多汗症の治療法は部位ごとの症状レベルで異なる!ワキガとの違いは!?

多汗症

多汗症は、汗の量が過剰になる病気です。
大量の汗によって、普段の生活の妨げになっていても、医療機関で治療を受ける人が少ない傾向にあります。

本記事では、多汗症が起こりやすい部位や症状、治療法について解説します。

多汗症とは

多汗症は、エクリン汗腺からの汗が大量に作られてしまい、日常生活に支障を及ぼす病気です。
全身の汗が増える全身性多汗症と、体の一部分のみ汗が増える局所性多汗症に分けられます。
全身性多汗症と局所性多汗症のいずれも、原因がはっきりしない原発性と、何らかの疾患によって引き起こされる続発性があります。

続発性の多汗症を引き起こす疾患は以下のとおりです。

  • 全身性:感染症、甲状腺機能亢進症、パーキンソン病など
  • 局所性:神経障害、腫瘍、脳梗塞など

ワキガとの違い

汗を作る汗腺は、エクリン汗腺とアポクリン汗腺の2種類があります。

多汗症は、エクリン汗腺の働きが過剰になることで発症しますが、ワキガはアポクリン汗腺からの汗の分泌量が増えることで起こります。
アポクリン汗腺から出る汗には、タンパク質や脂肪酸が多く含まれており、それらが皮膚表面の細菌によって分解されることで、ワキガ独特の臭いが発生します。

部位ごとに起こる多汗症の特徴・原因

局所性多汗症は、発症した部位によって特徴や原因が異なります。
多汗症が発生しやすい部位について、確認しておきましょう。

顔面・頭部

顔面・頭部の多汗症は、成人男性に多いです。
熱いものを食べたり飲んだりしたときや、精神的に緊張したときに起こり、耳の上から側頭部、後頭部、額から流れ落ちるように大量の汗が出ます。
また、顔面・頭部の多汗症は、トウガラシの辛味成分による「味覚性発汗」が起こる場所であることが特徴です。

脇の多汗症は腋窩(えきか)多汗症と呼ばれ、思春期から発症するケースが多くみられます。
精神的なストレスや温熱刺激が腋窩多汗症の引き金となります。
左右両方の脇から大量の汗が出て、下着や衣服が濡れてしまうことで見た目の問題となり、日常生活に支障が出ることが多いです。
腋窩多汗症は、手足の多汗症をともなうことがあります。

手足

手のひらや足裏の多汗症は、掌蹠(しょうせき)多汗症と呼ばれ、小学校へ就学するころから発症する可能性があります。
精神的な緊張などが発症の引き金です。

掌蹠多汗症では、手足が常に汗で湿って冷たくなっており、皮膚が紫色を帯びたようになることがあります。
重症になると、ぽたぽた落ちるほどの汗が出ます。
皮膚が大量の汗で湿っていることで、あせもになったり感染症を起こしたりするケースが多いです。

多汗症の診断方法

局所性多汗症の診断基準は以下のとおりです。

  • 発症した年齢が25歳以下である
  • 左右対称性に発汗がみられる
  • 睡眠中は発汗が止まっている
  • 1週間に1回以上、多汗症状が起こる
  • 家族歴がある
  • 多汗によって日常生活に支障をきたしている

明らかな原因がないまま、局所的な大量発汗が6か月以上続き、以上の6項目のうち2項目以上あてはまる場合に多汗症と診断されます。

多汗症で行われる検査

重症度を判定するために、ヨード紙法や換気カプセル法などの検査を行うことがあります。
ヨード紙法は、ヨウ素を含んだ特殊な紙を用いる方法です。
発汗している部分が触れると黒く変色するため、発汗量が多いほど変色した面積が広く、視覚的な判定ができます。
換気カプセル法は、皮膚をカプセルで覆い、カプセル内の汗の量を測定する方法です。
重症度だけではなく、左右差や部位による差があるかどうかも調べられます。

日常生活で可能な予防・改善法

発汗症状が悪化しないように、日常生活で行える対策について、食生活・睡眠・入浴の3点から解説します。

食生活

辛いもの・酸っぱいもの・熱いものは、交感神経を刺激して発汗しやすくなります。
多汗症と診断された人は、刺激の強い飲食物の摂りすぎに注意しましょう。
また、カフェインも交感神経を刺激する作用があるため、コーヒー・緑茶・チョコレートなども控えるようにすると良いです。

睡眠

睡眠不足になると、自律神経の働きが乱れて汗をかきやすくなります。
少なくとも1日6時間以上の睡眠時間をとることをおすすめします。
また、睡眠の質に気を配ることも大切です。
就寝前にスマートフォンの操作を控えたり、日中に適度な運動をしたりするなど、深い睡眠を得る工夫をしましょう。

入浴

38~40度のぬるめの湯温で入浴すると、副交感神経が優位になりリラックス状態になるため、汗腺への刺激が少なくなります。
42度以上の高い湯温では交感神経を刺激してしまい、かえって発汗しやすくなるため注意が必要です。

多汗症の治療法

局所性多汗症の治療は、外用薬・イオントフォレーシス・内服薬・注射・手術などがあり、発症した部位や症状によって選択できる治療法が異なります。
それぞれの治療について、種類と適用できる部位などを解説します。

外用薬による治療

外用薬は、抗コリン外用薬と塩化アルミニウム製剤があります。
抗コリン外用薬は、保険適用されており、原発性の腋窩多汗症のみ適応されています。
塩化アルミニウム製剤は、手足・顔面・頭部の多汗症治療に使用されますが、保険適用外の薬剤です。

イオントフォレーシスによる治療

イオントフォレーシスは、手のひらや足裏を水道水の入った容器に入れて、そこへ電流を流す方法です。
1回の治療時間は20~30分、8~12回くり返すと発汗量が少なくなります。
保険適用の治療法で、掌蹠多汗症に適応されています。

内服薬による治療

多汗症で使用される内服薬は抗コリン薬です。
抗コリン薬には、エクリン汗腺を刺激する神経伝達物質の働きを妨げる作用があります。
外用薬や注射などの治療で効果がみられなかった場合に抗コリン内服薬で治療を行います。

注射や手術による治療

外用薬で効果がみられなかった場合、ボツリヌス毒素製剤の注射で治療を行います。
腋窩多汗症は保険適用されますが、それ以外の部位は保険適用外です。
手術は、重症で外用薬・内服薬・注射による治療効果が得られなかったケースで行われます。
行われる手術は交感神経遮断術で、交感神経を切断したり焼いたりして破壊する方法です。
治療効果は高いですが、代償性発汗の副作用が起こりやすくなります。

多汗症で選択する治療法は医師と相談しましょう

多汗症は、発症する部位がさまざまあり、症状の程度によっても選択できる治療方法が異なります。
保険適用と保険適用外の治療法があるため、どちらの方が症状に合っているのか治療を継続しやすいのかなど、主治医と相談することが大切です。

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参考文献
  • 公益財団法人日本皮膚科学会「原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版」
  • 公益財団法人日本皮膚科学会「皮膚科Q&A 汗の病気-多汗症と無汗症-」