希少性疾患の1つ多発性硬化症の特徴や原因。症状にはどのように向き合えばよい?

多発性硬化症

治療が難しい難病に指定されている「多発性硬化症」は、解明されていないことも多い病気です。
ご親族の方を含めて、多発性硬化症への向き合い方などの参考にしてみてください。

本記事では、多発性硬化症の特徴や症状、治療法などをご紹介します。

多発性硬化症とは

多発性硬化症とは、脳や脊髄などの神経線維を守っている髄鞘(ずいしょう)に断続的に炎症が起こり、硬くなった病変があちこちに多発する病気です。
はっきりとした原因はまだ不明ですが、自己免疫機能の異常によって炎症が引き起こされていることは分かっています。
根本的な治療方法が確立されていないため、厚生労働省が特定疾患のひとつに指定しており、医療費などが免除されています。

特徴

欧米では一般的な難病ですが、日本では発症者が少なく、風邪や紫外線、ストレスなどによって誘発されたり悪化することがあります。そのため、遺伝性や環境因子との関連も考えられています。
多発性硬化症になりやすい人の特徴としては成人の女性で、比較的若い世代で発症する傾向が強いです。

多発性硬化症を発症しても命に関わる重大な症状を起こすことは少なく、身体機能に大きな障害がなければ今まで通りの生活ができ仕事も続けられます。ただし、ゆっくりと進行していく慢性的な病気のため長期間にわたって付き合っていくことになります。

多発性硬化症の症状

多発性硬化症では、大脳や視神経、脊髄、小脳など炎症が起こる部位によって障害される神経も異なり、現れる症状もさまざまです。
脳や神経系に関連するほかの病気と見分けるのがとても難しい病気ですが、多発性硬化症の場合にはいずれの症状にも「ウートフ徴候」が見られます。ウートフ徴候があると、入浴や運動などで体温が上昇すると神経症状が一時的に悪化し、体温の低下とともに症状もおさまります。

初期症状

多発性硬化症の初期には、視力の低下や視野の異常、手足の感覚異常や筋力低下などが多く見られます。神経が障害された場所の感覚が鈍くなったり、手足がしびれたり、排尿できなくなったりなど初期症状も多種多様で、再発しても同じ症状とは限りません。

症状が現れたからといって怖がることはなく、治療をしていれば改善することがほとんどで、何もしなくても自然とよくなることもあります。

後期症状

多発性硬化症が進行していくと、四肢麻痺や歩行障害、認知機能障害なども現れるようになります。はじめは軽い症状でも、何度も再発を繰り返すうちに後遺症が残って日常生活に支障をきたすようになり、車いす生活や寝たきりとなる場合もあります。このような症状の進行を防ぐには、再発を防止することがとても大切です。

日常生活の中でも再発の要因となり得る行動は避け、睡眠の質向上や風邪予防、紫外線対策、ストレス発散などの対策をするようにしましょう。

多発性硬化症の検査方法

多発性硬化症と似た症状が見られる脊髄腫瘍や脳血管障害、膠原病、神経ベーチェットなどほかの病気との見極めが重要です。そのため、多発性硬化症の検査方法には、頭部や脊髄のMRI検査、髄液検査、視覚誘発電位などが行われます。
中枢神経系に断続的に病変が多発していることを検査で確認しながら、診察で進行状況を長期的にチェックすることで、症状が似ている別の病気ではないことを確かめていきます。

確定診断には神経内科の専門医による診察はもちろん眼科的な診察も必要です。近年では精度の高い診断基準ができ、今までより早く診断されることが増えています。

多発性硬化症の治療法

多発性硬化症に対する効果的な治療法はまだ確立していませんが、急性期の炎症を抑える治療と症状が落ち着いている時期の再発・進行を防止する治療があります。
ほかにも、症状が長期化している慢性期には、日常生活の質を少しでも維持するために症状に合わせた対症療法やリハビリテーションも必要です。

ステロイドパルス療法

急性期には大量のステロイドを点滴で投与する方法があります。炎症をできるだけ早く抑えることで、早期回復に向けたサポートをします。

治療薬

多発性硬化症の再発用薬は注射もしくは内服によって投与しますが、投与間隔や副作用、生活スタイルなどに応じて選択します。

  • インターフェロンβ注射薬(2種類)
  • フィンゴリモド
  • ナタリズマブ
  • グラチラマー酢酸塩
  • フマル酸ジメチル
  • シポニモド
  • オファツムマブ

日本で用いられているこれらの再発予防薬は国から認可されていますが、絶対に再発しないわけではありません。

多発性硬化症との向き合い方を考えましょう

多発性硬化症は症状の現れ方がひとりひとり異なるため、診断されるまでに時間がかかることがあります。ゆっくりと進行していくため、不安な方は早めの受診を検討しましょう。
また、診察先は専門医のいる神経内科を受診しましょう。断続的に現れる症状についてメモをしておくと、スムーズに伝えることができるでしょう。

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参考文献
  • 厚生労働省「13 多発性硬化症/視神経脊髄炎」
  • 難病情報センター「多発性硬化症/視神経脊髄炎(指定難病13 (令和6年4月1日 概要・診断基準等 厚生労働省作成)」