新型コロナウィルスの感染対策と向き合う中、第二の健康被害として「運動不足」が懸念されています。仕事はテレワーク、休日もステイホーム。このような生活スタイルが、かれこれ2年ほど続いているという方も多いのではないでしょうか。
★身体活動量が減少することで高まる健康リスク
活動が制限されたり、定期的におこなってきた運動が継続できなくなったりすることにより身体活動量が減ってしまうと、体力の低下のみならず身体にはさまざまな影響が生じてきます。
●主なリスク:
・体重増加
・メタボリックシンドローム(内臓脂肪の蓄積)、高血圧、糖尿病、脂質異常症
・ロコモティブシンドローム(運動器の障害)、骨粗しょう症
・肩こり、腰痛、目の疲れなどの不調
・ストレスの蓄積
★身体活動(生活活動・運動)とそのメリット
身体活動とは、安静にしている状態よりも多くのエネルギーを消費している動作のことをいいます。日常生活の中における動作(移動、労働、家事、買物など)の「生活活動」と、スポーツなど体力の維持向上や健康増進を目的とした「運動」の2つに分けられます。
日々の生活の中で適度な身体活動を継続することにより、体重のコントロールや生活習慣病の予防、体力や免疫機能の向上、気分転換など多くのメリットが期待できます。
近年の研究では、時間をつくって計画的におこなう運動習慣のみならず、労働や家事といった生活活動でもその効果は有用であることが明らかになってきています。
「運動=スポーツをする」とハードル高く捉えるのではなく、まずは自粛生活で以前より減ってしまった分の活動量を取り戻すくらいの気持ちで、ぜひ体を動かすことを意識しながら過ごすように心がけていきましょう。
★どの程度体を動かせばいいでしょうか?
厚生労働省による健康日本21(第二次)では、国民の身体活動の普及と啓発のためのツールとして「健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)」が示されました。
アクティブガイドでは、目標として「1日合計60分、元気に体を動かすこと(高齢の方は1日40分)」を奨励しています。この数値は計画的な運動だけでなく、生活活動も足し合わせた時間をあらわしています。
<細切れでも有効です>健康づくりにおける身体活動は、まとまった時間を確保して続けて実施する必要はありません。できる時にこまめにおこなった合計時間で達成させることでも、連続でおこなうのと同様の効果が得られるとされています。
アクティブガイドでは、まずは「今より10分多く体を動かす」という考え方を「+10(プラス・テン)」と表現し、健康寿命をのばすための手軽な取り組みとして紹介しています。
●「+10(プラス・テン)」の例:
(朝)散歩、ジョギング、ラジオ体操、庭の手入れ
(通勤時)早歩き、歩幅を広くする、自転車通勤
(家事)キビキビと掃除や洗濯、家事の合間に「ながら体操」
(仕事中)こまめに歩く、階段を使う、遠くのトイレを使う
(休憩中)散歩、食事に出かける
(夜)ウォーキング、運動施設に通う、テレビを見ながら筋トレやストレッチ
出典:厚生労働省「健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)」より
例えば予定のない休日でも「片道10分のスーパーに買物に行き往復で20分」「テレビやパソコンの合間に10分のストレッチ」「夕方に30分の散歩」、これで合計60分です。
自宅で過ごすことが多いと長時間座ったままになりがちです。テレビを見る際は「コマーシャルになったら一度立ち上がる」など、自分なりにルールを決めながら実践していけるといいですね。
屋外での運動や散歩などは、国の方針において「生活の維持に必要なもの」として自粛の対象外とされていますが、コロナウィルス感染の拡大防止への配慮は今後も十分に必要です。外で体を動かす場合は人の多い場所や時間を避けたり、可能な限りマスクを着用したりするなど、安全に実践していくことでひき続き感染予防にも努めていきましょう。
★まずは歩数アップから
身体活動量の指標として便利なアイテムが歩数計です。歩数計は歴史が古く、日本で一般向けに使用されるようになったのは1960年代なので、かれこれ50年以上も愛用されている健康機器です。
