デュピクセント(デュピルマブ)は、アトピー性皮膚炎や喘息などで、塗り薬・吸入薬などの治療を続けても症状が落ち着きにくいときに選択肢になる注射薬です。一方で、注射薬の副作用や自己注射の流れ、費用の目安など、始める前に知っておきたいポイントもあります。
この記事では、デュピクセントの作用や期待できる効果などを解説します。デュピクセントを検討している方はもちろん、主治医に相談する前の予習としても参考にしてください。
デュピクセントとは?
デュピクセント(一般名:デュピルマブ)は、アレルギーに関わる炎症を抑える目的で用いられる注射薬(生物学的製剤)です。主に、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎などで、既存の治療だけでは症状のコントロールが十分でない場合に使用が検討されます。
参考文献

作用の仕組み
デュピクセントは、アレルギー性の炎症に関わる「IL-4」と「IL-13」という物質の働きを阻害する薬です。これらの物質は、体の中で炎症の信号を広げる役割を持っていますが、デュピクセントはその信号が細胞へ伝わりにくくなるよう作用します。
その結果、アレルギー反応に関係するIgE(抗体)や好酸球(炎症に関係する細胞)の働きが過剰になりにくくなり、炎症が落ち着きやすくなると考えられています。
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注射をやめたらどうなる?
デュピクセントは、治療中に炎症を抑えることで症状をコントロールしていく薬です。そのため、中止すると炎症が再び強まり、症状がぶりかえしたりする可能性があります。投与間隔を変えたあとや投与をやめたあとも含めて、病状の管理を続けることが大切です。
また、デュピクセントを使っている間も、皮膚の状態に合わせて抗炎症の塗り薬を併用し、保湿剤も継続することが基本です。やめた後も、スキンケアや外用治療を自己判断で止めてしまうと、悪化につながることがあります。
効果の見え方には個人差があるため、アトピー性皮膚炎では通常、開始から16週(約4か月)までに反応を確認し、反応が得られない場合は中止を検討するとされています。症状が落ち着いてきたときも、自己判断で急に中止せず、中止するか・間隔をあけるかは主治医と相談して進めましょう。
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適用される疾患
デュピクセントは、既存治療で効果が不十分な重症のアレルギー性疾患に適応されます。
主な適応疾患は以下の6つです。
| 適用される疾患 | 主な症状 |
|---|---|
| アトピー性皮膚炎 | 乾燥や湿疹、強いかゆみが続く皮膚の炎症 |
| 結節性痒疹 | 硬いブツブツ(結節)ができ、強いかゆみが長く続く |
| 特発性の慢性蕁麻疹 | 原因がはっきりしない蕁麻疹が6週間以上続く |
| 気管支喘息 | 咳・息苦しさ・ぜーぜーが繰り返される |
| 慢性閉塞性肺疾患(COPD) | 息切れや咳・痰が続き、増悪(悪化)を繰り返すことがある |
| 鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎 | 鼻の中にポリープ(鼻茸)ができ、鼻づまり・においが分かりにくいなどが続く |
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デュピクセントに期待できる6つの効果

デュピクセントは、炎症に関わる働きを抑えることで、症状を落ち着かせることが期待される注射薬です。ここでは、デュピクセントに期待できる主な効果を6つに整理して解説します。
デュピクセントに期待できる6つの効果
- 1. 炎症・かゆみを軽減できる
- 2. 皮膚症状を長期的にコントロールできる
- 3. 蕁麻疹のかゆみや膨疹を抑えられる
- 4. 喘息の症状悪化を抑えられる
- 5. COPDの増悪を抑えられる
- 6. 鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎の鼻づまりを軽減できる
1.炎症・かゆみを軽減できる
デュピクセントは、アトピー性皮膚炎などで問題になりやすい皮膚の炎症や強いかゆみを抑える目的で用いられる注射薬です。アレルギー性の炎症に関わる物質(IL-4/IL-13)の働きを抑えることで、炎症が続きにくい状態につながります。
臨床試験では、治療開始(300mg使用)で、皮疹の重症度指標が16週時点で改善した方の割合が、プラセボより高かったことが報告されています。また、かゆみの改善も示されており、皮膚症状だけでなくかゆみの軽減も期待されます。
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2.皮膚症状を長期的にコントロールできる
デュピクセントは、治療を続けることで皮膚の状態が安定しやすくなるとされています。アトピー性皮膚炎などで炎症に関わる物質(IL-4/IL-13)を抑えることで、炎症がぶり返しやすいサイクルを弱めるためです。
