2022年3月30日

リウマチと膠原病はコントロール可能な時代へ

リウマチと膠原病はコントロール可能な時代へ
鍵を握るのは病気への理解とライフサイクルに寄り添った診療スタイル
リウマチと膠原病は、原因が突き止められず、適切な診断と治療にたどり着くまで時間がかかることがあります。未だよくわかっていないこともあるものの、研究が進んで新薬が登場したことで、「おつきあい」しやすい病気となってきました。

長崎大学大学院医歯薬学総合研究科先進予防医学共同専攻・リウマチ膠原病内科分野(第一内科)の一ノ瀬邦弘先生に、リウマチと膠原病はどのような病気なのか、どのような症状がある場合に医療機関を受診すべきか、病気との付き合い方、治療に関する注意点、オンライン薬局の導入と将来性について伺いました。

リウマチが進行すると関節のこわばりや変形により歩けなくなることも私たちの体には、外からの侵入者が体内に入って悪さをしないようにするための仕組み、いわゆる免疫機能(自己免疫)が備わっています。何かしらのきっかけによって免疫機能がエラーを起こすと、自分の身体を異物とみなして攻撃するようになります。こうした自己免疫の異常は自己免疫疾患と呼ばれ、リウマチと膠原病はその代表的な病気です。

リウマチは、炎症による関節の腫れと痛みを主な症状とする病気です。炎症が長期化すると関節破壊が進行し、手足全体や指先を思うように曲げられない、歩けなくなるといった状態に至るのも、決して珍しいことではありません。しかし近年では、バイオテクノロジー技術を用いた生物学的製剤が登場したこともあり、生活に支障をきたす状態まで症状を悪化させる事態は減りつつあります。つまり、適切な診断と治療によってコントロールしやすい病気になってきたと言えるでしょう。日本全体で高齢化が進行している影響から発症年齢も上昇しているとされていますが、若い方でも発症する可能性があるためこの病気の存在を知っておくべきでしょう。

リウマチの発症には環境要因が大きく関わっており、抗CCP抗体と呼ばれる物質を作り出すことから、喫煙習慣がリウマチ発症リスク増加の要因であることがわかっています。また、歯周病も同様に抗CCP抗体を作りやすいため、リウマチの発症に関連しているのではないかと考えられています。

膠原病による炎症は腎臓や脳など重要な臓器で生じることも膠原病は自己免疫疾患の総称で、こちらは関節以外にも、肺、腎臓、肝臓、脳など全身のあらゆる臓器に症状が出ます。リウマチでもこれら臓器に症状が出ることはありますが、膠原病のほうがさらに臓器障害を起こしやすいのです。膠原病のうち特に多いとされる病気に、全身性エリテマトーデス(SLE)とシェーグレン症候群があります。前者は20〜30代の妊娠可能年齢の女性で確認されることが多く、脳のように特に重要な臓器にも症状が出ることから、発症すると悪くなりやすい病気として知られています。

膠原病は、多因子疾患と呼ばれるものです。遺伝的要因など元々何らかの要因を有している方が、その方を取り巻く環境に由来する外的要因に接することにより発症する病気のことです。遺伝的要因、人種、喫煙習慣など、全身性エリテマトーデスなら紫外線に当たることが発症のきっかけになることもあります。このように様々な要因が複雑に絡んでいる上に、よくわかっていないこともあることから、「これが原因です」と言いにくいのが膠原病の特徴とも言えるでしょう。

リウマチと膠原病の診断には血液検査が欠かせないリウマチや膠原病の患者さんたちが抱えている症状は、日常よくある不調と似通っています。そのため、病気の特定に至るまで時間がかかってしまうことも多いのです。

たとえば当院で治療を受けているリウマチ患者さんでは、クリニックで治療を受けても発熱や関節痛が良くならず、自己免疫疾患を想定した血液検査などを受けたところ大学病院を紹介され、精密検査の結果から病気の発覚に至った方もいます。膠原病では、発熱や微熱、食欲不振からの体重減少、精神疾患のような症状がヒントとなることもありました。

健康診断や人間ドックでは、血液検査のオプション検査項目としてリウマチを追加できることもあります。陽性と診断された場合には、当院のような自己免疫疾患を扱う医療機関を紹介されますので、リウマチが心配な方はご自身の状態を把握するためにも、一度検査されてみるのがよろしいかと思います。

リウマチや膠原病は、誰が発症してもなんら不思議ではありません。ですので、まずは病気の存在と症状を知ること、血液検査を受ける機会があればリスクなどを調べてみること、発熱や関節痛など体調不良が長引くなら「もしかして?」と考え相談することが、自己免疫疾患を専門とする医師にスムーズにたどり着く最適解と言えるでしょう。

適切な薬物治療によってリウマチと膠原病はコントロール可能になりつつあるなぜこれほど早期発見を重視するのかというと、どちらも適切な薬物治療を継続することで病気をコントロールできる可能性が高いからです。特にリウマチは、治療開始が早まるほど日常生活への影響の軽減を期待できるようになりました。

