠症 | 生活習慣病などの情報(e-ヘルスネット) | 健康日本21アクション支援システム Webサイト
参考:日本睡眠学会
【入眠困難】寝つくまで30分以上かかる
入眠困難は、布団に入ってから寝つくまでに30分以上かかる状態です。眠れない時間が延びるほど「今夜も眠れないかもしれない」という不安も強まりやすく、緊張がさらに寝つきを妨げる要因にもなりがちです。
仕事や家庭の心配ごとを抱えた時期に現れやすいタイプとされています。
【中途覚醒】夜中に何度も目が覚める
中途覚醒は、いったん眠ったあとに何度も目が覚め、再び寝つきにくくなる状態です。加齢とともに増える傾向があり、頻尿や痛み、いびきといった体の要因が背景にある場合もあります。
眠りが細切れになるぶん、翌日の疲れが抜けにくくなることも多いです。
【早朝覚醒】予定より2時間早く目覚める
早朝覚醒は、起きたい時間より2時間ほど早く目が覚め、二度寝もできない状態を指します。年齢が上がるほど体内時計は前倒しになりやすく、高齢の方に多いとされるタイプです。気分の落ち込みや意欲の低下が重なるときは、うつ病に伴う不眠の可能性も考えられます。
厚生労働省の睡眠指針でも、早朝に目が覚める、熟睡感がないといった不眠がうつ病の特徴として挙げられています。
【熟眠障害】寝ても疲れが取れない
熟眠障害は、睡眠時間を確保していても休まった実感が得られない状態です。深い眠りが減って浅い眠りが続くことで起こるとされ、いびきや無呼吸、脚の不快感といった体の要因が背景にある場合もあります。
ほかの3つの型と重なって出ることが多く、単独で起こるケースはそれほど多くないとされます。
不眠症の主な原因
多くの場合、不眠の原因は、心理面、寝室の環境、嗜好品、体の症状、加齢、服用中の薬の6つに整理できます。
原因はどれか一つではなく、複数が重なって眠りを妨げているケースが多いです。
参考:
不眠症 | 生活習慣病などの情報(e-ヘルスネット) | 健康日本21アクション支援システム Webサイト
参考:睡眠障害は理解して早期受診!が重要|とうきょう健康ステーション
参考:睡眠対策 |厚生労働省
ストレスや不安で頭がさえて眠れない
心配ごとや緊張が続けば、体は休息の状態に切り替わりにくく、寝つきが悪くなる傾向にあります。仕事や家庭の悩みだけでなく、旅行や行事の前に気持ちが高ぶって眠れないケースも同様の状態です。
きっかけになった出来事が落ち着けば改善に向かう場合が多い一方で、眠れない状態だけが習慣として残るおそれもあります。
光や音、暑さが眠りを浅くする
寝室の光や音、暑さ寒さは、眠りの深さに影響する傾向にあります。夜間の騒音や照明が残る部屋では途中で目が覚めやすく、高い気温と湿度が続く時期にも眠りは浅くなりがちです。遮光や防音、冷暖房の設定など、環境側から調整できる余地が大きい要因の一つでもあります。
寝酒やカフェインが中途覚醒を招く

寝る前のお酒とカフェインは、眠りの質を下げる代表的な要因の一つです。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、カフェインの摂取量が1日400mg(コーヒー700cc程度)を超えると夜に眠りにくくなる可能性があり、夕方以降の摂取は夜間の睡眠に影響しやすいと説明されています。寝酒は寝つきを早める一方で、アルコールが分解されたあとは眠りが浅くなり、中途覚醒が増えやすくなります。
就寝前の喫煙も、ニコチンの覚醒作用によって眠りを妨げる要因の一つです。
痛みやかゆみ、頻尿で目が覚める
夜間に体の症状が出ている場合は、症状自体が不眠の要因になり得ます。関節や傷の痛み、皮膚のかゆみ、咳や息苦しさ、夜中のトイレなどは、眠りを途切れさせる代表例です。
持病の治療で通院している場合は、夜間の症状が続いていることを主治医に伝えると、治療内容の調整につながることもあります。
加齢や更年期で眠りが途切れやすくなる
年齢を重ねると眠りは浅くなり、早い時間に目が覚めやすくなる傾向にあります。日中の活動量が減ることも、夜の眠りが浅くなる一因です。
女性の場合は月経前や更年期など、ホルモンの変動が重なる時期に寝つきや眠りの深さが安定しにくくなることもあります。
服用中の薬の副作用で寝つけなくなる
服用中の薬の影響で不眠が生じることもあります。
厚生労働省のe-ヘルスネットでも、慢性不眠症の原因の一つとして薬剤の副作用が挙げられています。新しい薬を飲み始めた時期と眠れなくなった時期が重なる場合は、自己判断で中止せず、薬の名前と飲み始めた時期を主治医に伝えて相談しましょう。市販薬やサプリメントを併用している場合は、あわせて伝えるのを忘れないようにしましょう。
眠れない裏に病気はある?
