「避妊に失敗したかもしれない…」そんな緊急事態に、インターネットでアフターピルを探すと「オンライン処方」という言葉を目にすることがあります。しかし、同時に「怪しい」「危険」といった不安な情報も多く、一体何を信じれば良いのか分からなくなってしまいますよね。
確かに、オンライン上には危険なサイトも存在します。しかし、全てのオンライン処方が怪しいわけではありません。この記事では、なぜアフターピルのオンライン処方が「怪しい」と言われるのか、その理由と、危険な個人輸入のリスク、そして本当に安全なオンライン診療クリニックを見分けるためのポイントを詳しく解説します。
アフターピルのオンライン処方が「怪しい」と言われる理由

アフターピルのオンライン処方が「怪しい」というイメージを持たれてしまう背景には、いくつかの明確な理由が存在します。その最大の原因は、正規の「オンライン診療」と、非常に危険な「個人輸入(海外通販サイト)」が混同されてしまっていることにあります。
医師の診察がない個人輸入サイトの存在
インターネット上には、医師の診察なしに、まるで一般的な通販サイトのようにアフターピルを販売している海外のサイトや、その購入を代行する個人輸入サイトが存在します。
これらのサイトは、正規の医療機関によるオンライン「診療」とは全くの別物です。アフターピルは、医師の処方が必要な医薬品であり、診察なしに販売すること自体が違法行為の可能性があります。
参考:「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に基づく薬局における対応について|厚生労働省
偽造薬や品質の低い薬が出回っている可能性がある
個人輸入で出回っているアフターピルには、有効成分が全く含まれていない偽造薬や、不純物が混入した品質の低い薬である可能性が非常に高いです。厚生労働省の調査では、特定のED治療薬について約6割が偽造品であったという報告があります。
見た目では本物と区別がつかず、服用しても避妊効果が得られないばかりか、深刻な健康被害につながる恐れがあります。
参考: 厚生労働省「偽造医薬品問題の現状と対策について」.pptx
個人情報が漏えいするリスクがある
信頼性の低い海外サイトや個人輸入代行サイトに、氏名や住所、クレジットカード情報などの個人情報を入力することは、大きなリスクを伴います。入力した情報が悪用されたり、漏えいしたりする危険性があり、金銭的なトラブルに巻き込まれる可能性も否定できません。
服用後のトラブルに誰も対処してくれない
アフターピルには、吐き気や頭痛、不正出血などの副作用が起こることがあります。正規の医療機関で処方を受けていれば、万が一副作用が強く出た場合や、予期せぬ体調の変化があった際に、医師に相談して適切なアドバイスを受けることができます。
しかし、個人輸入で購入した場合は、相談できる専門家がおらず、全てのトラブルに自分一人で対処しなければなりません。
危険!アフターピルの個人輸入に潜むリスク

「安いから」「手軽だから」という理由でアフターピルの個人輸入に手を出すことは、絶対に避けるべきです。そこには、あなたの心と身体を危険に晒す、重大なリスクが潜んでいます。
有効成分が含まれていない偽薬かもしれない
個人輸入で入手した薬が偽薬だった場合、大きな懸念点として挙げられるのは、避妊に失敗してしまうことです。有効成分が含まれていなければ、それはただの錠剤であり、緊急避妊薬としての効果は全くありません。望まない妊娠という、取り返しのつかない結果を招く最大の原因となります。
健康に有害な物質が含まれている恐れがある
偽造薬には、有効成分が含まれていないだけでなく、健康に有害な不純物や、全く別の成分が混入している可能性があります。それらが重篤なアレルギー反応や予期せぬ副作用を引き起こし、深刻な健康被害につながる危険性があります。
医薬品副作用被害救済制度の対象外になる
日本には、国内で承認された医薬品を正しく使用したにもかかわらず、重篤な健康被害が生じた場合に医療費などを給付する「医薬品副作用被害救済制度」という公的な制度があります。しかし、個人輸入で入手した未承認の医薬品による健康被害は、この制度の対象外となります。
つまり、万が一のことがあっても、何の補償も受けることができないのです。
参考:医薬品の副作用等による健康被害救済制度について
安全なオンライン診療クリニックを見分ける5つのポイント
危険な個人輸入サイトがある一方で、厚生労働省の指針に則って運営されている、安全なオンライン診療クリニックも存在します。
