新型コロナウイルス第6波に備えて

今回は、管理栄養士・公認スポーツ栄養士の山田志織さんに、新型コロナウイルス第6波に備えて、私たちが何をすればよいのか、まとめていただきました。

外出自粛やアルコール消毒など、個人での感染予防対策、さらにはワクチン接種が進んでいることもあり、現在コロナウイルスの感染者数は全国的に減少しています。しかしこのまま新たな広がりをみせず収束するということは考えにくく、今後やってくるかもしれない「第6波」に向けて、引き続き私たち一人ひとりがウイルス感染への知識を深め、あらかじめ備えておく気持ちをもっておくことが大切です。

★まずは感染対策の基本から理解を深めておきましょう。

<飛沫感染と接触感染>コロナウイルスは飛沫感染や接触感染が主な感染経路と考えられています。
飛沫感染は、咳やくしゃみ、会話によってウイルスが含まれた唾液などの飛沫が空気中に飛び出し、それを他人が吸い込んで感染することです。飛沫の到達距離は1~2mと考えられています。
接触感染は、皮膚や粘膜の直接的な接触、または感染者が触れたドアノブや生活器具などにウイルスが付着し、それを他人が触れることによっておこる感染です。

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新型コロナウイルスは感染してすぐに症状が現われるわけではなく、潜伏期間は1~14日、平均5~6日で発症するといわれています。また、感染していても無症状の場合もあります。
そのため陽性者と接したなど、感染の疑いがある人は14日間の隔離期間を設けたり、感染が疑われる状況でない人でも日頃から飛沫が飛ばないようマスクをしたり、2m以上の間隔をとったり、多数の人が触れる物はこまめに消毒をすることなどが推奨されています。

<こまめな換気>

また、集団感染が確認された場所で共通している条件の1つに「換気の悪い密閉空間であった」という報告があります。
公共施設では扉の開放や機械による換気が積極的におこなわれるようになっていますが、家庭内においては冬になると寒さを逃れるために窓を閉め切ってしまい換気がおろそかになりがちです。
室内空間では目に見えていない埃が舞っているため、帰宅時に外から運んできたウイルスが部屋の埃に付着して一緒に吸い込んでしまい感染することも考えられます。これからやってくる寒い冬の季節、家庭内感染を防ぐためにもこまめな換気を心がけながら部屋の空気を清潔に保っておくことが大切です。

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★気になる症状が出たときはどう対処したらいいのでしょうか。

<新型コロナウイルス感染による症状>普段からしっかりと対策していても、ウイルス感染を100%防ぐことは困難です。また、新型コロナウイルスに感染した時の初期症状は風邪やインフルエンザの症状と似ているため、区別がつきにくいという特徴があります。
新型コロナウイルスによる感染を早期に気づければ、その後の対応を早めにとることができるため、重症化の予防や他者への感染を最小限に抑えることができます。
感染拡大を防ぐために、改めて、症状や対応についての情報を確認することが大切です。

新型コロナウイルス感染症の症状は、人によって異なりますが、ほとんどの感染者では軽度から中等度の症状であり、入院せずに回復します。

●最もよくある症状:
・発熱
・咳
・倦怠感
・味覚または嗅覚の消失

●時折みられる症状:
・喉の痛み
・頭痛
・痛み
・下痢
・皮膚の発疹、または手足の指の変色
・眼の充血または炎症

●重篤な症状:
・呼吸が苦しい、または息切れ
・発話障害、運動障害、錯乱
・胸の痛み

症状が重篤な場合は、直ちに医師の診察を受けてください。
かかりつけ医師または医療機関にかかる前に、必ず事前に電話で連絡をとってください。

症状が軽度であり他に疾病がない人は、自宅療養を行う必要があります。
ウイルスに感染してから症状が現れるまでの期間は平均5~6日ですが、長い場合は14日かかる場合があります。

出典:WHOのホームページより

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症状だけ見るとやはり風邪などに似ていますが、風邪やインフルエンザの場合発熱などの症状は2~5日で緩和していくのに対し、新型コロナウイルスは潜伏期間が1~14日と長いため、これらの症状が長く(4日以上)改善がみられない場合は、感染の疑いが大きいと考えられます。

また「味覚や嗅覚の異常」が生じることもあり、鼻が詰まっているわけではないのに、味や匂いがわかりにくいといった症状がある場合も感染の可能性が高くなります。

<PCR検査>PCRとは「ポリメラーゼ・チェーン・リアクション(ポリメラーゼ連鎖反応)」の略であり、この反応を用いたPCR検査は新型コロナウイルスの感染有無を確認するための精度の高い検査として広くおこなわれています。