眠れない状態の背景には、治療が必要な病気が隠れていることがあります。
いびきや強い眠気、気分の落ち込み、脚の不快感を伴うときは、不眠だけを治そうとせず、あわせて出ている症状も医師に伝えましょう。
参考:
不眠症 | 生活習慣病などの情報(e-ヘルスネット) | 健康日本21アクション支援システム Webサイト
参考:睡眠障害 | 生活習慣病 | 一般社団法人 日本生活習慣病予防協会
大きないびきは「睡眠時無呼吸」を疑う
眠っている間に呼吸が止まるようないびきが続く場合は、「睡眠時無呼吸症候群」の影響で眠りが浅くなっている可能性があります。厚生労働省のe-ヘルスネットでも、夜間の睡眠の質が低下して日中に眠気が出る病気の代表として閉塞性睡眠時無呼吸が挙げられています。家族から呼吸が止まっていると指摘された経験がある場合、診察時に主治医へ伝えると診断の手がかりになるでしょう。
参考:
昼間の眠気 – 睡眠不足だけではなく睡眠・覚醒障害にも注意が必要 | 生活習慣病などの情報(e-ヘルスネット) | 健康日本21アクション支援システム Webサイト
早朝覚醒が長く続くなら「うつ病」を疑う
早朝に目が覚める日が続き、気分の落ち込みが重なっているときは、うつ病に伴う不眠の可能性も考えられます。食欲の変化や興味の低下、自分を責めるような考えが増えている場合は注意しましょう。
受診する際は、眠れないことだけではなく、日中の気分や食欲の変化まで含めて主治医に伝えるのがおすすめです。
脚のむずむずは「むずむず脚症候群」を疑う
就寝前に脚がむずむずして動かしたくなる場合は、「むずむず脚症候群」が寝つきを妨げているおそれもあります。厚生労働省の睡眠指針でも、むずむず脚症候群は夜間の睡眠の質を悪化させる病気として挙げられています。
参考:厚生労働省「うつ病チェック(簡易抑うつ症状尺度:QIDS-J)」
参考:
ホルモン変動がある女性こそ知っておきたい「睡眠のトリセツ」|専門家コラム|働く女性のウェルネス向上委員会
高血圧や糖尿病が眠りを乱すこともある
高血圧や糖尿病などの持病があると、不眠が起こりやすくなる傾向にあります。
厚生労働省のe-ヘルスネットでは、睡眠の問題と生活習慣は関係が深く、睡眠障害を放置すると心身の健康を損なうおそれがあると説明されています。持病の治療中に眠れない日が増えたときは、血圧や血糖の状況とあわせて主治医に相談するのがおすすめです。
参考:
快眠と生活習慣 | 生活習慣病などの情報(e-ヘルスネット) | 健康日本21アクション支援システム Webサイト
今日からできる!睡眠習慣の見直し方
眠りを整える工夫は、朝の起床、夜の寝床の使い方、嗜好品、昼寝の4つに絞ると取り組みやすくなります。
一晩で結果が出るものではないため、2週間ほど続けて様子をみるのがおすすめです。
参考:厚生労働省「Good Sleepガイド(成人のための)-健康づくりのための睡眠ガイド2023-」
参考:
快眠と生活習慣 | 生活習慣病などの情報(e-ヘルスネット) | 健康日本21アクション支援システム Webサイト
起きる時間をそろえて朝日を浴びる

眠りを整える出発点は、就寝時刻ではなく起床時刻です。朝に光を浴びると体内時計がリセットされ、夜に眠気が出るタイミングも安定しやすくなります。休日の起床が大きくずれると平日の寝つきにも影響するため、差は1時間程度に収めると続けやすいはずです。
眠くなってから寝床に入るようにする
寝つけないまま横になり続けるより、眠気を感じてから布団に入るほうが寝つきは改善しやすいと言われています。寝床を眠るための場所として使い分ければ、布団に入る合図と眠気が結びつきやすくなるでしょう。
眠れない時間が続くときは、いったん寝床を離れて静かに過ごすと、眠れないことによる焦りが和らぐこともあります。
参考:
島根県松江保健所「良い睡眠のために(高齢者のためのGood Sleepガイド/健康づくりのための睡眠ガイド2023)」
カフェインと寝酒は夕方までにとどめる
カフェインと寝酒は、夕方以降に控えると眠りへの影響を抑えやすくなります。厚生労働省のe-ヘルスネットによると、カフェインの代謝には個人差があり、敏感な人は就寝の5〜6時間前から控えるほうがよいとされています。寝酒は前述のとおり中途覚醒を招きやすいため、夜のリラックスにはぬるめの入浴や軽いストレッチなど別の方法に置き換えると続けやすくなるでしょう。