そのため、治療中はかゆみや発疹が悪化しにくい状態を保ちやすい一方で、自己判断で中止すると、体質そのものが治ったわけではないため症状が再び強くなることもあります。続け方や中止のタイミングは、症状や併用治療も含めて医師と相談しながら決めることが大切です。
3.蕁麻疹のかゆみや膨疹を抑えられる
原因不明の慢性蕁麻疹(CSU)においても、デュピクセントが治療の選択肢になる場合があります。とくに、抗ヒスタミン薬などの標準的な治療を続けても症状が十分に落ち着かない方を対象に、かゆみや膨疹(みみず腫れ)の程度が改善したことが臨床試験で報告されています。
日本でも、デュピクセントは既存治療で効果不十分な特発性の慢性蕁麻疹に対して適応が追加されており、症状のコントロールが難しい方の新しい選択肢として位置づけられています。
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4.喘息の症状悪化を抑えられる
デュピクセントは、吸入ステロイド薬などの標準治療を続けてもコントロールが難しい喘息に対し、増悪を起こしにくくする目的で追加されることがある注射薬です。
臨床試験では、デュピクセントを追加することで、重い増悪の回数が減り、呼吸機能(FEV1など)が改善したことが報告されています。
注意点として、デュピクセントはいま起きている発作をその場で止める薬ではないため、急な発作にはおすすめできません(発作時は別の治療が必要です)。
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5.COPDの増悪を抑えられる
COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、息切れや咳・痰が続き、増悪と呼ばれる急な悪化(いつもより症状が強くなり、追加の治療が必要になる状態)を繰り返すことがある病気です。デュピクセントは、増悪を繰り返す一部のCOPD患者で、増悪を起こしにくくする目的で追加されることがあります。
特に対象になりやすいのは、吸入薬(LAMA・LABA・ICSの併用)を続けても増悪を繰り返し、かつ血中好酸球数が高い(例:300/μL以上)など、2型炎症が関与している可能性が高いタイプです。臨床試験(第III相)では、条件に合う患者で、デュピクセントを追加することで増悪が減ったことが報告され、呼吸機能や症状面でも改善が示されています。
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6.鼻茸(ポリープ)を伴う慢性副鼻腔炎の鼻づまりを軽減できる
鼻茸(ポリープ)を伴う慢性副鼻腔炎では、鼻の中の炎症が続くことでポリープが大きくなり、鼻づまりやにおいが分かりにくいといった症状が起こりやすくなります。
デュピクセントは、炎症に関わる物質(IL-4/IL-13)を抑えることで、ポリープの大きさが小さくなりやすく、鼻づまりや嗅覚の症状が改善したという報告があります。なお、手術や全身ステロイドなどの治療を行っても十分にコントロールできない場合に使用を検討する薬として位置づけられています。
症状が落ち着いてきても、投与の継続や中止は自己判断せず、主治医と相談しながら進めることが大切です。
デュピクセントの副作用
デュピクセントは、体のアレルギー性炎症を抑える注射薬です。一方で、薬の作用や体質の影響により、副作用がみられることがあります。
副作用の出やすさや症状の強さには個人差があるため、気になる変化があれば自己判断で我慢せず、処方元(主治医)に相談しましょう。
デュピクセント投与に伴う主な副作用には以下があります。
| 5%以上 | 5%未満 | 頻度不明 | |
|---|---|---|---|
| 感染症および寄生虫症 | 結膜炎、口腔ヘルペス、単純ヘルペス | ||
| 眼障害 | アレルギー性結膜炎、眼瞼炎、眼乾燥 | 眼そう痒症、角膜炎、潰瘍性角膜炎 | |
| 血液およびリンパ系障害 | 好酸球増加症 | ||
| 注射部位 | 注射部位紅斑 | 注射部位反応、注射部位そう痒感、注射部位浮腫、注射部位疼痛、注射部位硬結、注射部位内出血、注射部位発疹、注射部位皮膚炎 | |
| 神経系障害 | 頭痛 | ||
| 皮膚および皮下組織障害 | 発疹 | ||
| その他 | 発熱、関節痛 | 血清病、血清病様反応 |
重大な副作用発現時には速やかに医師に連絡し、治療継続の可否を判断を確認しましょう。
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デュピクセント治療の流れ

デュピクセント(デュピルマブ)は皮下注射のお薬です。初回は医療機関で医師・看護師の指導を受けて投与し、手順に慣れたら自宅での自己注射も可能です。
成人では、初回に600mg(300mg×2本)を注射し、その後は2週ごとに300mg(1本)を続けるのが一般的です。小児は年齢や体重によって投与量や間隔が変わるため、医師の指示に従います。
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投与部位・投与間隔
デュピクセントは、皮膚の下に薬を入れる皮下注射で投与します。注射する場所は、腹部(へその周りは避ける)、太もも、上腕などが一般的です。同じ場所に続けて打つと皮膚への負担が増えるため、毎回少しずつ位置をずらし、部位をローテーションしながら投与します。
