血糖値を下げる食生活について知ろう!日常生活で気をつけるポイントと食事プラン

健康診断で血糖値が高いと指摘され、そのまま放置していませんか?
放置しておくと血管が傷ついて動脈硬化を引き起こしたり、糖尿病などの病気を発症するリスクが高まってしまいます。
自覚症状がないからと安心せず、生活習慣を見直しながら血糖値を改善していきましょう。

血糖値が上がる原因

血糖値とは、血液中のブドウ糖の濃度を指します。
食事からとった炭水化物などが体内で消化吸収され、ブドウ糖として血液中に運ばれることで血糖値は上昇していきます。

血糖値が上がると、膵臓からインスリンというホルモンが分泌されます。
インスリンは血液中のブドウ糖を肝臓や筋肉、脂肪細胞にエネルギー源として送り込む働きがあるため、それにより血糖値は下げられ、ほぼ一定の濃度にコントロールされる仕組みになっています。
しかし、このインスリンがうまく作用しなくなると、血糖値は高く上がったままの状態が続くことになります。

インスリンの分泌不足や、分泌されても十分に働かないことで血糖値が慢性的に高くなる病気が、糖尿病です。
その背景には、加齢や遺伝による影響や、肥満、食べ過ぎ、運動不足などの生活習慣が深く関わっているとされています。(Ⅱ型糖尿病の場合)

糖尿病と食生活の関係

prescription-medicine_No.2-02.jpeg

インスリンによる血糖コントロールを助け、高血糖状態が継続されるのを防ぐには、食生活を整えることが大きなポイントになります。

血糖値は食事をするたびに上がり、その後インスリンによって下げられますが、この上下の変動が急激に起こることが繰り返されると、糖尿病のリスクが高まったり、血管への大きなダメージから合併症へ進みやすくなったりします。

血糖値の急変動は脂肪合成を促進するため、体重増加の原因にもなります。
肥満(特に内臓脂肪型肥満)になると、インスリンの働きが悪くなることが指摘されています。
そのため、体重減少が血糖値の改善に重要視されている他、日頃の食生活の中で血糖値の安定化に役立つ食べ方を心がけることも、糖尿病の予防・改善には有効です。

将来的な健康管理として、食生活で実践できる血糖コントロールのコツをマスターしておきましょう。

血糖値を改善する食生活のポイント

prescription-medicine_No.2-03.jpeg

炭水化物の選び方

炭水化物は血糖値の上昇に大きく関わっています。
ご飯やパン、麺類などは血糖値が上がりやすい食品ですが、昨今の研究から、玄米や全粒粉など未精製の穀類をとると血糖値の急激な上昇が抑えられ、糖尿病や肥満のリスクが低減されることが明らかになっています。

~血糖コントロールに有効な炭水化物の例~
玄米、麦ごはん、雑穀、ライ麦パン、全粒粉パンなど

これらは精白などの処理で胚芽やふすまなどを取り除いていない穀物で、ビタミンやミネラル、食物繊維などが豊富に含まれています。
中でも食物繊維は、血糖コントロールにおいて注目したい食品成分です。

食物繊維の重要性と摂取のタイミング

食物繊維は糖、脂質、ナトリウムなどを吸着して体外に排出する働きがあるため、糖尿病、脂質異常症、高血圧などさまざまな生活習慣病の予防・改善に役立つとされています。

粘性や保水性があることで体内をゆっくり移動し、血糖値の上昇を抑える効果が期待できます。
また、食物繊維が多い食事はよく噛む必要があるため満腹感が得られやすく、食べ過ぎを防いで体重管理にもつながります。

~食べる順番も意識しましょう~
近年、食物繊維が豊富な野菜を食事の最初にとることが血糖コントロールに有効であるとして、「ベジファースト」という言葉とともに活用されるようになりました。
食べる順番を「野菜→肉や魚→ご飯やパン」にするのがより望ましく、胃の働きがおだやかになって炭水化物の消化吸収をゆるやかにできる食べ方です。

適度な脂質とたんぱく質の摂取

炭水化物は、単体で食べるより、脂質やたんぱく質を含む食品と一緒に食べる方が、血糖値の上昇を抑えられることがわかっています。
血糖コントロールを考えた食事において、脂質やたんぱく質もうまく活用したいところです。

