ADHD(注意欠陥・多動性障害)とは?HSPやASDとの違いや治療法を解説

ADHD

注意力が続かない、落ち着きがないなどの症状があるADHD(注意欠陥・多動性障害)は近年広く知られるようになりましたが、まだまだ周囲の理解が得られにくいこともあり、日常生活で困難な場面も少なくありません。

本記事ではADHDの特徴、似た症状で混同されやすいHSPやASDとの違い、治療法などについてご紹介します。

ADHD(注意欠陥・多動性障害)とは

ADHDは「注意欠陥・多動性障害」とも呼ばれ、発達障害の一つです。

発達の段階から見て著しく、集中力がない、じっとしていられない、行動を抑えることができないなどの症状が12歳以前から見られ、学校や家庭、職場などの複数の場面で支障をきたし日常生活が困難な状態を指します。
じっとしていられない、忘れ物が多い、コミュニケーションがとりにくいなどの症状から、育て方やしつけの問題と間違えられやすいですが、脳機能の障害であり先天的な病気であることを理解することが大切です。

ADHDの方のIQは標準より低いと言われることもありますが自分の興味のあること以外に集中力を発揮するのが難しいという特徴がADHDの方にはあるため、IQテスト自体に集中できていない可能性もあります。

HSPとの違い

ADHDと似た性質を持つものに、HSPがあります。
HSP(Highly Sensitive Person)とは人一倍敏感な人のことで、病気や障害とは異なり性格のことを指し、生まれつきの気質や性質だといわれています。
深く考えて行動するため行動が遅い、刺激に対して敏感などの性質があり、日常生活が困難な状況からADHDと混同されることもあるようです。

ASD(自閉スペクトラム症・アスペルガー症候群)との違い

ASD(自閉スペクトラム症・アスペルガー症候群)はADHDと同じ発達障害の一つで、生まれつき持っている脳の性質や働き方の障害によって起こるものです。
特性に違いがあり、ADHDは一般的に注意力がないとされる一方で、ASDは特定のことにこだわることから集中力が高いとされています。
また、ADHDでは人とのコミュニケーションに問題が少ないのに対して、ASDはコミュニケーションが苦手な方が多い傾向といえます。

ADHDとASDは、表への現れ方が似ていることが多々あります。
例えば、「よくミスをする」という同様のことが起こる場合でも、ADHDの場合は注意力が続かないことが原因であり、ASDの場合は特定のことに強いこだわりを持ちすぎてしまうことが原因で起こることもあります。
このような場合は対処法が異なるため、特性に合わせた対応が必要になります。
また、発達障害は併発することがあるため、ADHDとASDの両方の特性を持っている場合もあります。

症状レベル別・ADHDの症状

ADHDの症状は大きく分けて「注意欠如・多動性・衝動性」の3つに分けられます。
それぞれの症状の程度によって「軽症・中等症・重症」に分けられますが、あくまでも目安です。
当てはまるものが少なくても、日常生活に影響が多い場合は「重症」と判断されることもあります。

軽症

注意力が散漫になりミスをしやすい、座ってじっとしていることが難しく、手足が動いてしまう、衝動的な行動がまれにある、などの症状がみられます。
日常生活に多少の支障がある場合でも、「個性」として判断されているケースも少なくありません。

中等症

長時間集中してする作業が難しくタスクが完了できない、気が散りやすく落ち着いている時間が短い、衝動的な行動が頻繁に見られる、などの症状がみられます。
大きな損失に繋がる言動・行動をしてしまう可能性もあるため、何らかの対処が必要です。

重症

短時間しか注意が続かずほとんどのことが完了できない、計画して行動することができない、常に動いたり手足を動かしたりしていないと気が済まない、制御することが困難な衝動が多く他人に危険をおよぼす可能性がある、などの症状がみられます。
1人で日常生活を送ることは困難となり、多くの場合は他人の支援を受けることになります。

「大人のADHD」と「子どものADHD」の特徴

ADHDの特性である「注意欠如・多動性・衝動性」は、成長につれて変わっていくことがあるため、大人と子どものADHDでは表への現れ方が異なります。

大人のADHD・特徴

ADHDの特性は子どもの頃に現れ、その後も続くことが多いですが、大人になっていく過程で「多動性・衝動性」の症状が目立たなくなることも少なくありません。
一方で、職場でミスを繰り返す、計画を立てて行動することが難しいなど、「注意欠如」の特性は大人になっても変わらないことが多く、日常生活で支障をきたすこともあります。
また、ADHDの特性が周囲に理解されず、鬱病などの精神疾患を引き起こすこともあります。

子どものADHD・特徴

2歳頃から症状が見えはじめ、多動性や衝動性を伴うものが多い傾向といえます。
「じっとしていられない」「我慢が苦手」などの特性は、ADHDではない幼児期の子どもにもよく見られるため、区別が難しいことも多いです。
そのため子どもの頃の状況を踏まえて、大人になってからADHDと診断されることもあります。

ADHDの検査方法

ADHDを単独で診断できるような医学的検査はなく、医師の診察で観察された行動の特徴に基づいて診断されます。

医学検査

CTやMRIなどの検査によって、ADHDの原因となる脳の異常を明らかにすることはできません。
しかし、他の精神疾患による症状ではないことを確認するため、必要に応じて血液検査、尿検査などを含めた医学検査を行う場合があります。

心理検査

心理検査には、発達検査・知能検査・人格検査などがあります。
大人のADHDのスクリーニングには、ASRS(Adult ADHD Self-Report Scale)と呼ばれるアンケート形式の質問票が広く用いられています。

ADHDの治療方法

ADHDは本人が意識して症状を改善しようと試みても難しいことが多く、脳機能の問題であるために医学的な治療が必要です。]

処方薬

ADHDに対して保険適応のある薬は以下の通りです。

  • メチルフェニデート(コンサータ®)
  • アトモキセチン(ストラテラ®)
  • グアンファシン(インチュニブ®)
  • リスデキサンフェタミンメシル酸塩(ビバンセ®)

神経伝達物質であるドパミンやノルアドレナリンの分泌、作用に影響して、神経伝達物質の量を調整することで、ADHDの症状を軽減します。

認知行動療法、カウンセリング

ADHDの方に対する厳しい叱責は、逆効果だといわれています。
好ましい行動をした場合には報酬を与え、よくない行動をした場合には報酬を与えないことで、好ましい行動を増やしていけるようにすることが推奨されています。
本人の話をよく聞き、少しでも集中しやすい物理的な環境をつくることや、時間を細かく区切るなど特性にあわせた方法も有効です。

ADHDとの付き合い方

日常生活が困難である印象が強いADHDですが、自分に合った分野では集中力を発揮したり、他の人とは異なる視点で才能を発揮したりすることも知られています。
ADHDの方が才能を発揮するには、周りの理解やサポートが重要となります。
どのようなことに困っているか、対応の仕方などをしっかりと伝えて、環境を整えることが大切です。

ADHDの特性を理解して上手に付き合っていきましょう

ADHDは発達障害の一つであり、本人と他人の認識に違いが出る傾向があります。
上手に付き合っていくことは可能な発達障害なので、特性の理解と周りのサポートがカギともいえるでしょう。

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参考文献
  • 厚生労働省 e-ヘルスネット ADHD(注意欠如・多動症)の診断と治療