寒い冬が終わり、春のポカポカ陽気が満喫できる季節になりましたね。
コロナ禍も落ち着きがみられ、マスクや行動の規制は緩和されつつありますが、気温や生活が変化する春先は心身に不調を抱えやすい時期です。
新たな年度を最高のコンディションで過ごしていけるように、体はもちろん心の健康にも目を向けながら生活習慣を整えましょう。
★なぜ春は不調を招くのか
<気候による影響>
季節の変わり目は気候が安定せず、暖かい日が続くと思ったら急に寒さが逆戻りしたり…。
昼と夜の気温の差も大きいため、服装選びに悩むところです。
気候の変化は心身にストレスをもたらします。体温調節がうまくいかず風邪をひいてしまったり、急な寒暖差は気持ちの負担につながったりもします。
<社会的な変化も多い季節>
新生活が始まる春は、異動や引っ越しによるライフスタイルの変化や、人付き合いの変化も多くなります。
新しい物事が始まるタイミングはポジティブな期待が大きいですが、その一方で緊張や不安も感じやすくなります。気持ちの乱れは集中力の低下につながり、仕事や勉強に支障をきたすことにもなりかねません。
<春に起こりやすい症状>
環境の変化による不調は、『天気痛』と呼ばれる「頭痛」「めまい」「関節痛」のほか、「肉体疲労」「胃腸症状」などさまざまです。
また、「不眠」「イライラ感」「気分の落ち込み」といった心の症状も現れやすくなります。
穏やかで過ごしやすいイメージの春ですが、環境の変化は体調不良だけでなくメンタル面にも不調をきたしてしまうことに注意しつつ、今後の生活に向けた予防策を考えていきましょう。
★春のメンタル不調、その正体は「自律神経の乱れ」
慣れない環境から生じるストレスは、自律神経のバランスを乱す原因になります。
<自律神経とは>
自律神経は、生命維持のために必要な体の機能(呼吸、消化、血液循環、体温調節など)を司る神経です。私たちの意思とは関係なく24時間働き続けながら、体を良好な状態に保つ役割を担っています。
自律神経には交感神経と副交感神経があります。
これらはオンとオフのスイッチのような、相反する働きをしています。
交感神経(オン):緊張・興奮状態の時に働く。体を活発に動かす。
副交感神経(オフ):リラックス状態の時に働く。体を休める。
通常、この2つがうまく切り替わりながら各々の機能をコントロールしていますが、心身にストレスを感じることでバランスが乱れ、交感神経の方が優位な状態になります。
緊張することで呼吸が荒くなったり心拍数が上がったりするのは、まさにこの交感神経の働きによる影響です。一時的なものであれば回復も早いですが、長期にわたってストレスにさらされていると、もう1つの副交感神経の働きが抑制された状態が続くことになります。その結果、体が休まらずに疲労が残る不調の他、常に気持ちが落ち着かないといった慢性的なメンタル不調にもつながってしまうわけです。
<バランスを乱さないためには>
自律神経のバランスは生活習慣で整えることができ、環境の変化によるストレスに負けないためには日々の心がけが大切です。
セルフコントロールとしては、バランスの良い食事、適度な運動、睡眠や入浴による休養、レジャーでのストレス発散やリラクゼーションなど多岐にわたりますが、中でも今回は「食事」に焦点を当てて、快適な毎日を送っていくための方法をご紹介します。
★自律神経を整える食事 ~意識したいポイント~
<規則正しく1日3食>
食事を食べたり食べなかったり、食事時間が一定でなかったりといった不規則な食習慣が続くと、自律神経のバランスが乱れやすくなります。まずは朝昼晩の3回、規則正しく食べることを毎日のルーティーンにしていきましょう。
特に大切に考えたいのが、朝食です。前回のコラム(「体内時計を整えて健やかな毎日を」)にも記載がありますが、朝食には心身のオンとオフを切り替える役割があり、これが自律神経を整える手助けとなります。
<内側から体を温める>
薄着や朝晩の冷え込みは自律神経の体温調節機能に支障をきたすので注意が必要です。服装に気をつけることはもちろん、食事で温かい汁物を飲んだり、下記のような体を温める食材を意識してとりながら、寒暖差による冷えを予防しましょう。
【体を温める食材】
・ショウガ
・にんにく
・ねぎ
・にら
・唐辛子
<腸内環境を整える>
自律神経は腸の働きとも関わりがあり、互いに影響し合う関係にあります。
腸は「第二の脳」と言われるほどメンタル面とのつながりが深く、不安やストレスで便秘や下痢に見舞われたり、腸内環境の悪化から感情のコントロールが不安定になったりもします。
腸の健康維持には、日々の食事で食物繊維や発酵食品をとる習慣が有効とされています。食物繊維は根菜や雑穀、海藻やきのこなどに多く含まれ、スムーズなお通じを促します。納豆やヨーグルトなどの発酵食品は、腸内の善玉菌を増やして腸内環境を良好に導く働きがあります。
<お酒との付き合い方>アルコールは少量であれば気持ちをリラックスさせてくれるプラスな効果がありますが、過度な摂取は自律神経を乱してしまう原因にもなります。交感神経を刺激して心拍数の上昇や興奮状態をひき起こし、習慣化すると日常生活に悪影響を及ぼします。
国から定められている基準では、適度な飲酒量として「1日平均純アルコールで20g程度」とされています。20gとはだいたい「ビール500ml」「チューハイ(7%)350ml」「日本酒1合」「ウィスキーダブル1杯」などに相当します。
お酒は節度ある飲み方を心がけ、上手に付き合っていきましょう。
<おいしく楽しく食べることがストレスの緩和に>食事は食べる内容だけでなく、食べ方によっても心身の健康状態が左右されます。
ゆっくりよく噛んでおいしく味わうことで気持ちに余裕が生まれ、自律神経が整いやすくなります。
カラフルなメニューで彩りを添えたり、食事で季節を楽しんだりするのもいいでしょう。旬の食材は栄養価が高く、春キャベツや菜の花、たけのこには腸内環境を整えてくれる食物繊維が豊富に含まれています。
自律神経のバランスが整っていれば、体は必要に応じて活発な状態と穏やかな状態の切り替えをスムーズにおこなうことができ、心の状態も良好に保つことができます。
生活習慣を無理なく整えながら、環境の変化によるストレスを乗り切っていきましょう。
参考文献
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- 厚生労働省「e-ヘルスネット」
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- 日本医師会「健康ぷらざ」