食事を考える上で気をつけたいのが、栄養バランスです。
炭水化物が血糖値の上昇に影響するからといって、ご飯などを極端に制限し、脂質やたんぱく質を必要以上に食べて過ぎてしまうと、脂質異常症や慢性腎臓病、ガンなどのリスクが高まってしまいます。
赤身肉などに含まれる飽和脂肪酸の過剰摂取が糖尿病のリスクを増加させるという報告もあります。

栄養摂取は多過ぎても少な過ぎても良くなく、それぞれの種類や質を考えながら偏りなく食べることが大切です。

食事間隔と食事の量

毎日決まった時間に食事をとる習慣が体内の代謝機能を整え、良好な血糖コントロールを促します。
食事時間がバラバラになることで体内時計が乱れたり、間隔が空き過ぎた空腹感からドカ食いをしたりすると、肥満も招くため注意が必要です。

食事間隔は食べ物が胃で消化される時間を考慮して4~5時間を目安とし、食べる量はできるだけ朝昼夜で大きく偏ることなく調整すると、インスリンの働きを十分に得られると考えられています。

また、時間に余裕をもって食べることも大切です。
早食いは血糖値の急上昇が起こる原因にもなるため、15分以上かけてゆっくり味わうのも血糖コントロールのコツといえます。

血糖値を下げる食事プラン

prescription-medicine_No.2-05.jpeg

血糖値が高いからといって特別な食事を考える必要はなく、「過食や偏食をせず、規則正しい食生活を送ること」が基本となります。

食事の頻度と量

食事は朝昼夜の3食、腹8分目まではきちんと食べましょう。
特に朝食の摂取は健康づくりで重要視されることが多く、糖尿病の予防・改善においても毎日とることが推奨されています。

また、慢性的な食べ過ぎが糖尿病を発症させる原因になります。
ご飯は「盛り過ぎない」「おかわりしない」、おかずは「作り過ぎない」「買い過ぎない」などを心がけ、食事は満腹になる手前でやめる感覚を身につけましょう。

食べた量が適正であったかどうかは、毎朝体重をチェックすることで判断できます。
前日より体重が増えていたら、その日は食事量を控えめにし、活動量を増やすという調整をおこなうことで、体重増加を防ぐことができます。

食材の選び方・調理法

品数を豊富にすると栄養バランスが整います。
食事メニューは「主食・主菜・副菜」が揃った定食スタイルがおすすめです。

「パン+おにぎり」の組み合わせや「ラーメン+チャーハン」のセットなどは、主食の重ね食べになるので避けましょう。

主菜は飽和脂肪酸を多く含む肉やバターなどは控え、魚やオリーブオイルなどの植物油が推奨されています。
調理法は「煮る」「蒸す」「茹でる」を選ぶと余分な脂質を除くことができ、カロリーダウンにもなります。

血糖コントロールに欠かせない食物繊維は、未精製の穀類や野菜の他、海藻、きのこ、豆、果実にも豊富です。
副菜にひじきやしいたけなどを意識して取り入れると良いです。

飲み物

prescription-medicine_No.2-06.jpeg

飲み物に含まれる糖分は吸収が速いのが特徴です。
糖尿病や肥満のリスクを増加させるため、砂糖で甘味をつけたジュースや炭酸飲料、加糖コーヒーなどの過剰摂取は控えましょう。
これから気温が上がって喉が渇く季節になりますが、常飲する飲み物は無糖のお茶やミネラルウォーターなどをおすすめします。

間食

血糖値が高いからといって、お菓子を食べてはいけないわけではありません。
大豆や胚芽を使ったクッキー、ナッツ類、バナナなどは食物繊維が豊富で、小腹がすいた時の間食に適しています。
満足感があって腹持ちが良く、血糖コントロールに役立ちます。
間食量は1日200kcal以内が目安とされています。パッケージの表示をチェックしながら選び適度に楽しみましょう。

血糖値と上手に付き合っていきましょう

ご紹介してきたように、日々の食事の選び方や食べ方の工夫によって、その後の健康状態が変わってきます。
まずは現在の食生活を振り返り、無理なく整えていきましょう。

また、検査数値の改善には、生活習慣の見直しとともに、状況によっては薬による治療もあります。
生活改善も、服薬も、続けてこそ効果がありますので、病気への理解を深めながら上手に付き合っていきましょう。

参考文献
  • 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2019」
  • 厚生労働省「e-ヘルスネット」
  • ㈱創新社「糖尿病ネットワーク」