昼寝は15分程度で切り上げる
昼寝は15分程度で切り上げると、午後の眠気を和らげやすくなります。
厚生労働省のe-ヘルスネットでは、高齢の方が30分程度の昼寝を上手に使うことで、夕方のうたた寝が減り夜によく眠れるようになるケースも紹介されています。長すぎる仮眠や夕方以降の昼寝は、当日の寝つきを遅らせる要因になりかねません。
不眠症における受診の目安

不眠が続いて日中の生活に支障が出ている場合は、受診も現実的な選択肢の一つです。
治療は生活習慣と睡眠環境の見直しから始まり、必要に応じて薬による調整を組み合わせる流れが一般的です。
参考:
不眠症 | 生活習慣病などの情報(e-ヘルスネット) | 健康日本21アクション支援システム Webサイト
参考:厚生労働省「Good Sleepガイド(成人のための)-健康づくりのための睡眠ガイド2023-」
参考:
快眠と生活習慣 | 生活習慣病などの情報(e-ヘルスネット) | 健康日本21アクション支援システム Webサイト
不眠が1か月以上続いたら医師へ相談する
眠れない状態と日中の不調が1か月ほど続いている場合は、相談を検討したい段階と言えるでしょう。厚生労働省のe-ヘルスネットでは、不眠が続く場合にまずかかりつけ医へ相談し、睡眠指導や睡眠薬による治療でも改善しないときに精神科や心療内科などの専門医へつなぐ流れがおすすめされています。相談先がわからない際は、いま通っている診療科の主治医にまずは相談してみましょう。
市販薬で改善しないときは受診を検討する
市販の睡眠改善薬は一時的な不眠を想定した製品のため、慢性的な不眠には適さない場合もあります。数日使っても眠れる感覚が戻らないなら、その薬を使い続けるより受診に切り替えるほうが改善につながりやすいでしょう。
持病の薬を飲んでいる人は飲み合わせの確認が必要になるため、市販薬を使う前に薬剤師や主治医へ相談するのがおすすめです。
通院中であれば主治医に眠りの悩みを伝えてみる
持病で通院している場合は、診察の場で眠りの状態もあわせて伝えましょう。血圧や血糖、痛み、かゆみといった症状と不眠は互いに影響し合うことが多いため、治療全体の見直しにつながることもあります。
服用中の薬が眠りに関わっている可能性もあるため、飲んでいる薬を再度把握してもらえれば安心につながります。
睡眠薬の量や種類は医師の指示のもとで調整すること
睡眠薬は、医師の判断で種類と量、使う期間を決めながら使います。
厚生労働省の「こころの耳」では、不眠の訴えがあってもすぐ睡眠薬を出すのではなく、まず睡眠衛生指導を行い、効果とリスクを評価したうえで薬物療法を行う考え方が紹介されています。e-ヘルスネットでも、現在使われている睡眠薬は適切に使用すれば安全と説明されているため、過度に服薬を怖がる必要はないでしょう。
薬を減らしたい、やめたいと感じたときも、自己判断ではなく主治医に相談しながら進める必要があります。
参考:
2 良質な「睡眠」をとる(寝る):ストレス対処法としての生活習慣 - 食う・寝る・遊ぶの充電法|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト
まとめ
不眠症は、眠る時間は確保できているのに寝つけない、夜中に目が覚めるといった症状が続き、日中の眠気やだるさなど生活への支障が出ている状態です。
症状は入眠困難・中途覚醒・早朝覚醒・熟眠障害の4つのタイプに分かれ、原因もストレスや不安、光や音などの寝室環境、カフェインや寝酒、痛み・かゆみ・頻尿、加齢や更年期、服用中の薬の副作用と幅広く、複数が重なっているケースが多く見られます。大きないびきと強い眠気、早朝覚醒と気分の落ち込みが続くときは、睡眠時無呼吸症候群やうつ病などが隠れていることもあります。まずは起床時間をそろえて朝日を浴びる、夕方以降のカフェインと寝酒を控えるといった見直しから始めましょう。
不眠と日中の不調が1か月ほど続く場合は、市販薬を使い続けずに主治医へ相談するのがおすすめです。
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