ここでは、怪しいサイトに騙されず、安心して利用できる正規のクリニックを見分けるための5つの重要なポイントを紹介します。
国内の医療機関が運営しているか
まず最も重要なのは、サイトの運営元が日本の医療機関(病院やクリニック)であることを確認することです。必ず公式サイトの「クリニック概要」や「医師紹介」のページを確認し、医療機関名、所在地、院長名などが明確に記載されているかチェックしましょう。
運営元が不明確なサイトは絶対に利用してはいけません。
医師によるオンライン診察が必須であるか
安全なオンライン診療では、薬を処方する前に、必ず医師による診察が行われます。診察方法はビデオ通話や電話が一般的です。問診票の入力だけで診察がなく、簡単に薬が購入できてしまうサイトは、正規の医療機関ではなく、危険な個人輸入サイトの可能性が極めて高いです。
参考:オンライン診療における緊急避妊薬の調剤の手順(厚生労働省).pdf
国内で承認された医薬品を処方しているか
処方されるアフターピルが、日本の厚生労働省によって承認された正規品であるかを確認しましょう。クリニックの公式サイトには、取り扱っている薬の種が明記されているはずです。
国内未承認の海外製の薬を安価で提供しているサイトには注意が必要です。
料金体系が明確に表示されているか
薬の料金だけでなく、診察料や送料を含めた総額が、サイト上で明確に表示されているかを確認することも大切です。料金体系が不透明であったり、相場に比べて極端に安かったりする場合は、偽薬や品質の低い薬を扱っている可能性があるため注意が必要です。
プライバシーへの配慮がされているか
アフターピルは非常にデリケートな問題です。信頼できるクリニックは、個人情報の取り扱いに関するプライバシーポリシーを明記しているほか、薬を配送する際の梱包を中身が分からないようにするなど、プライバシーに配慮しています。
こうした配慮の有無も、クリニックを選ぶ上での一つの判断基準になります。
アフターピルをオンラインで処方してもらう流れ

安全なオンライン診療クリニックを選べば、アフターピルの処方はスムーズに進みます。一般的な流れは以下の通りです。
手順1:クリニックの公式サイトから予約する
まずは、利用したいクリニックの公式サイトにアクセスし、オンライン診療の予約を行います。スマートフォンやパソコンから24時間いつでも予約できるクリニックが多いです。
手順2:ビデオ通話や電話で医師の診察を受ける
予約した時間になると、医師から連絡があり、ビデオ通話や電話で診察が始まります。最終月経日や避妊に失敗した日時などを正確に伝えられるように準備しておきましょう。不安なことや疑問点があれば、この時に必ず質問してください。
手順3:オンラインで決済する
診察が終わると、オンラインで決済を行います。クレジットカード払いが一般的ですが、クリニックによっては他の決済方法に対応している場合もあります。
手順4:指定の場所に薬が配送される
決済が完了すると、アフターピルが指定した住所に配送されます。クリニックによっては、バイク便などを利用して当日中に届けてくれるサービスもあります。プライバシーに配慮し、中身が分からないように梱包されているのが一般的です。
オンライン処方のメリットとデメリット
アフターピルのオンライン処方には、メリットとデメリットの両方があります。ご自身の状況に合わせて、最適な方法を選択することが大切です。
オンライン処方のメリット
- 時間や場所を選ばない: 近くに産婦人科がない場合や、仕事や学業で日中に病院へ行けない場合でも、スマートフォンさえあればどこからでも診察を受けられます。
- プライバシーが守られる: 病院の待合室で誰かに会う心配がなく、自宅で診察から薬の受け取りまで完結するため、プライバシーが守られます。
- 精神的な負担が少ない: 対面での診察に抵抗がある方でも、電話やビデオ通話なら心理的なハードルが低く、相談しやすいという利点があります。
オンライン処方のデメリット
- 薬の受け取りに時間がかかる: 対面診療であればその場で薬を受け取れますが、オンライン診療は配送時間が必要です。ただし、バイク便などで即日配送に対応しているクリニックもあります。
- 直接的な検査ができない: 超音波検査などで、子宮や卵巣の状態を直接確認することはできません。
- 通信環境が必要: ビデオ通話などで診察を受けるため、安定したインターネット環境が必要です。
アフターピルに関するよくある質問
アフターピルに関して、多くの方が抱く疑問についてお答えします。
アフターピルはいつまでに飲めばいいですか?
