「最近、咳が長く続いている」「夜中や朝方に息苦しくなることがある」そんな症状に悩んでいませんか。その不調、もしかしたらアレルギーと喘息が関係しているかもしれません。喘息患者の多くが特定のアレルギーを持っていることが分かっており、両者は非常に密接に関わっています。
この記事では、喘息とアレルギーの関係性から、具体的な症状、検査、治療法、そして日常生活でできる対策まで、分かりやすく解説していきます。ご自身やご家族の健康を守るための第一歩として、ぜひ最後までお読みください。

喘息とアレルギーの関係
喘息は、空気の通り道である「気道」が慢性的な炎症を起こしている状態です。この気道の炎症に、アレルギーが大きく関わっていることが少なくありません。特に小児喘息では70〜90%がアレルギーによるものと報告されています。
参考: 第3章 – 厚生労働省
アレルギーが喘息を引き起こすメカニズム
私たちの体には、ウイルスや細菌などの異物から身を守る「免疫」というシステムが備わっています。しかし、この免疫システムが、本来は無害なはずのダニや花粉などを「敵」と誤認してしまうことがあります。これがアレルギー反応の始まりです。
敵とみなされた物質(アレルゲン)が再び体内に侵入すると、免疫システムはこれを排除しようと「IgE抗体」を作り出し、ヒスタミンなどの化学物質を放出します。気道を刺激して炎症を起こし、気道を狭くさせたり、過敏にさせたりすることで、咳や息苦しさといった喘息の症状が引き起こされるのです。
アトピー型喘息と非アトピー型喘息の違い
喘息は、アレルゲンへの反応の有無によって大きく2つのタイプに分けられます。
- 小児の喘息はアトピー型が多数を占めますが、成人ではアトピー型が約60~70%、非アトピー型が約30~40%の割合になります。自分がどちらのタイプかを知るのは、適切な治療や対策を行う上で非常に重要です。
参考:厚生労働省「資料 喘息の疾患としての特徴 (医療関係者向け資料)」
喘息の主な症状とセルフチェック方法

喘息の症状は人によって様々ですが、いくつか特徴的なサインがあります。早期に気づき、適切な対応をすることが、症状の悪化を防ぐ鍵となります。
見逃せない喘息のサイン
喘息の代表的な症状は、発作的な咳や痰、息苦しさです。特に、夜間から早朝にかけて症状が悪化しやすいという特徴があります。呼吸をするときに、「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった音が聞こえる「喘鳴(ぜんめい)」も典型的な症状の一つです。風邪やウイルス感染、季節の変わり目、疲労、特定の刺激物(タバコの煙など)に触れることで誘発されたり、悪化したりすることがあります。
自分でできる症状チェックリスト
以下の項目に当てはまるものがないか、確認してみましょう。
- 咳が3週間以上続いている
- 夜間や早朝に特に咳き込んだり、息苦しくなったりする
- 呼吸をすると「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という音がする
- 季節の変わり目や特定の場所に行くと症状が出る
- 家族にアレルギー疾患(喘息、鼻炎、アトピーなど)を持つ人がいる
複数当てはまる場合は、喘息の可能性があります。ただし、他の呼吸器疾患でも見られることがあるため、自己判断せず専門の医療機関を受診しましょう。
喘息を悪化させる主なアレルゲン
アトピー型喘息の場合、原因となるアレルゲンを特定し、避けることが症状のコントロールに繋がります。私たちの身の回りには、様々なアレルゲンが存在します。
室内に潜むアレルゲン(ダニ・ハウスダスト)
最も代表的な室内アレルゲンは、ダニやハウスダストです。ハウスダストとは、ホコリ、ダニの死骸やフン、繊維くずなどが混ざったもので、非常に軽いため空気中に舞い上がりやすい特徴があります。
特に布団やカーペット、布製のソファなどはダニが繁殖しやすいため、注意が必要です。
その他のアレルゲン(カビ・花粉・ペット)
室内では、浴室やエアコン内部などで繁殖しやすいカビもアレルゲンとなります。屋外からは花粉が侵入し、喘息を悪化させることがあります。
ペットを飼っている場合は、毛やフケがアレルゲンとなることも少なくありません。アレルゲンは目に見えにくいため、知らず知らずのうちに吸い込んでしまう可能性があります。
食物アレルギーと喘息の関係について
特定の食べ物によってアレルギー反応が起こり、喘息の症状が誘発されることもあります。代表的なアレルゲンとなる食品には、鶏卵、乳製品、小麦、甲殻類などがあります。
食物アレルギーが疑われる場合は、どの食品が原因となっているかを正確に診断し、医師の指導のもとで適切な食事管理を行いましょう。
喘息の検査と診断方法
喘息の診断は、症状の問診に加えて、いくつかの客観的な検査を組み合わせて行われます。正確な診断を受けることで、最適な治療方針を立てられます。
病院で行われる検査について
まず詳しい問診で症状の特徴や生活環境、アレルギー歴などを確認します。その上で、呼吸機能検査やアレルギー検査、呼気NO検査などを行い、総合的に診断します。
呼吸機能検査(スパイロメトリー)とは
スパイロメトリーは、喘息の診断に用いられる代表的な呼吸機能検査です。思い切り息を吸い込んだ後に、どれだけ強く、速く息を吐き出せるかを測定します。
特に、最初の1秒間で吐き出せる空気の量(1秒量)は、気道が狭くなっていると低下するため、喘息の診断や重症度の評価に重要な指標となります。
血液検査でアレルゲンを特定する
血液検査では、特定のアレルゲンに対して体が過剰に反応していないかを調べます。ダニ、スギ花粉、ネコのフケなど、様々なアレルゲン項目を一度に調べることが可能です。
原因となっているアレルゲンを特定できれば、より具体的な対策(アレルゲンの除去など)を講じることができます。
喘息の基本的な治療法について

