薬剤部
HIV感染症専門薬剤師
「とどくすり for Special Care」監修

まだ解決されていない課題についても、一つひとつ前進できるよう、
私なりに支援を続けていきたいと思います

HIV専門薬剤師を志したきっかけを教えてください。
私は2001年に東京医科大学病院に入職し、2003年ごろからHIV陽性者の入院治療に携わるようになりました。以来、約20年間にわたりHIV感染症の治療に関わってきました。
当時は薬の副作用が多く、入院して治療を開始するケースも珍しくありませんでした。薬剤師として患者さんに薬を確実に服用してもらうことは重要ですが、HIV感染症の治療においては特にその役割が大きいと感じました。こうした業務に関わる中で、次第にHIV治療への関心が深まりました。
そんな中、2008年ごろにHIV専門薬剤師制度が制定され、第1期生としてこの資格を取得しました。現在では新たな取得者も増え、HIV専門薬剤師の役割が広がっていることを嬉しく思う一方で、第1期生として共に歩んできた方々が第一線を退いていくことに、寂しさも感じています。
治療は進歩していますが、昔と今とでHIV陽性者さん像の変化はありますか?
かつてのHIV感染症の治療は、服用回数や錠数が多く、副作用も重篤なものがあったため、治療の選択に非常に苦慮しました。HIV陽性者と共に長い時間をかけて、最適な治療法を決める必要がありました。
しかし、現在の治療は大きく進歩し、1日1回1錠の服用が可能となり、副作用も軽減されています。そのため、治療開始時に患者さんと一緒に悩むことはほとんどなくなりました。こうした情報を知っている方にとっては、HIV感染症に対する不安は以前よりも軽減されているように思います。
一方で、HIV陽性者が周囲の人に告知するハードルは依然として高く、多くの方が自分の中に抱え込んでいるのが現状です。HIV感染症に関するスティグマ(偏見や差別意識)は、この20年近くで大きく変わっていないように感じます。
治療を続けていくHIV陽性者さんにメッセージをお願いします。
HIV感染症の治療は大きく進歩し、今ではコントロールが可能な病気となりました。しかし、完治に至る治療法はまだ確立されておらず、長期的な治療が必要です。また、HIVウイルスや抗HIV薬がもたらす加齢(Aging)の影響にも注意を払うことが大切です。
さらに、HIV感染症に関するスティグマの問題は、依然として社会生活に大きな影響を与えています。その現状を考えると、HIV感染症に精通した薬剤師として、まだまだ皆さんをサポートできることがあると感じています。
この20年間で治療や環境は大きく改善されてきました。さらに良くできる部分は引き続き改良を重ね、まだ解決されていない課題についても、一つひとつ前進できるよう、私なりに支援を続けていきたいと思います。
明日の治療は、きっとさらに進歩します。一緒に前を向いて進んでいきましょう。

HIV治療においての「とどくすり」へのご期待をおしえてください
「とどくすり」の大きなメリットは、薬局での待ち時間がなくお薬が郵送で届くこと、そしてオンライン服薬指導によりプライバシーが確保されることです。これは、お仕事で忙しい方やプライベートの時間を大切にしたい方にとって、非常に有用なサービスだと感じます。
また、「とどくすり」の薬剤師の方々はHIV治療に関する知識と経験を日々深めており、安心してご相談・ご利用いただける体制が整っています。HIV治療は長期にわたるものであり、治療の過程で合併症や加齢に伴う他の病気への対応が必要になる場合もあります。そのような際にも、「とどくすり」ではHIV治療薬に限らず、その他のお薬も一緒にご利用いただけます。さらに、全国どこからでもサービスを受けられる点も大きな魅力です。
ぜひ「とどくすり」で、自分のことをよく理解してくれる“かかりつけ薬剤師”を見つけて、長期的な健康管理のパートナーとしてご活用いただくことをおすすめします。
「とどくすり」は、これまでにない新しい薬局の形として、今後ますます広がり、将来的にはスタンダードな薬局になっていくと確信しています。