バセドウ病は甲状腺の働きが亢進し、代謝が活発になる病気です。
国の指定難病ではありませんが、ストレスとの関連もあり、患者さんの日常生活に影響を及ぼします。
本記事では、バセドウ病の検査や治療法、食事のポイントについてご紹介します。
バセドウ病の特徴
甲状腺は首の前面で、喉ぼとけの下にあり、蝶の羽が広がったような形をしています。
ここで作られている甲状腺ホルモンは、体の代謝を促し、生命活動に不可欠なものです。
通常、脳下垂体(のうかすいたい)から指令を受けて、ホルモンを一定に保つよう働いていますが、バセドウ病ではその調整機能がうまく働きません。
バセドウ病は自己免疫疾患のひとつで、自己抗体が誤って甲状腺を攻撃してしまい、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気です。
本来、抗体は細菌やウイルスから体を守る働きをします。
しかし、自己抗体が作られると免疫システムに誤作動がおこり、体にさまざまな反応が引き起こされてしまうのです。
バセドウ病は、甲状腺機能が亢進し、体が常に活動している状態です。
動悸、息切れ、多汗など、症状は多岐にわたります。
橋本病との違い
橋本病(慢性甲状腺炎)は自己免疫疾患のひとつで、女性に多い病気です。
バセドウ病と違って甲状腺を破壊し、甲状腺機能が低下します。
甲状腺ホルモンが減少すると、全身の代謝がおちるため、疲れやすい、寒がり、むくみなどの症状が出ます。
バセドウ病の検査方法
バセドウ病は、自分で症状をチェックできます。
セルフチェックに加えて、医療機関で行われる検査についても解説します。
セルフチェック
以下のような症状をチェックしてみましょう。部分的なものから全身に順を追って確認をしてみてください。
- 眼球が突出している
- 口が渇く
- 首がはれている
- 髪の毛が抜ける
- 手足にふるえが出る
- 動悸がする
- 脈が速い
- 軟便や下痢がある
- 月経の不順がある
- 疲れやすい
- 暑がりで汗をかきやすい
- 体重が減る
- イライラして落ち着かない
- 微熱がある
症状には個人差があり、これらの症状は他の病気でもみられることがあります。
医療機関での検査
血液検査では、以下のような項目を確認します。
- 甲状腺ホルモン(FT3、FT4):過剰に分泌されるため、数値は高い
- 甲状腺刺激ホルモン(TSH):脳下垂体から分泌され、甲状腺に働きかける。甲状腺ではホルモン量が足りているため、指示役となるこの数値は少なくなる
- TSH受容体抗体(TRAb):ホルモンを過剰に分泌させる自己抗体
血液検査の結果をふまえて、放射線ヨウ素検査や、超音波検査などが追加で行われます。
バセドウ病は心臓にも影響することがあり、心電図や胸部レントゲン撮影を行うこともあります。
ストレスを溜めないためにできること
自己免疫疾患であるバセドウ病は、ストレスと深い関係があるといわれています。
ストレスを溜めない工夫の一例は以下の通りです。
- 自分がストレスと感じているかどうかを自覚し、早めに対処する
- 短時間でも景色を眺める、音楽を聴くなどをしてリラックスする
- 腹式呼吸をする、ストレッチをするなど、自分の体をいたわる
- ゆっくりとお風呂でお湯につかる
- スマートフォンやパソコンなどの使用時間を減らす
近年では、電磁波を利用したデジタル機器を使用することが多く、それがストレスにつながっているかもしれません。
実際に、家電製品や通信基地局などの電磁波による電磁波過敏症(めまいや頭痛など)の報告もあります。
総務省は、現時点において、電磁波が人体に悪影響を及ぼす科学的根拠は十分でないとしていますが、引き続き安全性を確保するための検証が必要としています。
情報過多に陥りやすいスマートフォンの使用時間を減らすことも、ストレス軽減につながる可能性があります。
食事で気をつけられること
バセドウ病の場合、甲状腺ホルモンの合成に使用されるヨウ素(昆布やわかめなどの海藻類)の摂取をはじめとし、特別な食事制限は基本的にありません。
カロリーオーバーに注意
代謝が高まっている病態では、食べても太りにくいのが特徴です。
しかし、治療のコントロールができると、エネルギー消費は抑えられるため、これまでと同じ量を食べていると太る傾向があります。
体重が増えすぎると体に負担がかかり、他の病気を引き起こすこともあります。
適切な食事量を心がけましょう。
カルシウムを摂取する
バセドウ病では、骨が弱りやすくなるため、カルシウム(乳製品、小魚、大豆食品、野菜類)の摂取が重要です。
カルシウムの吸収を良くするためには、ビタミンD(魚やきのこ類)などを一緒に食べるとよいでしょう。
なお、インスタント食品やスナック菓子などに含まれるリンを過剰に摂取すると、カルシウムの吸収を悪くしてしまいます。
バセドウ病の治療法
バセドウ病の治療は主に3つで、「薬物療法」「放射性ヨウ素内用療法」「手術療法」などが行われます。
薬物療法
甲状腺ホルモンの合成を阻害する薬を飲み、甲状腺機能を抑えます。
外来で治療が開始され、長期間の内服が必要です。
効果や副作用には個人差があり、再発の可能性も指摘されています。
放射性ヨウ素内用療法
放射性ヨウ素を服用し、甲状腺細胞を破壊してホルモン産生を抑えます。
これにより甲状腺の機能が低下すると、甲状腺ホルモンの内服が必要になることもあります。
治療前にはヨウ素を含む食事の制限が必要です。
この治療では、ごく少量の放射線を出すため、日常生活に気をつけなくてはいけません。
周囲の人と距離を取る、生活用品を共有せず、衣類の洗濯は別にするなど、ある程度の期間は注意が必要になります。
なお、放射線を使用するため、妊娠・授乳中の女性は治療が行えません。
手術療法
甲状腺の切除術は、早期に確実な効果が得られます。
欠点としては入院が必要で、手術痕が残る、手術合併症などが挙げられます。
バセドウ病と向き合いましょう
バセドウ病は女性に多い病気となり、甲状腺の働きが過剰になる自己免疫疾患です。
ストレスと関連が深いとされているため、うまく付き合いながら日常生活を送りましょう。
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参考文献
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- こころの情報サイト 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所:ストレスとセルフケア
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- 総務省:電波が人体に与える影響について
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- 総務省:電波の安全性に関する調査及び評価技術説明資料
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- e-ヘルスネット 厚生労働省:ストレスと食生活
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- 農林水産省:大切な栄養素カルシウム
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- 日本核医学分科会 腫瘍・免疫医学研究会:バセドウ病の放射性ヨード内用療法に関するガイドライン 改訂第3版