禁煙治療は禁煙外来での適切な治療が不可欠 禁煙から考える健康な会社と社会づくり

イーヘルスクリニック新宿院

「やめたくてもやめられない」もののひとつに、喫煙習慣があります。喫煙は依存症の一種です。そのため、スムーズな卒煙に向けて医療の力を借りる方も多いです。日本では2006年から、特定の条件を満たした禁煙治療は健康保険の適用対象です。近年では、従業員の健康を考えて、社員の禁煙治療をサポートする企業が増えていることをご存知でしょうか。

イーヘルスクリニック新宿院の院長、天野方一先生はご自身の経験から「働き盛りの方が医療をスムーズに受けられる環境を提供したい」と考え、同院を2022年4月に開院しました。今回は天野先生に、禁煙治療の概要、流れ、「とどくすり」を利用しはじめたきっかけと感想、クリニックに込めた思いについて伺いました。

禁煙外来での治療は「タバコに対する思い込み」を解くことから始まる

禁煙外来は、喫煙をやめたくてもやめられない方をお手伝いするための場所と考えてください。「タバコをやめられないのは意志が弱いせい」と思われがちですが、決してそうではありません。なぜなら、喫煙をやめられない方の多くはニコチン依存症という病気を抱えている状態になっているからです。

初めて禁煙外来を受診した患者さんには、喫煙がやめられないのは患者さんが悪いのではなく依存症のせいであることと、病気を治すために服薬治療等を活用してクリニックと二人三脚で治療を進めていくことをご説明します。

禁煙治療は、日本循環器学会の禁煙推進委員会が出す『禁煙治療のための標準手順書』に則って問診と診察を実施し、保険適用の可否の判断から始めます。

禁煙治療プログラムは医師と二人三脚で12週間後のゴールを目指す

禁煙治療は、初期診察と4回の再診を実施します。初回診察は、以下の4項目を実施します。

 1. 喫煙状況の問診
 2. 禁煙の準備性に関する問診
 3. ニコチン依存症のスクリーニングテスト(TDS)の実施
 4. 喫煙に伴う症状や身体所見の問診および診察

上記を実施した結果、以下の4条件を満たす患者さんに対して、健康保険が適用される標準禁煙治療プログラムを実施します。

 1. 直ちに禁煙しようと考えていること
 2. TDSが5点以上でニコチン依存症と診断されていること
 3. 35歳以上の場合は、ブリンクマン指数(一日の喫煙本数✕喫煙年数)が200以上
 4. 禁煙治療を受けることを文面により同意していること

ただちに禁煙しようと考えていない患者さんや、ニコチン依存症ではないと診断した患者さんには、自由診療による禁煙治療を提案するほか、簡易な禁煙アドアバイス、セルフケア教材等の資料を提供します。

標準禁煙治療プログラムが適用となる患者さんの場合、検査結果を説明してから、相談のうえで禁煙開始日を決めます。その後、禁煙補助剤のニコチン製剤やバレニクリンについて説明し、使用する薬剤を決定します。また2020年より、呼気一酸化炭素10ppm以上の患者さんを対象にバレニクリンをした場合、禁煙治療アプリとCOチェッカーの併用により保険算定が可能になりました。

再診時は、問診で禁煙治療の状況と離脱症状の有無を確認します。喫煙状況とニコチン摂取量のモニタリングと評価・説明も行いますので、治療の進行度合と問題点を一緒に把握し、現状に対するアドバイスもします。

喫煙の離脱症状として、喫煙欲求、気分の落ち込み、イライラ・欲求不満・怒り、不安、集中力の低下などが禁煙開始から2週間ほど出現します。特に喫煙欲求は長引く傾向があります。禁煙治療に対する不安は、担当医や看護師が現状をふまえたうえで解決策をご提案しますのでご相談ください。薬剤も変更可能ですので、副作用が出現した場合もすぐご相談ください。

初回診察から8週間後に実施する3回目の再診では、「禁煙証明書」の作成をお願いしています。

最終回となる4回目の再診は、過去に実施した再診と同じ内容の診療を実施すると同時に、今後も禁煙を継続できそうか質問します。禁煙後1年以内は喫煙が再開する可能性があり、「いつか吸ってしまうのでは」と考えている患者さんには、禁煙を継続できるよう1本もタバコを吸わないようアドバイスしています。

禁煙治療はオンライン診療でも対応可能!

新型コロナウイルス感染症の流行の影響を鑑み、禁煙治療でもオンライン対応が認められています。当院は、「禁煙治療を受けたいのに、クリニックが開いている時間帯に退勤できない」という方を少しでも減らしたくて、オンライン診療を導入しています。禁煙外来では、初回診察はクリニックにお越しいただきますが、再診はクリニックへのご来院とオンライン診療から選択可能です。

再診をオンライン診療で実施した場合、患者さんの自己申告と問診内容をもとに呼気一酸化炭素濃度の評価を行い、受診終了後に患者さん宛に処方薬もしくは処方箋を送付します。

オンライン診療による再診を希望された場合でも、3回目の再診で禁煙証明書をお渡し、身近な方からの署名を記入後、4回目の再診時に提示していただきます。

マイナスをゼロにする「健康経営」からいかによく生きるかを考える「ウェルビーイング経営」へ

近年、「健康経営」を重視する企業が増えています。簡単にいうと、経営的観点から従業員の健康管理を考え向上を目指す概念です。最近ではさらに進化した「ウェルビーイング経営」へのシフトチェンジが進んでいます。フィジカル、メンタル、そして社会的な面でも満たされるような組織環境を整える、つまり従業員がより生き生きと働いて生活できるような環境を企業が整えようという考え方です。

