ADHD(注意欠如・多動性障害)と診断され、医師から薬の服用を勧められた方や、ご家族が治療を検討している方の中には、「薬にはどんな効果があるのだろう」「副作用が心配」といった不安や疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
ADHDの治療において、薬は症状をコントロールし、日常生活の困難を軽減するための有効な選択肢の一つです。
しかし、納得して治療を進めるためには、薬の効果や副作用について正しく理解しておくことが欠かせません。
この記事では、ADHD治療薬に期待される効果、現在日本で処方されている主な4種類の薬の特徴と違い、そして副作用や服用時の注意点について、分かりやすく解説します。

ADHDの主な症状と薬物治療の位置づけ
ADHDの治療を考える上で、まずはその特性と、治療全体における薬の位置づけを理解しましょう。
ADHDの特性は「不注意・多動性・衝動性」
ADHDは、生まれつきの脳機能の発達の偏りによる発達障害の一つです。その主な特性として、「不注意」「多動性」「衝動性」の3つが挙げられます。
- 不注意:集中力が続かない、忘れ物や失くし物が多い、順序立てて物事を進めるのが苦手、ケアレスミスが多い。
- 多動性:じっとしていることが苦手で、そわそわと手足を動かす、貧乏ゆすりをする、一方的に話し続ける。
- 衝動性:順番を待てない、他の人の会話に割り込む、思いついたことをすぐに行動に移してしまう。
これらの特性は子供だけでなく大人にも見られ、仕事や学業、日常生活における様々な困難の原因となることがあります。
治療の基本は心理社会的アプローチと薬物療法
ADHDの治療は、薬物療法だけで完結するものではありません。
治療の土台となるのは、生活しやすいように環境を調整すること(環境調整)や、本人が自身の特性を理解し、具体的な対処法を身につけるためのカウンセリングやトレーニング(心理社会的アプローチ)です。薬物療法は治療法の効果を高め、本人が本来の能力を発揮しやすくするための「補助」として位置づけられています。
薬によって集中しやすい状態を作ることで、落ち着いて物事に取り組めるようになり、環境調整やトレーニングがスムーズに進むといった相乗効果が期待できます。
ADHDの治療薬で期待できる3つの効果

ADHD治療薬を服用することで、具体的にどのような効果が期待できるのでしょうか。主な3つの効果について解説します。
参考:ADHDについて
中核症状(不注意・多動性・衝動性)の改善
ADHD治療薬の最も直接的な効果は、ADHDの特性である「不注意」「多動性」「衝動性」といった中核症状を和らげることです。
薬は、脳内の神経伝達物質(ドパミンやノルアドレナリン)の働きを調整し、症状をコントロールしやすくします。
結果、集中力が高まって仕事や勉強でのミスが減ったり、衝動的な行動が抑えられて落ち着いて話を聞けるようになったりと、具体的な改善が期待できます。
二次障害(うつ病・不安障害など)の予防
ADHDの特性が原因で、周囲から叱責されたり、失敗体験を繰り返したりすることが続くと、自尊心が低下しやすくなります。結果、うつ病や不安障害、素行症といった「二次障害」を引き起こすことがあります。
薬物療法によって中核症状が改善されると、成功体験を積みやすくなり、自信を取り戻すことにつながります。精神的な負担を軽減し、二次障害を予防するという重要な効果も持っているのです。
社会生活や対人関係の質の向上
中核症状が改善されると、社会生活の様々な場面での困難が軽減されます。例えば、職場では業務効率が上がり、学業では授業に集中できるようになります。
また、衝動的な発言が減り、相手の話を落ち着いて聞けるようになると、家族や友人、同僚とのコミュニケーションが円滑になり、より良い対人関係を築きやすくなります。
QOL(生活の質)全体の向上が期待できることも、薬物治療の大きなメリットです。
ADHD治療薬の種類とそれぞれの特徴

