とどくすり通信編集部② 
薬局で「かかりつけ薬剤師に同意していただけますか？」と説明を受け、 「同意書って何？」「署名するとどうなるの？」と気になった方も多いのではないでしょうか。
この記事では、患者さんの視点で「かかりつけ薬剤師の同意書」の役割や手続きの流れ、制度を利用するメリットをわかりやすく解説します。不安なく制度を利用するために、ぜひ参考にしてください。
かかりつけ薬剤師制度と同意書の役割
かかりつけ薬剤師の制度を円滑に運用するためには、同意書の役割を正しく理解することが不可欠です。まず、かかりつけ薬剤師制度の基本と、同意書がなぜ必要なのか、その法的な位置づけについて解説します。
かかりつけ薬剤師とは？患者を継続的に支える制度
かかりつけ薬剤師とは、患者さん自身が選んだ一人の薬剤師が、薬による治療を一元的かつ継続的に管理する制度です。2016年度の診療報酬改定で導入されました。複数の医療機関から処方される薬はもちろん、市販薬やサプリメントに至るまで、患者さんが使用するすべての医薬品情報を把握し、重複投与や相互作用のリスクを防ぎます。また、休日や夜間などの相談に応じ、必要に応じて在宅訪問も行うなど、患者さんの健康を多角的にサポートする役割を担っています。
なぜ「同意書」が必要なのか
この制度を利用するには、患者さんが「制度の内容に納得した上で同意した」という証明が必要です。このため、薬局では「同意書」への署名をお願いしています。
同意書は、薬剤師が説明した内容（業務内容・費用など）を理解した上で患者さんが「この薬剤師にお願いしたい」と同意した証拠になります。同意がなければ制度を活用することはできず、薬剤師としても関連する費用を算定することはできません。
かかりつけ薬剤師を持つための流れ
かかりつけ薬剤師の精度を利用するには、まず薬局で「同意書」への署名が必要です。しかし、初めての方にとっては「どんな流れで手続きが進むの？」「その場で署名しなきゃいけないの？」といった疑問が浮かぶことも多いでしょう。
ここでは、薬局で制度の説明を受けてから、同意書に署名・提出するまでの一連の流れを、分かりやすく3つのステップで紹介します。
手順1：薬剤師から制度の説明を受ける
最初のステップは、薬剤師から制度の内容やメリットを説明してもらうことです。「かかりつけ薬剤師とはどんな制度か」「どんなサポートが受けられるのか」「費用はかかるのか」など、気になる点はその場で遠慮なく質問してOKです。
薬剤師は患者さんの通院状況や服薬内容を踏まえて、例えば「複数の病院で薬をもらっている方には重複を防ぐメリットがあります」といったように、患者さんに合ったアドバイスをしてくれます。費用の有無についても説明してくれるため、不安な点をきちんと解消してから次のステップに進みましょう。
手順2：同意するかどうかを検討する
説明を受けた後は、すぐに署名を求められるわけではありません。「一度家族と相談したい」「もう少し考えたい」といった場合は、遠慮せずその旨を伝えましょう。薬剤師は患者の判断を尊重してくれます。
同意書は、患者さんが制度の内容を理解し納得した上で署名することが大切です。そのため、しっかり検討する時間を取ることは全く問題ありません。
手順3：署名して同意書を提出する
内容に納得したら、薬局で同意書に署名を行います。薬剤師と一緒に書面の内容を確認し、署名と日付を記入します。署名した同意書の原本は薬局で保管され、コピーを患者さんが受け取る形になります。
同意が完了すると、次回の処方箋受付時から「かかりつけ薬剤師指導料」が支払いに追加され、制度を正式に利用できるようになります。なお、署名後も制度の利用を取りやめたい場合は、いつでも撤回が可能です。
【項目別】かかりつけ薬剤師同意書の記載内容
同意書には、必要な情報が漏れなく記載されている必要があります。厚生労働省が示す様式例を参考に、一般的に記載される主な項目について解説します。
かかりつけ薬剤師の氏名と薬局の情報
同意書には、担当するかかりつけ薬剤師の氏名と、勤務する薬局の名称、連絡先を明記します。これにより、患者さんは誰が自分の担当で、緊急時にはどこに連絡すればよいのかを明確に把握できます。また、かかりつけ薬剤師の業務内容についても具体的に記載されます。例えば、「使用している薬の情報を一元的・継続的に把握すること」や「24時間相談に応じること」「処方医と連携すること」など、提供されるサービスの内容が示されます。
同意する患者の氏名や連絡先
次に、サービスを受ける患者さん自身の情報を記載する欄があります。患者さんの氏名、住所、連絡先などを記入します。これにより、どの患者さんが、どの薬剤師をかかりつけとして指名したのかを正式な記録として残すことができます。
同意した日付と患者本人による署名
同意書の最も重要な部分が、同意した日付と患者さん本人による署名欄です。患者さんが薬剤師からの説明を理解し、かかりつけ薬剤師による服薬指導を受けることに納得した証として、自筆で署名します。この署名をもって、正式に同意が成立したことになります。なお、かかりつけ薬剤師指導料の支払いは、同意を得た当日ではなく、次回の処方箋受付時から適用される点に注意が必要です。
患者がかかりつけ薬剤師を利用するメリット
患者さんにとって、かかりつけ薬剤師を持つことには多くのメリットがあります。制度への同意を促すためにも、これらの利点を具体的に理解し、説明できるようにしておくことが重要です。
メリット1：複数の病院の薬をまとめて管理してもらえる
複数の医療機関を受診していると、それぞれの病院で薬が処方され、薬の種類が増えがちです。かかりつけ薬剤師は、それらすべての処方薬や市販薬、サプリメントの情報を一元的に把握します。これにより、薬の重複や危険な飲み合わせ（相互作用）を未然に防ぎ、薬物療法全体の安全性を高めることができます。