企業視点で考えると、従業員の健康は会社の生産性にも直結します。そのため、従業員の健康を守るための施策を考え実行すること、特に働き盛り世代の健康を支えることは、ひいては組織全体の利益にもつながるでしょう。

今回取り上げた禁煙治療は、まさに健康経営やウェルビーイング経営に関連する要素です。心身の病気や影響が原因で従業員が本来のパフォーマンスを発揮できない状態に陥らないよう、原因となる病気と向き合い直していく姿勢が企業には求められています。

日本の成人喫煙率は2019年時点で16.7%です。禁煙治療が保険適用になって十数年経過したにもかかわらず喫煙率が高いのは、心血管疾患、動脈性関連疾患、がん、など、喫煙による人体への悪影響について正しく認知されていないことも関係していると考えています。

健康経営やウェルビーイング経営の一環として、禁煙治療にかかる費用をサポートする企業が増えています。禁煙治療は健康保険適用となった場合でも約2万円(薬代を除く)かかることを考えると、企業による治療費負担は費用面をネックに感じている方の禁煙治療を後押しする要素になりうるでしょう。

オンライン診療との相性がよい「とどくすり」

「平日は仕事があるから、医療機関を受診してその後調剤薬局に行く時間が確保できない」と頭を抱える方も多いのではないでしょうか。「とどくすり」のオンライン薬局と宅配サービスを知ったのは、「受診へのハードルを下げることはオンライン診療の導入でクリアできるけれど、処方薬をシームレスに届けるにはどうしたらいいのだろう」と考えていたタイミングでした。実際に使用している医師から聞いた感想が好意的だったことも後押しとなり、すぐに導入を決めました。

体感値ですが、診療時にとどくすりを紹介して実際に使用する患者さんは8割近いです。オンライン診療もそうですが、便利さから一度使用したらそのまま使い続ける方も多い印象です。

「とどくすり」を利用するのは、糖尿病や高血圧のような慢性疾患で当院を受診する患者さんが多いです。それ以外にも、クリニックや調剤薬局で待つことなく自宅で処方薬を受け取れるので、発熱などで外出が難しい患者さんからも好意的な感想をいただいています。もちろん、今回ご紹介した禁煙治療を受けている患者さんの中にも、とどくすりを使用している方がいます。

「医療を通じ『働き盛りの人・家族』の健康を支え、社会をエンパワーメントする。」に込めた思い

イーヘルスクリニック新宿院は、医療を必要とする方が、いつでも、どこでも受診できるクリニックです。予防(各種健康診断)から精密検査まで一気通貫して対応しているほか、栄養士による栄養指導やウェビナーなども積極的に開催しており、「これなら忙しくてもスムーズに医療を受けられる」と感じていただける体制が整っています。

このクリニックを立ち上げたのは、医師になってからさまざまな場面で労働者の健康管理について考える機会があったことが大きく影響しています。

臨床医時代、腎臓内科医として研鑽を積んだ後、海外留学をして公衆衛生を学びました。そこで、「労働者の病気予防や重症化予防には、労働環境を変えることが重要だ」という認識を強め、帰国後は産業保健領域で知見を広げました。

産業医の立場から、病気があったり不調を自覚していたりするのに医療機関を受診できない方にもたくさん会いました。仕事のパフォーマンスが落ちた方、病気を発症したり重症化させてしまった方、仕事を優先して治療を離脱してしまい病気をさらに悪化させた方もいたのです。

「毎日一生懸命働いている方たちの中にも、医療を必要としている方は大勢いる。少しでも彼らと医療をつなぎたい」と考え、このクリニックを立ち上げました。

仕事に邁進するビジネスパーソンの利便性を重視しDX化を推進、オンライン診療も積極的に活用

現代の日本においては、病気とうまく付き合いながら生活できるようになってきました。健康志向も高まっています。そうした中で、病気になったときはもちろん、病気を予防したいとき、心配なことがあるときにも気軽に医療に触れられるような環境作りが非常に重要だと考えています。

そこで、いつでも必要なときに、直接でもオンラインでも医療を受けることができるクリニックとしてイーヘルスクリニック新宿院を開業しました。特に働き盛りで多忙な方などにとっては、医療機関を受診する時間を作ることはそう簡単ではないと思います。

働き盛りの世代が医療を諦める大きな原因としては、待ち時間の長さなどが関係しています。そこで当院は、医療必要としている方が医療にアクセスしやすい環境を整えようと、

  • オンライン診療と来院診療の使い分け
  • 平日夜間や土日も診療
  • 完全予約制の導入など、待ち時間ゼロに向けた取り組み
  • 保険診療に自由診療のサービス

寿命の延伸や社会のあり方の変化を受けて、働く年数は以前よりも大幅に伸びました。また、新技術の登場や既存技術の進化により、働き方や仕事に対する考え方も絶え間なく変化しています。そうなると、これからの時代を生きるビジネスパーソンには、仕事とより長期間付き合うことが求められるようになるでしょう。

院長 天野方一

プロフィール

院長 天野方一

当院は、より多くの方の健康面での相談役としてお役に立ちたいと思っています。今回ご紹介した禁煙治療はもちろん、ほかにも健康で気になっていることがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。

イーヘルスクリニック新宿院
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