看護師が担当できる医療行為は時代とともに変化しています。
静脈注射や動脈血採血など、以前は医師しかできなかった処置も今は看護師が担えるようになりました。
本記事では、注射や採血で看護師または准看護師が行う範囲や注射の手順をご紹介します。
看護師が担当できる注射・採血
看護師は、皮下注射・皮内注射・筋肉注射・静脈注射(点滴を含む)及び採血が可能です。
基本的には、切開など直接的に大きな侵襲を与えない方法であれば、医師の指示で注射や採血が行えます。
静脈注射
静脈注射は、血管内に針を差し込んで薬剤を注入する医療行為です。
医師の指示があれば診療補助のひとつとして、看護師のみならず保健師や助産師、准看護師も行えます。
動脈血採血
動脈血採血は、橈骨動脈(とうこつどうみゃく)や大腿動脈(だいたいどうみゃく)などから血液を採取するものです。
以前は医師にしか行えない行為でしたが、2015年から特定行為のひとつとして看護師も実施できるようになりました。
また、具体的な手順書があれば、経皮的に動脈からの採血及び橈骨動脈ラインの確保(留置針)もできます。
ただし、看護師や助産師、保健師であっても、動脈血採血に関する特定行為研修を指定機関で受けることが義務付けられています。
また、准看護師が担当できる医療行為は看護師とほとんど変わりませんが、動脈血採血などの特定行為は行えません。
静脈注射と動脈血採血の手順
ここからは、静脈注射と動脈血採血の手順についてご紹介します。
看護師がどのように注射を行っているのかイメージができると、注射や採血への不安感が和らぐでしょう。
静脈注射の手順

静脈注射では、基本的に内側の正中にある静脈を選択します。穿刺部より5~10cm上に駆血帯を巻いて静脈が浮き出るのを待ちます。
患者さんが親指を中にして手を握ることで血管が浮き上がりやすくなります。血管が確認できたら針を刺す部位をアルコール綿で拭きます。
針穴が見えるようにして注射器を手前に倒して持ち、皮膚に針を刺してゆっくりと挿入します。静脈にたどり着くと抵抗が軽くなるため、そこからは血管に沿うよう針を2~3mm進めます。注射器を固定し、内筒を引いて血液が逆流すれば成功です。
駆血帯を外したあとは、握っている手を楽にしても問題ないです。
針先を動かさないように注射器をしっかりと固定し、内筒をゆっくりと押して薬液を注入していきます。薬液が無くなったら針を抜いて素早くアルコール綿で注射部をおさえます。その後、絆創膏に張り替えて2~3分圧迫止血します。
静脈注射は、浮き上がった血管を触ってみて弾力のある血管を選ぶことがポイントなのですが、もし看護師が血管選びで困っていたら、採血の際によく針を刺されているところを伝えてみるのもよいでしょう。
動脈血採血の手順
特定行為研修を受けた看護師による動脈血採血は、手順書に記載されている項目を基に行います。動脈血採血が行える条件や穿刺部位、穿刺側なども手順書に記載されています。
つまり、手順書に記載されていない場合には、医師の指示を確認しなければ実施することはできません。
動脈血採血は痛みも伴う処置となりますので、不安な方は状況を説明されながら処置を行ってもらうことで、不安感を軽減できます。
また、動脈血採血後は5分程度の圧迫止血を行いますので、出血傾向がある場合は、事前に伝えてやや長めの圧迫を行ってもらうようにしましょう。
その他の看護師が担当できる注射
看護師は臨床で行うほとんどの注射及び採血が可能です。
「末梢留置型中心静脈用カテーテルの挿入」「抗がん剤など血管外漏出に対するステロイド注射」「IVH(中心静脈カテーテル)の抜去」なども特定行為の範囲内です。
以下は、看護師が施術する機会の多い注射3つとなります。
インスリン注射
インスリン注射は針が短く、病状や薬の作用を理解していれば患者さん自身でも行えます。
医師が症状や血糖値に合わせたインスリン投与量の調整を具体的に指示していれば、それを基に看護師がインスリン量を調整して実施できます。
インフルエンザ予防接種
予防接種は原則として医師が実施するものですが、医師の指示があれば看護師も行えます。インフルエンザワクチンは皮下注射でリスクが低く、看護師が行える医療行為の範囲内です。ただし、予防接種可否の判断などは、看護師ではなく医師が行わなければなりません。
ボトックス注射
ボトックスはボツリヌス菌の毒素を無害化した薬剤です。筋肉の動きを麻痺させる作用があり、過度な筋緊張やけいれんなどの症状を改善させます。
脳神経内科や眼科、美容クリニックなどでよく用いられており、治療として行われているボトックス注射は医師が行います。
しわとりなど美容目的の場合は明らかな違法行為とはされていませんが、多くの美容クリニックでは注射薬の準備や施術介助をメインに行っているでしょう。
注射の多くは看護師でも対応できる
看護師は麻酔薬の投与やIVHの挿入などはできませんが、臨床のほとんどの注射施術が可能です。
特定の研修を受けた看護師であれば、Aラインの確保や末梢留置型中心静脈注射用カテーテルの挿入もできます。
ただし、施設によっては、医師や看護師の配置人数などにより担当する処置が割り振られていることがあります。違法にならない処置であっても、施設や部署の方針によっては看護師が対応しないこともあります。
注射について不安があるときは、事前に気になることを聞いておきましょう。
参考文献
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- 1次ソース:厚生労働省「看護師等による静脈注射の実施について(◆平成14年09月30日医政発第930002号)」
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- 1次ソース:厚生労働省「特定行為とは」
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- 1次ソース:厚生労働省「これからの医療を支える看護師の特定行為研修制度ご案内」