赤みや湿疹、傷がある部位は避け、肌の状態が落ち着いている場所を選びましょう。投与間隔は多くの場合2週間に1回が基本ですが、病気の種類や症状の安定度によって調整されることもあります。
実際のスケジュールは自己判断で変えず、主治医の指示にしたがって継続することが大切です。
自己注射を行う場合のポイント
自己注射を始める前に、医師や看護師から打ち方・保管方法・廃棄方法まで十分な指導を受けておきましょう。注射当日は、冷蔵庫から取り出した製剤をすぐに使わず、説明書や指示にしたがって室温に戻してから投与します。
注射部位は清潔にし、消毒後は乾かしてから打つと刺激を減らしやすくなります。注射後は、使用済みの注射器を再使用せず、専用の廃棄容器に入れて指示どおりに処分してください。
また、息苦しさ、顔やのどの腫れ、全身の蕁麻疹など普段と違う強い症状が出た場合は、自己判断で様子を見ず、すぐに医療機関へ連絡しましょう。目のかゆみや充血なども放置せず、早めに相談すると安心です。
とどくすりでは、自己注射をされている方へ向けて デュピクセントの宅配サービス(クール便) を行っております。
診察後に薬局へ寄らずに帰宅でき、処方薬はご自宅までお届け。 受け取りのための待ち時間や移動を省けるので、 仕事や家事、育児で忙しい方でも無理なく継続しやすくなります。
さらに、オンラインで薬剤師による服薬指導も受けられるため、 注射のタイミングや保管方法など不安がある場合でも相談できます。
デュピクセント宅配サービスを公式HPで確認デュピクセントの費用について
デュピクセント300mg(ペン)の薬価は、53,659円(1本)です。成人でよく使われるスケジュール(初回600mg→以降300mg隔週)の場合、薬剤費(薬剤費以外にも別途費用が必要)は次のイメージになります。(※2025年11月時点)
デュピクセント治療では、高額療養費制度の対象になることがあります。これは、1か月の自己負担が所得や年齢に応じた上限を超えた場合、超えた分が払い戻される(または窓口支払いを上限までにできる)制度です。
また、お住まいの自治体の子ども医療費助成など、別の助成が使えるケースもあるため、条件は医療機関・薬局で確認するとスムーズです。
参考文献
医療費助成制度について
デュピクセントは薬剤費が高額になりやすいため、使える制度があるかを最初に確認しておきましょう。結論からいうと、多くの方がまず確認すべきは「高額療養費制度」です。
その他の押さえておきたい制度をまとめたので、確認しておきましょう。
| 制度名 | 制度の特徴 |
|---|---|
| 高額療養費制度 | 1か月間(月初めから月末まで)で一定額(自己負担限度額)を超えた場合に、 その超えた金額が高額療養費として支給される制度 |
|
小児慢性特定疾病 医療費助成制度 |
小児慢性特定疾病の患者さまにおいて、1か月間に支払った医療費の負担額が 自己負担限度額を超えた場合に、その超えた金額を支給する制度 |
| 難病医療費助成制度 | 1か月間に支払った医療費の負担額が自己負担限度額を超えた場合に、 その超えた金額を特定医療費として支給する制度 |
参考文献
高額療養費制度の確認の順番は、以下のとおりです。
- 1.加入している健康保険の「限度額適用認定証」の手続きを確認する
- 2.薬局または医療機関で月の支払いを試算してもらう
- 3.お住まいの自治体(市区町村)で、子ども医療費助成などの対象か確認する
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デュピクセントの保管方法と取扱時の注意点
デュピクセントは、温度や光の影響を受けやすい薬のため、基本は冷蔵庫で保管します。自己注射をする方は、保管と廃棄のルールを最初に押さえておくと安心です。
以下は、デュピクセントを保管する際の基本的ルールです。
デュピクセントの保管・使用時の注意点
- 冷蔵庫(2〜8℃)で保管する(凍結は不可)
- 外箱に入れたまま保管する(光を避けるため)
- 子どもの手が届かない場所に置く
- 高温・直射日光を避ける(車内やバッグ内に長時間放置しない)
- 注射前に冷蔵庫から出し、室温に戻してから使用する(時間は説明書・医療機関の指示に従う)
- 温める場合は自然に室温で行う(電子レンジ・お湯・ドライヤーは使用しない)
- 使用済み注射器は再使用しない(1回使い切り)
- 使用後は専用の廃棄容器に入れ、指示に従って処分する(家庭ゴミに混ぜない)
本記事のまとめ
デュピクセントは、アトピー性皮膚炎や喘息、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎などで、既存治療だけでは症状が落ち着きにくい場合に検討される注射薬です。炎症に関わるIL-4・IL-13の働きを抑えることで、症状の改善や長期的なコントロールが期待されます。
副作用として注射部位反応や目の症状がみられることがあり、気になる変化があれば早めに医師へ相談しましょう。費用は保険適用ですが高額になりやすいため、高額療養費制度などの利用も含めて確認しておくと安心です。
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