・保険適用と自費の違い
PCR検査は保険適用で受けられる場合と自費で受ける場合があります。

保険適用で受けられる対象としては、医療機関での受診の結果、新型コロナウイルス感染の疑いがありPCR検査が必要と判断された場合です。その場合、医療機関から診療情報提供書、予診票などが渡されます。費用は実質無料です。(医療機関の初診・再診料は自己負担あり)※2021年11月現在

一方、自費で検査を受ける場合はどなたでも検査が可能です。気になる症状はないが念のため受けておきたいという場合は自己負担によって受けることができます。費用は一般的に2万~3万円程度の医療機関が多く、陰性証明書を発行する場合は追加費用(2000~5000円ほど)が発生することが一般的です。

自費検査を提供する検査機関一覧は厚生労働省のホームページにまとめられています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/covid19-jihikensa_00001.html

・まずは医療機関、相談センターへ
新型コロナウイルス感染の疑いのある場合、かかりつけ医がいる場合は、日ごろから受診している医療機関へ電話でご相談ください。かかりつけ医がいない場合は、各都道府県においてコロナウイルスに関する受診・相談センターが設けられていますので、相談することが可能です。

都道府県ごとの連絡先も厚生労働省のホームページにまとめられています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/covid19-kikokusyasessyokusya.html

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電話をすると症状や患者との接触歴などの聞き取りがおこなわれ、感染の疑いがあり受診が必要と判断された場合は、その後の受診や検査など適切な案内を受けることができます。
新型コロナウイルスは重症化する恐れがあるため、気になる場合はためらわず早めに行動することが大切です。

★自宅でできるPCR検査キットもあります。

最近は医療機関や検査センターへ行くことなく、自宅でPCR検査ができるキットも販売されています。「出張で他県へ移動する」「帰省などで高齢の方と会う」「多数の人と関わる用事がある」など無症状でも確認しておきたいという場合など、自宅で手軽におこなえるサービスです。費用は数千円~と、医療機関での自費検査より安価なものもあり、陰性証明書の発行が可能な場合もあります。

手順や検査方法は各機関のキットにより異なりますが、多くはネットで申込をおこない、届いた検査キットを用いて唾液を採取して返送すると、申込から3日ほどで結果がわかるという仕組みです。

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(基本的な流れ)
ネットで申込

検査キットが届く

自宅で唾液を採取

検査キットを返送

結果を確認(メールで通知、WEBで確認等)

自宅でできる検査は外へ出向くことが不要なため便利な手段ですが、検査キットの発送や返送に時間がかかるため結果が確認できるまで数日の期間を要してしまいます。最近ではバイク便でのデリバリーサービスがある機関もあり、外出予定が早まったなど結果を少しでも早く知りたいという場合は、結果の確認がより早くおこなえる機関を選ぶことをおすすめします。

★ワクチン接種後も気を緩めずに。

<ブレークスルー感染>ワクチンを接種したからといって感染しないという保証はありません。ワクチン接種後に感染してしまうことをブレークスルー感染といい、免疫が獲得できる度合いに個人差があることや時間が経つにつれてワクチンの効果が低下してくることが原因とされています。
感染経路や対策を十分に理解し、今後も「マスクの着用」「手洗いや消毒」「ソーシャルディスタンス」「室内換気」などをしっかりと実践しながら感染拡大を防いでいきましょう。

<感染対策は内側からも>人の免疫力は個人の生活習慣と大きく関わっているため、食事による栄養摂取、生活活動や運動による体力強化、適度な睡眠によってコンディションを整えながら普段の生活の中で感染しないための体づくりに励んでおくことも大切です。
在宅時間が長くなることによる間食の増加や運動不足、生活リズムや睡眠時間の乱れなどウイルス感染以外での健康問題も様々に生じています。
外からの感染対策だけでなく、体の内側から予防する意識も高めておきましょう。

手軽にできる健康管理としては、体重、血圧、体温、歩数などをモニタリングし日々のコンディションを数値で見える化すると、自身の健康状態を把握できたり健康へのモチベーションアップにつながったりするのでおすすめです。また、食事は欠食なく3食摂り主食・主菜・副菜がそろった献立を心がけること、菓子類やアルコールは過度に摂らないといった栄養面でのコンディション管理も大切です。

備えあれば憂いなし。
いつか収束が迎えられるよう、私たち1人1人ができる対応を十分に理解しながら日々の行動につなげていきましょう。

執筆者 山田志織

プロフィール

執筆者 山田志織

管理栄養士・公認スポーツ栄養士
食品メーカーやヘルスケア企業、スポーツ現場での勤務を経て独立。現在は生活習慣病の予防・改善プログラムに従事すると共に、学生アスリートやスポーツ愛好家への栄養サポートをおこなうなど食やスポーツの分野で活動中。