現在、日本でADHD治療薬として承認されているのは、「コンサータ」「ビバンセ」「ストラテラ」「インチュニブ」の4種類です。これらは大きく2つのタイプに分けられます。
参考: 一般財団法人日本医薬情報センター「メチルフェニデート塩酸塩徐放錠 添付文書」
中枢神経刺激薬:コンサータとビバンセ
コンサータ(成分名:メチルフェニデート)とビバンセ(成分名:リスデキサンフェタミン)は、脳内のドパミンやノルアドレナリンの量を増やすことで、脳の働きを円滑にしてくれる「中枢神経刺激薬」です。
比較的早く効果が現れるのが特徴で、服用後1〜2時間で効果を感じ始め、コンサータは約12時間、ビバンセは約10〜14時間持続します。主に日中の活動時間に合わせて効果を発揮させたい場合に選択されやすい薬です。
非中枢神経刺激薬:ストラテラとインチュニブ
ストラテラ(成分名:アトモキセチン)とインチュニブ(成分名:グアンファシン)は、「非中枢神経刺激薬」に分類されます。ストラテラはノルアドレナリンの再取り込みを阻害し、インチュニブは神経の情報伝達をスムーズにすることで効果を発揮します。
これらの薬は中枢神経刺激薬に比べて効果の現れ方が緩やかで、効果が安定するまでに数週間(ストラテラは4〜8週間、インチュニブは1〜2週間以上)かかるのが特徴です。
その分、1日を通して安定した効果が持続し、依存のリスクも極めて低いとされています。
各治療薬の効果と副作用の比較
最適な薬は症状の現れ方やライフスタイル、副作用の出方などによって個人差があるため、医師との相談が必ず必要です。以下に簡単な比較表をまとめます。
ADHD治療薬の副作用と対処法
ADHD治療薬は効果が期待できる一方で、副作用が現れる可能性もあります。事前にどのような副作用があるかを知っておくことが大切です。
主な副作用(食欲不振・睡眠障害など)
薬の種類によって副作用は異なりますが、共通して見られやすいものとして以下が挙げられます。
- 消化器系の症状:食欲不振、吐き気、腹痛
- 精神神経系の症状:頭痛、めまい、不眠、眠気
特に、コンサータやビバンセなどの刺激薬では食欲不振や不眠が、インチュニブでは眠気や血圧低下が見られやすい傾向があります。多くの場合、これらの副作用は服用を続けるうちに体が慣れて軽減していきます。
副作用が出た場合の対処法
副作用が辛いと感じたり、日常生活に支障が出たりした場合は、自己判断で薬をやめずに、必ず処方した医師や薬剤師に相談してください。
薬の量を調整したり、服用時間を変更したり(例:インチュニブの眠気対策で就寝前や夕方に服用する、コンサータの不眠対策で午後の服用を避ける)、他の薬に変更したりすることで、副作用を軽減できる場合があります。
ADHD治療薬を服用する上での注意点

薬の効果を最大限に引き出し、安全に治療を続けるためには、いくつかの重要な注意点があります。
参考:
厚生労働科学研究成果データベース「ADHD治療薬の適正処方、減薬基準、減薬方法などに関するエビデンス」
医師の指示通りに用法・用量を守る
薬は、年齢や体重、症状の重さなどを考慮して最適な量が処方されています。
効果がないからといって勝手に量を増やしたり、飲み忘れた分をまとめて飲んだりすることは、副作用のリスクを高めるため非常に危険です。
必ず医師に指示された用法・用量を守ってください。
定期的な通院で効果と副作用を確認する
薬物治療を開始した後は、定期的に通院し医師の診察を受けることが不可欠です。
診察の際には、症状がどのように変化したか、気になる副作用はないか、日常生活での困りごとはどう変わったかなどを具体的に伝えることで、医師は薬の種類や量が適切かどうかを判断しやすくなります。
自己判断で中断・減薬しない
「症状が良くなったから」「副作用が気になるから」といった理由で、自己判断で急に薬の服用をやめてしまうと、症状が再燃したり、離脱症状(倦怠感や気分の落ち込みなど)が現れたりする可能性があります。
服用の中止や減量を希望する場合は、必ず医師に相談し、その指示に従ってください。
ADHDの薬に関するよくある質問
最後に、ADHDの薬物治療に関して多くの方が抱く疑問についてお答えします。
薬を飲むと性格が変わってしまうのですか?
ADHDの薬が本来の性格を変えてしまうことはありません。薬の効果は、あくまでADHDの特性(不注意、多動性、衝動性)をコントロールしやすくすることです。
結果、落ち着きが出たり、集中できるようになったりするため、周囲から見ると「穏やかになった」と感じられることはありますが、それは本来のその人らしさが良い形で現れやすくなった状態と言えます。
薬に依存性はないのでしょうか?
コンサータなどの刺激薬には、精神的な依存(薬がないと不安になるなど)の可能性が指摘されていますが、医師の処方通りに正しく服用している限り、依存のリスクは低いとされています。
ストラテラやインチュニブといった非刺激薬には、依存性はほとんどありません。心配な場合は、医師に相談し、薬の特性についてよく説明を受けましょう。
参考:PMDA(医薬品医療機器総合機構)「コンサータ錠 医薬品リスク管理計画書」
参考:PMDA(医薬品医療機器総合機構)「インチュニブ錠 CTD概要」
参考:PMDA(医薬品医療機器総合機構)「ビバンセカプセル CTD概要」
参考:PMDA(医薬品医療機器総合機構)「ストラテラカプセル CTD概要」
参考:日本薬理学会雑誌「ADHD治療薬リスデキサンフェタミン(ビバンセ®カプセル)」
市販薬やサプリメントで代用できますか?
現在、ADHDの治療に効果があると医学的に証明されている市販薬やサプリメントはありません。ADHDの治療薬は、脳の機能に作用するため、医師の厳格な管理のもとで使用される必要があります。
自己判断で市販薬やサプリメントに頼るのではなく、まずは専門の医療機関を受診してください。
まとめ
ADHDの治療薬は、不注意・多動性・衝動性といった中核症状を改善し、社会生活における困難を軽減するための有効な手段です。薬物療法は、環境調整やカウンセリングと並行して行うことで、その効果を最大限に発揮します。
治療薬にはいくつかの種類があり、それぞれに特徴や副作用があるため、医師とよく相談し、自分に合った薬を見つけていくことが重要です。
薬に対する不安や疑問があれば、一人で抱え込まず、専門家に相談しながら、納得のいく治療を進めていきましょう。
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