「マスクをしていると自分の息が臭う」「鼻の奥から生臭いような嫌な臭いがする」と感じて、不安になっていませんか。風邪やアレルギー性鼻炎でもないのに不快な臭いが続く場合、原因は「蓄膿症(ちくのうしょう)」かもしれません。
蓄膿症は、正式には「副鼻腔炎」という病気で、鼻の不快な症状だけでなく、特有の悪臭を発生させることがあります。
この記事では、蓄膿症でなぜ臭いが発生するのか、そのメカニズムと特徴、そして具体的な改善策について詳しく解説します。臭いの悩みから解放されるための第一歩として、ぜひ参考にしてください。

その臭い、蓄膿症かも?鼻からする嫌な臭いの正体
蓄膿症(副鼻腔炎)によって生じる臭いは、単なる鼻水や鼻づまりの不快感とは異なり、本人にとって大きなストレスとなります。一体どのような臭いがするのでしょうか。具体的な特徴と、臭いの感じ方について解説します。
生ゴミや腐った卵のような悪臭
蓄膿症の際に感じる臭いは、多くの人が「生ゴミが腐ったような臭い」や「腐った卵のような臭い」と表現します。鼻の奥に溜まった膿に含まれる細菌が、タンパク質を分解する際に発生させるガスによるものです。他にも、魚が腐ったような生臭さや、ドブのような臭い、カビ臭いといった表現をされることもあります。腐敗臭が常に鼻の奥から漂ってくるため、強い不快感を伴います。
臭いは自分だけが感じる場合と他人も感じる場合がある
蓄膿症の臭いは、主に2つのパターンで感じられます。一つは、鼻の奥と口がつながっているため、溜まった膿の臭いが呼吸とともに鼻に抜け、自分自身で強く感じる「自覚的口臭(鼻臭)」です。
もう一つは、鼻から出る息や、鼻水が喉に流れることで口臭としても現れ、周囲の人にも感じられる「他覚的口臭」です。特に鼻づまりによって口呼吸が多くなると、口内が乾燥して細菌が繁殖しやすくなり、膿の臭いと混ざってさらに強い口臭となることがあります。
なぜ蓄膿症になると臭いが発生するのか?

では、なぜ蓄膿症になると、これほど不快な臭いが発生するのでしょうか。その原因は、鼻の構造と炎症のメカニズムにあります。
鼻の奥の「副鼻腔」に膿が溜まることが原因
私たちの鼻の周りには、「副鼻腔」と呼ばれる骨で囲まれた空洞が複数あります。風邪のウイルスや細菌感染、アレルギーなどが原因で鼻の粘膜に炎症が起こると、副鼻腔にも炎症が広がります。
炎症が起きると、粘膜が腫れて副鼻腔の出口を塞いでしまい、中から分泌物や鼻水が排出されにくくなります。行き場を失った分泌物が副鼻腔内に溜まり、細菌やウイルスが繁殖することで、粘り気のある黄色や緑色の「膿」に変化します。この状態が「蓄膿症(副鼻腔炎)」です。
細菌が繁殖して悪臭ガスを発生させる
副鼻腔内に溜まった膿は、細菌にとって格好の栄養源となります。膿の中で細菌が異常繁殖し、タンパク質を分解する過程で、硫化水素やメチルメルカプタンといった揮発性のガスを発生させます。これが、腐った卵や生ゴミのようなと表現される悪臭の正体です。鼻の奥にある閉鎖された空間で、細菌が膿を腐敗させていることで、強烈な臭いが発生するのです。
鼻水が喉に流れる「後鼻漏(こうびろう)」も口臭を悪化させる
蓄膿症になると、膿を含んだ粘り気のある鼻水が、鼻の前からだけでなく喉の奥へと流れ落ちる「後鼻漏(こうびろう)」という症状がよく見られます。喉に流れ落ちた膿は、痰として絡んだり、咳の原因になったりするだけでなく、喉の表面に付着します。
膿に含まれる細菌や臭い成分が、呼気とともに口から排出されるため、強い口臭の原因となります。自分では鼻の臭いと感じていても、周囲からは口臭として認識されているケースも少なくありません。
臭い以外もチェック!蓄膿症の主な症状

不快な臭いは蓄膿症の代表的な症状の一つですが、他にもいくつかの特徴的な症状があります。これらが複数当てはまる場合は、蓄膿症の可能性がより高まります。
ドロっとした黄色や緑色の鼻水
風邪のひき始めのような透明でサラサラした鼻水とは異なり、蓄膿症の鼻水は粘り気が強く、黄色や緑色をしています。細菌と戦った白血球の死骸などが膿に混じっているためです。何度かんでもすっきりせず、鼻の奥に残っている不快感が続きます。
頑固な鼻づまり
副鼻腔の炎症によって鼻全体の粘膜が腫れるため、空気の通り道が狭くなり、頑固な鼻づまりが起こります。特に、鼻茸(はなたけ)と呼ばれるポリープができてしまうと、さらに鼻づまりが悪化し、常に息苦しさを感じるようになります。鼻づまりが原因で、睡眠不足になったり、集中力が低下したりすることもあります。
頭痛や顔面(頬・目の奥)の痛み
炎症が起きている副鼻腔の場所に一致して、痛みや圧迫感を感じることがあります。特に、頬のあたり、眉間、目の奥、おでこなどに、重たいような鈍い痛みが出やすいのが特徴です。前かがみになったり、頭を下げたりすると、膿が移動して圧力がかかるため、痛みが強くなる傾向があります。
食べ物の味が分かりにくい・臭いがしない
鼻づまりがひどくなると、臭いを感じる神経まで臭いの分子が届かなくなり、嗅覚障害が起こります。「食べ物の風味がしない」「コーヒーやお花の香りが分からない」といった症状が現れます。食事の楽しみが減るなど、生活の質(QOL)を大きく低下させる原因となってしまうのです。
蓄膿症の嫌な臭いを改善するための具体的な方法