日本で承認されているアフターピル(レボノルゲストレル)は、避妊に失敗した性交後72時間(3日)以内に服用する必要があります。 服用が早ければ早いほど避妊効果は高く、24時間以内の服用で約95%の妊娠阻止率が期待できます。
参考:厚生労働省 – 緊急避妊薬(レボノルゲストレル単剤)
副作用にはどのようなものがありますか?
主な副作用として、吐き気、頭痛、下腹部痛、倦怠感、不正出血などが報告されています。これらの症状は一時的なもので、多くは24時間以内におさまります。ただし、服用後2時間以内に嘔吐してしまった場合は、薬の成分が十分に吸収されていない可能性があるため、処方を受けた医師に相談してください。
参考:ノルレボ錠1.5mg
料金の相場はどのくらいですか?
アフターピルの処方は保険適用外の自由診療となるため、費用は全額自己負担です。料金はクリニックによって異なりますが、薬代と診察料を合わせて10,000円〜20,000円程度が相場です。
オンライン処方に保険証は必要ですか?
アフターピルの処方は自由診療のため、保険証は必須ではありません。ただし、本人確認のために提示を求められる場合がありますので、手元に準備しておくとスムーズです。
2025年にアフターピルが薬局で買えるようになる?
2025年8月29日、厚生労働省の専門家会議は、緊急避妊薬(アフターピル)「ノルレボ」を医師の処方箋なしで薬局で購入できるようにする制度案を大筋で了承しました。今後、厚生労働大臣が正式に承認すれば、国内で初めて市販薬として販売される見込みです。
この制度案では、年齢制限や保護者の同意は不要とされています。ただし、購入できるのは専門の研修を受けた薬剤師がいる薬局に限られ、薬剤師との対面での説明を受けた上で、その場で服用することが義務付けられる方針です。現在では、一部薬局において医師の診察と処方箋なしで購入できる試験販売も行われています。
しかし、もしこの制度が適用された場合でも、安易なインターネットサイトからの購入は絶対に避けるべきです。必ず、専門家である薬剤師から対面で説明を受けられる正規の薬局で購入してください。ご自身の体を守るためにも、まずは信頼できる医療機関へ相談することをお勧めします。
参考➀:
「緊急避妊薬」(アフターピル)医師の処方箋なくても薬局などで販売へ 制度は?服用の注意点は【Q&Aも】 | NHK | 医療・健康
参考➁:
緊急避妊薬の適正販売に係る環境整備のための調査事業(厚生労働省医薬局医薬品審査管理課委託事業)|公益社団法人 日本薬剤師会
まとめ
アフターピルの「オンライン処方」という言葉には、安全な「オンライン診療」と危険な「個人輸入」の二つが混在しており、これが「怪しい」というイメージの原因となっています。医師の診察なしに海外から薬を取り寄せる個人輸入は、偽造薬による健康被害や避妊の失敗など、極めて高いリスクを伴うため絶対に避けるべきです。
一方で、国内の医療機関が運営し、医師の診察のもとで国内承認薬を処方する正規のオンライン診療は、安全かつ有効な選択肢です。この記事で紹介した「安全なクリニックを見分ける5つのポイント」を参考に、信頼できる医療機関を選び、ご自身の心と身体を守るための正しい行動をとってください。
不安な時は一人で抱え込まず、必ず専門家である医師に相談しましょう。
あくまで、まずは医師の診断が必要ですが、アフターピルの副作用、現在服用中のお薬との飲み合わせなど不明なことがある場合、「とどくすり」にご相談いただくことも可能です。
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