2000年代に入り、リウマチの研究と治療薬の開発が進み、特にJAK阻害薬と呼ばれる飲み薬の登場という追い風となり、リウマチ治療は飛躍的に進化しました。ひとたびリウマチと診断されても、適切な薬物療法により関節破壊を最小限に留められるようになったのです。発症初期に治療開始したことで、治療薬が必要ない「寛解」まで軽快したケースもあります。リウマチに限定して言えば、寛解する患者さんは今後増えると予想しており、リウマチは治せる病気になりつつあるでしょう。

このような背景からリウマチ治療では、「症状を悪化させない」「治療が進んだら今度はその状態のキープできるようにする」ことを重視して治療計画を立案します。使用するお薬次第では、「いかに副作用を食い止めるか」も一緒に考えます。

膠原病の治療ですが、多因子疾患であることと病気自体が完全に解明されていないため、こちらは寛解可能な病気になるまでもう少し時間がかかりそうです。治療で使用するステロイドは、正しく使えば炎症と免疫を抑える非常に優れたお薬である反面、自己判断で使用中止すると病気が悪化し、最悪の場合死に至る可能性も持ち合わせています。そのため処方時にはお薬の特徴を説明しますが、治療を継続するなかで欠かせない存在であることを次第にご理解いただけるようになることもあり、自己判断による治療中断と離脱は糖尿病などよりも少ない印象です。

リウマチと膠原病治療ではお薬の飲み合わせとサプリメントに要注意お薬は飲み合わせ次第で、効果が強くなりすぎたり弱くなりすぎたりする、あるいは予期せぬ副作用を引き起こすことがあります。患者さんには生物学的製剤や免疫抑制剤を飲み続けていただくため、他院で処方されるお薬や市販薬を使用する際には飲み合わせに注意していただくよう説明しています。

ある患者さんが風邪をひき近所の内科を受診すると、医師から『どのような薬を飲んでいるか正確に把握できないから、治療を受けている大学病院に相談してほしい』と伝えられたそうです。このエピソードからも、お薬の飲み合わせは配慮を求められることをご理解いただけるかと思います。

お薬ではないのですが、サプリメントの利用も少しだけ考えていただきたいです。通常のビタミン剤であれば問題ないと考えて差し支えないのですが、「やせぐすり」とされるサプリメントに甲状腺ホルモンが配合されていたり、成分やお薬のベースとなる基剤によっては肝機能異常や機能障害が出たりすることがあります。

複数のお薬を日常的に使用するということは、それだけ副作用や飲み合わせのリスクにさらされているということです。最終的なご判断は患者さんに委ねますが、医師としてはお勧めしてはいません。

リウマチと膠原病治療を続ける子育て世代にとって受診負担を減らせる選択肢に今後ですが、自己免疫疾患の一種である全身性エリテマトーデスの患者さんに対し、「とどくすり」が提供するオンライン薬局と宅配サービスをご紹介し、実際に使っていただきたいと考えています。

この病気は妊娠可能年齢の女性に多い病気であることから、患者さんには現在育児中の方もいらっしゃいます。子どもが小さいと一人で留守番は難しく、外来をしているとお子さんを連れて受診される患者さんが多いのは以前から気になっていました。

「そもそも病院や薬局に子どもを連れてきたくない」「診療や待ち時間が長引くと、子どもがぐずり始めないかヒヤヒヤする」「子どもの世話に手がかかるから、薬局に行く回数を減らしたい」

そうお考えの方もいらっしゃるでしょう。「とどくすり」は、まさに子育て世代の患者さんが抱えているニーズを満たせる興味深い存在だと考えています。患者さんにもご相談したところ、好意的な意見をいただけたことも後押しになりました。

今回ご紹介したリウマチや膠原病のように、日常的に服薬が必要な病気を抱えている患者さんは大勢いらっしゃいます。皆さんにとって、オンライン薬局と宅配サービスがより身近な選択肢となることを期待しています。

【参考URL】長崎大学病院 第一内科
https://www.med.nagasaki-u.ac.jp/intmed-1/teacher/ts_ichinose.html

MSDマニュアル家庭版 免疫系の概要
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/15-%E5%85%8D%E7%96%AB%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E5%85%8D%E7%96%AB%E7%B3%BB%E3%81%AE%E7%94%9F%E7%89%A9%E5%AD%A6/%E5%85%8D%E7%96%AB%E7%B3%BB%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81

日本内科学会雑誌第101巻第10号
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/101/10/101_2824/_pdf

東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センター 生物学的製剤
http://www.twmu.ac.jp/IOR/diagnosis/ra/medication/biologics.html

京都大学 歯周病と関節リウマチ発症との相関を示す
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2015-04-21


【お知らせ】①上記初稿の表記統一について
1.共同通信社 記者ハンドブック 13版
2.公開済インタビュー記事
https://todokusuri.com/interview/interview20210917.html
を参考にしております。お気づきの点がございましたら、いつでもお問い合わせくださいませ。

②参考URL選定方法について
内容に肉づけするにあたり、「公的機関→医療機関→製薬会社」が作成したHPを参考にしている部分がございます。参考にしたHPは【参考URL】にまとめておりますのでご確認いただけますと幸いです。

③記事の方向性について
疾患について解説しつつ、病勢コントロールのためには適切な服薬が重要で、そのために「とどくすり」ができること(サービスを利用するメリット)に主眼を置いた構成にしています。

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