メリット2：休日や夜間など24時間体制で相談できる
薬局の閉まっている夜間や休日に、急な体調変化や薬に関する不安が生じることも少なくありません。かかりつけ薬剤師は、24時間体制で電話相談などに対応してくれるため、患者さんはいつでも専門家のアドバイスを受けられるという安心感を得られます。
メリット3：薬の重複や副作用のリスクを早期に発見できる
同じ薬剤師が継続的に担当することで、患者さんの体質や過去の副作用歴などを深く理解できます。そのため、薬が変更・追加された際に、副作用の初期症状にいち早く気づいたり、副作用のリスクを予測して処方医に、情報提供したりすることが可能です。これにより、重篤な副作用を未然に防ぐことにつながります。
かかりつけ薬剤師を開始する上でのポイント
かかりつけ薬剤師の制度は、ただ「薬の相談ができる人を決める」だけの仕組みではありません。あなたの健康を長期的に支えるパートナーを見つけることでもあります。
ここでは、制度に同意することで得られる主な3つのメリットを紹介します。薬の管理や相談体制など、日常生活の安心につながるポイントを紹介します。
薬の管理が一元化される
複数の医療機関に通っていると、病院ごとに薬が処方されて「薬が増えてきた」「似た薬をもらっていないか不安」と感じることもあるでしょう。かかりつけ薬剤師に同意すると、あなたが飲んでいるすべての薬（処方薬・市販薬・サプリメントなど）を一元的に管理してもらえます。
薬の重複や危険な飲み合わせ（相互作用）を未然に防ぐことで、より安全に治療を続けることが可能です。体調や生活習慣の変化にも合わせて、薬剤師が継続的に服薬状況をチェックしてくれるので、「自分の薬をちゃんと見てくれている」という安心感が得られます。
24時間いつでも相談できる
「薬を飲み忘れた」「副作用のような症状が出た」「飲み合わせが心配」など、薬に関する不安はいつ起こるかわかりません。かかりつけ薬剤師に同意しておくと、夜間や休日でも24時間体制で相談できるサポート体制が整います。
薬局が閉まっている時間帯でも、電話や連絡先を通じて薬剤師に相談できるため、急な体調の変化にもすぐ対応してもらえるのが大きなメリットです。「夜でも頼れる人がいる」という安心感が、日々の健康管理をより心強いものにしてくれます。
副作用やトラブルを早期に発見できる
同じ薬剤師が継続して担当してくれるため、あなたの体質や薬の反応を深く理解してもらえます。そのため、新しい薬が処方された際や体調に変化があったときも、副作用やトラブルの兆候を早期に発見してもらえる可能性が高まります。
薬剤師は、ちょっとした変化にも気づきやすく、必要に応じて医師に情報提供や処方提案を行うことで、重篤な副作用を未然に防ぐことができます。「自分の体を理解してくれる薬の専門家」がそばにいることで、より安心して治療を続けられます。
かかりつけ薬剤師に同意する際の注意点
かかりつけ薬剤師の制度に同意する際は、「なんとなくOKする」のではなく、制度の仕組みや自分に合った利用方法を理解した上で判断することが大切です。
ここでは、同意前に知っておくと安心な3つのポイントをまとめました。「自分に必要かどうか」「やめたいときはどうするのか」など、疑問を解消しながら、納得して制度を活用するためのヒントをお伝えします。
なぜ自分に必要なのか確認する
かかりつけ薬剤師制度は、誰にでも同じように必要な制度ではありません。複数の病院に通っていたり、薬の数が多い方、服薬管理に不安がある方など、「自分にとって必要かどうか」を確認してから同意することが大切です。
たとえば、同じ薬を別の病院からもらっている場合、かかりつけ薬剤師がいることで重複投与を防ぎ、より安全な治療が可能になります。一方で、通院先が少なく服薬内容がシンプルな方にとっては、すぐに制度を利用する必要がないケースもあります。
自分の生活スタイルや通院状況を踏まえて、「この制度を利用することで何が変わるのか」を明確にしておくことがポイントです。
同意はいつでも取り消せる
「一度署名したら、もうやめられないのでは？」と不安に思う方もいますが、かかりつけ薬剤師制度の同意はいつでも撤回・変更可能です。あなたの意思で、自由にやめたり、別の薬剤師へ変更したりすることができます。
もし他の薬局へ通うことになった場合や、別の薬剤師に相談したいと思った場合は、
薬局にその旨を伝えるだけでOKです。強制力のある契約ではなく、「自分に合った薬剤師を選ぶための制度」です。この柔軟さを理解しておくことで、「署名しても大丈夫かな…」という不安を解消しやすくなります。
無理に同意しなくてもOK
かかりつけ薬剤師への同意はあくまで任意です。署名しなかったとしても、通常どおり薬の受け取りや説明を受けることができます。中には「同意しないと今後サービスが受けられなくなる」と誤解している方もいますが、そのような不利益は一切ありません。むしろ、制度を利用するかどうかを自分の意思で選べることが大切です。
薬剤師の提案はあくまで「より安心して薬を管理するための選択肢」として受け止め、焦らずに自分のペースで判断しましょう。
まとめ
かかりつけ薬剤師の同意書は、患者さんが制度を理解・納得した上で質の高い薬学的管理を受けるための重要な第一歩です。薬剤師は、同意書の法的な役割や取得手順を正しく理解し、患者さん一人ひとりに寄り添った丁寧な説明を心がける必要があります。制度の仕組みを理解し、信頼できる薬剤師に出会うことで、お薬の管理や健康相談がぐっと身近になります。
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