近年ではスマートフォンを持ち歩くことで歩数がカウントされる便利な機能もありますが、室内で過ごす場合はスマートフォンを置いたままの状態にすることが多いため正確な歩数を把握するのが難しかったりします。
最近は腕に付けるタイプのウェアラブル端末が非常に人気です。常に装着しておけるので家事やデスクワークの合間など室内でのちょっとした移動も含む活動量を測定できるため、より有効性が高いといえます。歩数だけでなく消費カロリーや心拍数、睡眠時間や質なども測定できたり、じっとしている時間が長くなるとメッセージが送られてきたりする便利な機能が搭載されているものもあります。
<10分=約1000歩>
新型コロナウィルスの流行以降さまざまな研究調査が世界各地でおこなわれている中、1日あたりの平均歩数が大幅に減少していることが明らかになっています。
厚生労働省のアクティブガイドでは、望ましいとされる1日あたりの歩数は8000歩とされていますが、保健指導におけるテレワーク実施者へのヒアリングにおいて「今は1日2000~3000歩」という返答も少なくありません。
10分の歩行で得られる歩数は約1000歩とされています。
仕事環境や移動における交通手段など、ライフスタイルは十人十色です。最初から理想とされる目標をめざすのではなく、まずは自身の歩数に関心をもち「今より10分多く体を動かす」を念頭に「まずは+1000歩」「今日は30分散歩して3000歩増やそう」などコツコツと積み重ねながら健康づくりに活かしていきましょう。
<散歩のすすめ>
体の衰えは足腰からくるといわれています。日々の歩数が健康の指標として長年大切とされているのはそのためです。
筋肉は使わないと衰えるばかりか年齢を重ねるごとに減っていくという特徴があり、下半身の筋肉は上半身よりそれが顕著に現れるため、加齢に伴いつまずきや転倒などのトラブルが生じやすくなります。
体を動かさないで放っておくと、将来的には「動かしたくても、動かなくなる」リスクが高まるということです。寝たきり状態を招くことのないように、早いうちから筋力低下を予防しておく必要があります。
外を出歩く散歩は気分転換になるため、ストレス解消にも効果的です。
また、日光を浴びることでビタミンDが体内で生成されます。ビタミンDはカルシウムの吸収や骨への沈着を促進する働きがあるため、栄養面でも足腰を丈夫にする効果が期待できます。
★自宅やオフィスでできる運動
「仕事が山積み」「雨が降って出歩けない」など、継続的な取り組みが難しくなることもあると思います。ちょっとした合間に室内でも手軽に取り入れられる運動をピックアップしておきますので、うまく組み合わせながら実践してみてくださいね。
<カーフレイズ(かかとの上げ下げ運動)>
歯磨きしながらなど、簡単にできるエクササイズです。つま先立ちになってかかとを上げ下げすることで、ふくらはぎの筋肉が鍛えられます。ふくらはぎは血流のポンプの役割があるため、座りっぱなしでむくんだ足の血行を促進したり、冷えを改善したりする効果があります。
<床に座ってお尻歩き>
足を伸ばして床に座り、左右の足を交互に動かして少しずつ前に進んでいきます。下半身の筋肉が鍛えられるほか、骨盤のゆがみを改善する効果も期待できます。
<その場で足踏み運動>
テレビを見ながら、音楽を聴きながら…。歩数アップの室内バージョンです。腕を振り、太ももを高く上げることでよりしっかりと鍛えられます。椅子に座ったままおこなうこともできます。
<踏み台運動>
その場足踏みに慣れてきたらステップアップ!家庭用の踏み台も市販されていますが、雑誌などで20cmほどの段差をつくっても実践可能です。
<階段の上り下り>
オフィスで階段利用が可能であれば、エレベーターでなく階段を選びましょう。時間に余裕がある昼休みや、高層階であれば下りだけでも!
体を動かすことは、健康のみならず将来的な生活活動力の維持・向上にもつながります。外出自粛はこのさきも続くことが予想されますが、そんな中でも無理なくマイペースに続けられることを見つけ、これからもアクティブな毎日を過ごしていきましょう。