蓄膿症が疑われる場合、不快な臭いや症状を改善するためにはどうすれば良いのでしょうか。セルフケアでできることもありますが、基本的には医療機関での治療が必要です。
耳鼻咽喉科で専門的な治療を受ける
蓄膿症の臭いの根本原因は、副鼻腔に溜まった膿です。市販の消臭グッズやうがい薬だけでは解決しません。症状を自覚したら、まずは耳鼻咽喉科を受診し、専門医の診断を受けることが最も重要です。医師が鼻の中の状態を詳しく診察し、必要に応じてレントゲンやCT検査を行い、適切な治療方針を決定します。
処方された薬(抗生物質など)を正しく服用する
治療の基本は、薬物療法です。原因となっている細菌を殺菌するための抗生物質や、炎症を抑える薬、膿を排出しやすくする薬などが処方されます。
症状が少し良くなったからといって自己判断で服用を中止すると、菌が生き残って再発したり、薬が効きにくい耐性菌が生まれたりする可能性があります。医師の指示通り、処方された薬は必ず最後まで飲み切りましょう。
「鼻うがい」でセルフケアを試してみる
医療機関での治療と並行して、自宅で「鼻うがい」を行うことも症状の緩和に有効です。人の体液に近い塩分濃度の生理食塩水を使い、鼻の内部を洗浄することで、鼻水や膿、アレルゲンなどを洗い流せます。
鼻の通りが良くなるだけでなく、鼻粘膜の機能を正常に保つ助けになります。専用の洗浄器具が市販されているので、正しく使用法を守って行いましょう。
免疫力を高める生活習慣を心がける
蓄膿症は、風邪などをきっかけに、体の免疫力が低下したときに発症・悪化しやすくなります。日頃から免疫力を高める生活を意識することも予防・改善につながります。
十分な睡眠をとる、栄養バランスの取れた食事を心がける、適度な運動を取り入れる、ストレスを溜めないといった基本的な生活習慣を見直しましょう。
蓄膿症の治療や臭いに関するよくある質問
ここでは、蓄膿症の臭いや治療に関して、多くの方が抱く疑問についてお答えします。
治療にはどのくらいの期間がかかりますか?
症状が比較的軽い「急性副鼻腔炎」の場合、適切な治療を行えば、通常2週間から1ヶ月程度で改善に向かいます。しかし、症状が3ヶ月以上続く「慢性副鼻腔炎」の場合は、治療が長期にわたることがあります。
特に、マクロライド系という抗生物質を少量で長期間服用する方法では、3ヶ月程度の継続的な服用が必要になることもあります。治療期間には個人差があるため、医師の指示に従いましょう。
市販薬で自力で治すことはできますか?
蓄膿症に効果があるとされる市販薬も販売されています。ごく初期の軽い症状であれば、市販薬で症状が和らぐこともあります。しかし、市販薬は原因菌を殺菌する抗生物質を含んでいないため、根本的な治療にはなりません。
特に、血管収縮剤を含む点鼻薬を長期間使用すると、かえって鼻づまりが悪化する「薬剤性鼻炎」を引き起こすリスクもあるため注意が必要です。症状が続く場合は、自己判断で市販薬を使い続けず、必ず耳鼻咽喉科を受診してください。
臭いをすぐに消す方法はありますか?
残念ながら、蓄膿症の臭いを「すぐに」「完全に」消す魔法のような方法はありません。臭いの元は副鼻腔に溜まった膿なので、治療によって膿が排出され、炎症が治まるにつれて臭いも改善していきます。
一時的な対策として、鼻うがいで鼻の中を洗浄したり、口呼吸を防ぐためにマスクを着用したりすることは、臭いを多少軽減するのに役立ちます。しかし、根本的な解決には専門的な治療が不可欠です。
まとめ
鼻から生ゴミのような不快な臭いがする場合、それは蓄膿症(副鼻腔炎)のサインかもしれません。その臭いは、鼻の奥に溜まった膿が原因であり、放置すると慢性化して治療が長引くだけでなく、日常生活における大きなストレスとなります。
今回ご紹介したセルフチェックで思い当たる症状があれば、自己判断で悩まず、できるだけ早く耳鼻咽喉科を受診してください。適切な治療を受け、臭いの悩みから解放されましょう。
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