喘息治療の目標は、症状がない状態を維持し、健康な人と変わらない日常生活を送ることです。治療の基本は、薬物療法とアレルゲンなどの増悪因子の回避です。薬は大きく分けて、日々の炎症を抑える「長期管理薬」と、発作が起きた時に症状を和らげる「発作治療薬」の2種類があります。
長期管理薬(コントローラー)の役割
長期管理薬は、喘息の根本原因である気道の炎症を抑え、発作を予防するための薬です。中心となるのは「吸入ステロイド薬」で、気道に直接作用するため、少ない量で高い効果が期待でき、全身への副作用も少ないとされています。症状がない時でも自己判断で中断せず、毎日継続して使用しましょう。
発作治療薬(リリーバー)の正しい使い方
発作治療薬は、咳や息苦しさなどの発作が起きた時に、狭くなった気道を速やかに広げて症状を和らげるための薬です。主に「短時間作用性β2刺激薬」の吸入薬が用いられます。あくまで一時的に症状を抑えるものであり、気道の炎症を治す効果はありません。
発作治療薬の使用頻度が高い場合は、普段のコントロールがうまくいっていないサインですので、主治医に相談が必要です。
近年注目される生物学的製剤
従来の治療では症状のコントロールが難しい重症の喘息患者さんに対しては、「生物学的製剤」という新しいタイプの注射薬が用いられることがあります。アレルギー反応に関わる特定の物質の働きをピンポイントで抑えることで、気道の炎症を強力に抑制する薬です。
高額な治療ですが、条件によっては保険適用となりますので、医師との相談が必要です。
日常生活でできるアレルゲン対策のポイント

薬物療法と並行して、喘息の引き金となるアレルゲンを身の回りから減らす環境整備も非常に重要です。少しの工夫で、症状を大きく改善できる可能性があります。
基本は掃除と換気
ハウスダストを効率的に除去するためには、掃除の手順がポイントです。まず、ホコリが舞い上がらないように湿った雑巾などで拭き掃除をしてから、掃除機をゆっくりとかけるのが効果的です。
また、1日に1〜2回は窓を開けて換気を行い、室内の空気をきれいに保ちましょう。空気清浄機の使用も有効です。
寝具の選び方とお手入れ方法
一日の多くを過ごす寝具は、ダニ対策の重要なポイントです。ダニが侵入しにくい高密度の生地でできた防ダニカバーを使用するのがおすすめです。シーツや布団カバーはこまめに洗濯し、布団自体も天日干しや布団乾燥機で湿気を取り除くことを心がけましょう。
ペットを飼っているときの注意点
ペットの毛やフケがアレルゲンの場合、理想は飼育環境を分けることですが、難しい場合も多いでしょう。ペットをこまめにシャンプーして清潔に保つ、寝室にはペットを入れない、空気清浄機を活用するなどの対策を徹底することが大切です。
布製のソファやカーペットを避けるだけでも、アレルゲンを減らす効果が期待できます。
まとめ
喘息とアレルギーは、免疫システムの反応という点で深く繋がっており、互いに影響し合っています。咳や息苦しさといった症状の裏には、ダニや花粉などのアレルゲンに対する体の過剰な反応が隠れていることが少なくありません。
大切なのは、まず専門医による正確な診断を受け、自分の喘息のタイプや原因アレルゲンを正しく理解することです。そして、医師の指導のもとで適切な薬物治療を継続するとともに、日常生活の中でアレルゲンを避ける工夫を実践していきましょう。正しい知識と対策で、症状をコントロールし、快適な毎日を送ることが可能です。
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