「風に吹かれただけでも激痛が走る」ことが名前の由来とされている痛風。
令和4年の国民生活基礎調査では、痛風で通院している方の総数は約13万6,000人といわれており、誰でもかかる可能性があります。
治療薬も開発されており、適切に治療すれば健康な生活を送ることができますが、放置すると気づいたら激しい痛みが起きていた、ということも少なくありません。
本記事では、痛風の特徴や食事のポイントについてご紹介します。
痛風とは
痛風は、尿酸が蓄積し結晶化することで主に関節に炎症を起こし、腫れや激しい痛みを引き起こす病気です。
痛風は女性よりも男性に多くみられる傾向にあります。
これは、女性ホルモンが尿酸の排泄を促す働きがあるためであり、閉経後には女性もかかりやすくなるといわれています。
症状が出る部位
尿酸が蓄積するのは、ほとんどが足の親指の付け根ですが、足首、足の甲、かかと、膝、手首、肘など、他の部位でも発生することがあります。
痛風が進行すると、痛風結節と呼ばれるこぶ状の隆起がみられることがあり、放置すると関節や骨の変形につながる可能性があるため注意が必要です。
前兆、初期症状
痛風発作が起きる前には、血液中の尿酸値が高い状態が続きます。
この状態を放置すると、発作的に関節に炎症が起こり、腫れと痛みが生じます。
発作は夜中から明け方に起こることが多く、症状として他に、発熱や心拍数の上昇、全身倦怠感、悪寒などを伴うこともあります。
発作が起きるのが初めての場合は、通常1つの関節で炎症が起こり、数日から1週間ほどで治まります。
痛風の原因
尿酸値が高い状態を「高尿酸血症」といい、腫れや痛みなどの発作が現れた場合を「痛風」と呼んでいます。
高尿酸血症は性別・年齢を問わず血清尿酸値7mg/dlを超えるものと定義されています。
女性の場合は、血清尿酸値が7mg/dlより少なくても、尿酸値が上がることで生活習慣病のリスクが高くなるといわれているため、注意が必要です。
痛風の原因となるのは「尿酸」です。
尿酸は、私たちの身体で常に行われている新陳代謝の過程で、プリン体という物質が分解されてできます。
通常は尿と共に排泄されていますが、体質や肥満、食事、アルコールなどによって「尿酸が過剰につくられる」または「尿酸の排泄が悪くなる」ために体内に増えすぎてしまうことがあります。
この尿酸が増えすぎた状態が長く続き、尿に溶けきれず結晶化して関節に痛みを生じさせます。
痛風と尿酸値の関係
痛風は尿酸値が高い状態が続いたことが原因で起こりますが、高尿酸血症の方がすべて痛風になるとは限りません。
高尿酸血症で通院している方の数は、痛風で通院している方の約10倍ともいわれており、尿酸値が高い「高尿酸血症」の状態だけでは無症状です。
尿酸値が高いことで、痛風だけでなく尿路結石や腎障害の原因にもなることが知られています。
コーヒーとの関係
海外の研究で「コーヒーを飲む習慣」がある人の方が痛風の発生リスクが下がるということが報告されています。
この研究の後、日本でもコーヒーと痛風についての研究がなされ、「コーヒーを飲む習慣がある人の方が痛風の発症リスクが低いが、血清尿酸値の変動とは無関係である」ということが報告されました。
なぜコーヒーが痛風を下げるのか、メカニズムはまだわかっていません。
一方で、コーヒーはカフェインを含んでいるため、過剰摂取には注意が必要です。
痛風対策に適した食事
痛風は糖尿病や高血圧、脂質異常症など、他の生活習慣病との関連も深く、食生活が大きく関わっています。
気をつけたいポイント
痛風を予防するための食事は、尿酸の元となるプリン体を多く含む食品を過剰に摂取しないことと、肥満にならないようにエネルギーや脂肪の摂取量に注意することが大切です。
肥満傾向の人は、食べ過ぎに注意し、標準体重に近づけるように減量しましょう。
急激な減量は尿酸値を上げてしまう可能性があるため、ゆっくりと長期的に継続して減量することが推奨されています。
プリン体の多い食べ物
「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン」ではプリン体の1日摂取量は400mgを目安に制限することが推奨されています。
プリン体を多く含む食品は、レバー類、白子、アンコウの肝、魚の干物(マイワシ・イワシ・サンマ)、エビ、カツオなどです。
プリン体は大部分が体内でつくられ、食べ物から体内に入る量はそれほど多くありません。
そのため、必要以上に制限する必要はありませんが、プリン体を多く含む食品を多く摂っている場合は注意が必要です。
おすすめの食事メニュー
痛風の予防には、プリン体を減らすことだけを意識するのではなく、全体の食事バランスを整えることが大切です。
バランスの良い食事とは、和食の定食のような形で、主食(ご飯・パン・麺など)、主菜(肉・魚・卵・大豆製品など)、副菜(野菜・キノコ・芋・海藻など)がそろっていると必要な栄養をまんべんなく摂りやすいといわれています。
特に、副菜となる野菜類は不足しないように意識していきましょう。
飲み物で工夫できること
血液中の尿酸濃度が濃くなると痛風発作が起きやすくなるため、水分を積極的に摂取することが大切です。
水やお茶で1日2ℓ程度を目標に摂取しましょう。
乳製品は尿酸値を下げる働きがあるといわれており、牛乳を1日1杯ほど摂るのもおすすめです。
アルコールは、プリン体の多いビールのみを控える方もいますが、アルコール自体に尿酸を上げる働きがあるため、種類に関係なく控えるのが良いでしょう。
痛風の治し方・薬物療法
痛風の治療には薬物療法が欠かせません。
発作時には炎症や痛みを抑えるために、一時的に非ステロイド性消炎鎮痛薬やステロイドが使われます。
長期的には尿酸値が高くならないように、尿酸がつくられにくくする薬や、尿酸の排泄を促す薬が症状に合わせて選択され、定期的に服用します。
薬を飲んでいる間は、尿酸値が上がらないように抑えられていますが、やめてしまうと尿酸値は上がってきてしまうため自己判断により途中でやめないことが大切です。
日頃から痛風にならないような生活をしましょう
痛風は、高尿酸血症に早めに気が付き、適切な治療を開始できれば発作を起こさずに普通の生活を送れる病気です。
健康診断などで高尿酸血症が指摘された場合は、放置せずに専門医にかかり、治療するようにしましょう。
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参考文献
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- 厚生労働省 2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況 統計表
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- 厚生労働省 e-ヘルスネット 高尿酸血症
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- 農林水産省 栄養バランスに配慮した食生活には どんないいことがあるの?
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- 日本痛風・核酸代謝学会 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン